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霊能者、異世界を征く!~奴隷からの出発、魂の能力継いで下剋上。

るう

踏んだり蹴ったり2

「いいか、抵抗しない方が身のためだぜ。おとなしく奴隷になれば、手荒な真似はしない」

骸骨顔の隣で、相変わらず一人ジェスチャーをしているぼんやりした影、即ち幽霊の姿をよく見ようと注意を向けていると、兄貴分のぽっちゃり男は勝手に話を進めようとしてきた。
肩から掛けているカバンから、なにやら腕輪より大きめのリングのようなものを取り出した。
ま、待て待てっ! 今、なんて言ったこいつら。奴隷だと?! 奴隷なんてあるのかよ、……さすがは異世界、って! そんなこと感心してる場合じゃない。

「な、なんで俺が……」
「お前、人族なんだろ? 主人持ちじゃないはぐれの人族は、見つけたもん勝ちなんだよ。これは正当な権利だからな」

何を言ってるのかわからない。はぐれってなんだ? だいたいなんで奴隷にならなきゃいけないんだ。この奴隷で当たり前って前提が、そもそも意味不明だ。

『ちっ、嘘だな。こいつら人売りだ。正当な権利が聞いて呆れるぜ』
「……人、売り? なに、これ嘘なの?」

思わず声につられて呟いた俺に、デコボココンビがそれぞれ反応する。

「こいつさっきから何言ってやがる。なんか様子がおかしくないか?」
「……気を病んでたら厄介だな。値がつかねえ」

またおかしな人だと思われる、と条件反射で慌てて口を塞いだけど、考えてみればコイツらにどう思われようとどうでもいい。

「騙されないぜ、お前ら人売りなんだって?」

プカプカ浮いている男をチラ見しながら断言すると、それまで他人事のように見物していた幽霊がこちらをガッツリ見た。
うげっ、目が合った。

『お、お前、俺が見えるのか……マジか』

いままで幽霊と関わってロクな目に遭ったことがないので、咄嗟に目を逸らす。

「ふっ、懐柔は無理そうだな、おいサッサとやっちまえ」
「了解、兄貴」

そしてチンピラたちは、どうやら力ずくの作戦に切り替えてきた。尻もちをついた格好のままで、強気にでるんじゃなかった。咄嗟に立ち上がることも、逃げることも出来なかった。
簡単に腕を掴まれ、手に持った金属の輪っかを俺の首元に近づけてくる。
コレ首輪かよ! 趣味悪すぎだろうがっ!

「暴れるんじゃねぇーよ! 痛い目にあいたいのか!?」

勝手なこと言うんじゃねー、首輪なんぞ、冗談じゃないっ! と、叫びたかったが、とにかく声を上げる余裕さえない。必死に身をよじり腕を振り回して抵抗するだけで、何百メートルも全速力で走ったかのように息が上がって、情けなく喘いだ。
苦しさで上向くと、そこにさっきの幽霊の姿がくっきりと見えた。
――まだ若い青年の姿だった。
短い茶色の髪、薄い琥珀色の瞳。まるで柴犬のような小さな肉厚のケモ耳が、短い逆立った髪からピンと立っている。そちらに気を取られた隙に、押さえ込まれた俺はあっけなく首輪をはめられてしまった。

「よしっ、やった。兄貴、契約を早く!」

のっぽの弟分が俺を押えたまま、兄貴分に合図した。どういう仕組みか知らないが、とにかくあっちの男に何かをされたらヤバイことは想像がついた。けれど、押さえ込んで来るのっぽを振り払うことができない。
やばいやばいっ!
俺は、無意識に何かに縋るように助けを求めていた。
すると、いきなり先ほどの柴犬青年と目が合った。
のしかかるのっぽの男も、その上から腕を伸ばしてくるぽっちゃり男も突き抜けて、ただその存在自体が吸い込まれるように意識に入って来た。
すべてがスローモーションのようだった。
青年の琥珀色の瞳の双眸に自分の姿が映るほど近づき、ぶつかる! と思った瞬間、俺は思わず手で払いのけていた。

「……ぐえっ!」

しかし吹っ飛んだのは、先ほどまで俺の身体にのしかかっていたのっぽの骸骨顔だった。

「こいつ、よくもやりやがったなっ!」
「チョ、チョット待て……見ろよ、兄貴。コイツ、獣人じゃないか?」

もう一人に即座に押さえ込まれたが、待ったをかけたのは吹っ飛ばされた弟分だった。

「え? ばかな、さっきは確かに……なんでだ」
「髪で見えなかったとか? ほら、コイツの髪フワフワしてるし」

わるかったな、くせっ毛で! というより、耳? 耳ってなんだ、コイツらなにを。
俺は、思わず自分の耳を触ろうとして、ぺたぺたと頬の後ろあたり、当然耳がある場所を探って愕然とした。そして、おそるおそる髪をかき分けるように進んでいき、それを見つけた。
も、もっ、もふもふしている!?

「なんだこれっ!」

悲痛な俺の叫びなど彼らには聞こえなかったのか、二人は円陣を組み、座り込んで相談を始めていた。

「待て待て、そんなはずない。さっきは確かに人の耳だった。なにかの幻術かもしれん。なにしろ人族だからな、魔法やまじないが出来ても不思議じゃない」
「なるほど、さすがは兄貴」
「くそ、騙されるところだった。獣人に化けても無駄だ、大人しくしろ」
「そうだ、大人しくしろ!」

相談はまとまったらしく、再びにじり寄って来た。とにかくわからないことだらけだが、あいつらが諦めない決意をしたのは確かのようだ。俺は何とか四つん這いになりながら立ち上がる準備をした。
気のせいか、少し動けるようになっていたのだ。

『男の腰の長剣を取れ!』

すると、先ほどまで遠くで聞こえていた例の声が、今度はすぐ耳元で聞こえてきた。耳元というか……これって自分の中から? 頭で理解するより早く、身体が先に動いた。
まるでバネ仕掛けの人形のようにすくっと立ち上がると、前のめりで俺に近づいてきたのっぽは驚いて仰け反って後ろへ数歩下がった。
次の瞬間には、俺の手にそいつが腰にぶら下げていた長剣が握られており、器用な手さばきでくるっと持ち直すと、慣れた手つきでそれを前方に構えた。
――ん? なんだコレ!
俺、剣なんか握ったこともないのに……。この手にしっくりくる感じ、なんなんだよ一体!?

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