トラブル遭遇率120%ダメダメ男がメチャモテ青春を送るために主人公を目指す

なんちゃってチャンプル

勝也のギフトと決意

 「まず、一つ目、何故君の力が急に強くなったかのお話からするね」


 ごくっと唾を飲み込み、不安と緊張に包まれながらも、勝也は首を縦に振る。


 「君には1度死んでもらい、感情を力に変えれるように少しばかり脳を弄らせてもらったんだ。


 勝也は視界がぐるぐると周り、地面に嘔吐した。それもそのはずだ、意識がなかったとはいえ、頭の中を他人にかき回されたことに嫌悪感を抱かずにはいられない。


 「なんで……そんなことを?」


 勝也は落ち着くためにハァハァと肩で息をしながら、自分の吐いた吐瀉物を四つん這いになりながら眺めている。


 「君を……完全無欠の主人公にするためさ」


 ソラは勝也の背中をさすりながら、勝也に優しく声をかける。その声は心地の良いトーンでそれでいて、不気味にも感じるトーンである。


 「なんで……俺なんですか?どうして俺ばかりずっとトラブルに会うんですか?俺はただ……普通に生きたいだけなのに」


 勝也はずっと胸の内に溜めていた思いをソラにぶつける。ソラなら全てを答えてくれると思い、幼い時からずっと思っていたことすらもぶつける。


 「その答えが二つ目のお話、全ての原因となるギフトについてさ」


 「ギフト?」


 ソラは真剣な表情で勝也の手を取り目を見つめ語りかける。聞き慣れていない単語を聞き反射的にソラに聞き返す。


 「そう、ギフト……生まれた時から背負わされし十字架……運命……才能のような物だと捉えてくれたらいい。」


 勝也はぼーっとソラを見ている。おそらく、理解ができていない様子だ。それを見かねたソラは両手をたたく。


 ―――パァンと音が鳴り響くと勝也とソラは勝也の家に座っていた。


 「これはイブさんの……」


 勝也は驚きのあまり立ち上がり、言葉を発した。ソラはその様子を見て口角が少し上がっていた。


 「実際に見て理解してもらおうと思ったけど、知っているなら話がはやいね、それと何か飲み物をいただくことはできるかな?」


 ソラは勝也の家の中央にあるテーブルの前に座り、フーッと一息をついている。
 勝也は冷蔵庫からお茶を取り出し、コップにお茶を入れる。


 「今のがギフト?なんですか?」


 勝也はお茶を出しながら質問を投げかける。その内容は疑問に思っていた瞬間移動についてだ。


 「いや、今見せたのはスキルと呼ばれるものさ、主人公育成機関がギフトを再現しようと作り上げたものだよ」


 出されたお茶を飲み、満足げな顔を見せるソラ。そのソラを警戒し、お茶を出したまま勝也は座らずに立っている。
 その姿に気づき、ソラは手で座れと合図を送る。勝也はしぶしぶと座る。


 「スキルは誰にだって使えるよ、ただ人個人のキャパや相性の良し悪しもあるから適正はあるけど、誰にでも使える技術、だからこそのスキルさ」


 座ったのを確認し、またソラは話を続ける。


 「なら、ギフトっていうのは?」


 「ギフトはその個人だけの特殊能力だと思ってくれたらいいよ、僕には僕の、占部君には占部君の、イブにはイブの、そして、最上君には最上君の」


 ソラは勝也の胸元を指差す。表情は真剣で、勝也は圧を感じ、冷や汗を流している。


 「俺の……特殊能力……」


 勝也は胸元に手を当て改めて、今聞いた情報を整理する。自然と心は落ち着いている。目の前のソラと話をしていると心が安らぐのである。


 「それで、俺のギフトってのはなんなんですか?」


 普通の生活を送りたい勝也であるが、15歳という歳なこともあり、特殊能力に対してのワクワク感もないとは言えない。


 「君はどうやら死を回避する能力だとしか今は言えないかな」


 今までのどこか達観し、落ち着いていたソラが少し顔を曇らせている。どうやら、ソラ自身も曖昧な答えしか出ていないようだ。


 「死を回避するならトラブルがやってくるのはなんでですか?」


 「そこは、すまないがわからない。ギフトは事象の積み重ねにより、初めて自覚ができる。他人の僕よりも君自身が理解し、力として認識して初めてギフトホルダーになれる。僕はきっかけを与えたにすぎないよ。」


 ソラはまたお茶を飲む、コップを下ろしたソラは先ほどのような曇った顔はなく、笑顔だった。


 「君は普通の生活を送りたいと言っていたね。でも、今の君を元通りの生活に戻すことはできない。周りにも危険があるかもしれないからね。」


 「なら……どうしたら?」


 勝也の表情は暗くなっている。ずっと楽しみにしていた高校生活もまだ1日しか満足に体験できていないからである。


 「まずは、感情による力のコントロール、君のギフトの解析、そして、最低限自分の身を守れるように少々のスキルを獲得してもらうよ」


 普通の生活を得るためならどんなことでもやり遂げようと勝也は心に決める。楽しい高校生活、そして、彼女を作るのが高校生活の目標と決めている。


 「やります、どんなことでも!!」


 勝也は拳を握りしめ、ソラに力強く答える。


 「よし、修行編スタートだね」


 ソラが手を叩くと、景色は勝也の部屋から、辺り一面真っ白い空間に変わっていた。

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