トラブル遭遇率120%ダメダメ男がメチャモテ青春を送るために主人公を目指す

なんちゃってチャンプル

あまりにも危険な男

 
 「やあ、初めましてだね、最上 勝也君」


 男か女かわからないそいつは、勝也に不気味な笑顔を向けながら話しかける。


 「は、初めまして、最上勝也です、よろしくお願いします」


 勝也は頭を下げ挨拶をする。占部は背筋をピシッと伸ばしながら真っ直ぐにその人間を見つめている。


 「占部君、イブが君のことを呼んでいたから行ってきてあげなさい」


 「承知しました」


 占部はそう言うと、後ろを振り返りそのまま歩いてどこかへ消えて行った。


 「改めて、僕の名前はソラ、あまりここにはいないけどよろしくね」


 ソラは自分の名前を言うと同時に、どこからか取り出したイスに座り込んだ。


 「最上君も座りなよ、紅茶かコーヒーどちらがいい?」


 「こ……紅茶でお願いします」


 勝也が紅茶というと同時に、またもやどこからかテーブルとティーセットが出てきた。ソラは紅茶を2杯いれると片方を勝也に渡し、もう一つを自分で飲み始めた。


 「最上君の事を少し調べさせてもらったよ、君は凶星の下に生まれついたんだね」


 「凶星ですか?」


 ティーカップを口から話し、勝也に語りかけるソラ。ソラの発言を理解できずに困惑する勝也。勝也はまだティーカップに触れずに太ももに腕を乗せたまま座った時の姿勢をキープしている。


 「そ、凶星、誕生と同時に大地震が発生、7回の誘拐に25回の交通事故、挙句には親に見放され、高校入学と同時仕送りによる一人暮らしだなんて、なかなか聞かないよ?」


 「でも、君は五体満足で元気に生きている。そこが僕が惹かれた点なんだ」


 「どんなピンチや窮地に陥っても最後には必ず元通りなんて生まれながらの主人公としか思えないじゃないか!!」


 「素晴らしい、素晴らしすぎるよ最上君」


 1人熱弁するソラ、勝也は恐怖を感じ、その場から立ち去るために席を立つ。


 「どこに行くんだい?」


 「帰らせてもらいます」


 「どうして帰るのかな?」


 「自分の胸に聞いてください」


 席を外し、扉を目指し歩く勝也。ソラはじっとその姿をイスに座りながら眺めている。扉のもとにたどり着いた勝也だが鍵がかかっているのか開かない。


 「鍵ならここだよ」


 ソラはポケットから鍵を取り出し、勝也に見せつけるようにヒラヒラと鍵を振っている。


 「鍵を渡してくれませんか?」


 「主人公だろ?僕から奪い取ってピンチを脱出してみなよ」


 「!?」


 瞬間、勝也の左胸が突然痛み出す。勝也はその場に膝から崩れ落ちた。


 「痛いかい?苦しいかい?最上くん?だが、それは勝利のための代償にすぎないよ。ピンチをチャンスに変える、それこそが主人公だ」


  そう言うと同時に、勝也の足元に砂時計が出てくる。勝也は胸の痛みが少し落ち着いてきたので起き上がる。


 「その砂時計は5分間で完全に落ちきる。砂時計の砂が無くなる前に僕から鍵を奪うことができたら合格だ。もし、出来なければ5分後に君の心臓は潰させてもらうよ」


 また左胸が痛む勝也。なんとか倒れずにはすんだが額からは汗が滲み出ている。


 「ハァハァハァ……」


 「安心しなよ、スキルを持っていない君には僕もスキルを使わずに身体だけで戦うよ」


 勝也の目の前の砂時計が宙に浮いたと同時に勝也はソラの目の前にいた。


 「心臓の痛みが引くと同時に砂時計がひっくり返るようにしてあるよ、砂時計がひっくり返ったら僕にかかっておいで」


 砂時計は2人の間を浮いている。ソラの顔は今までで1番の笑顔を見せている。

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