トラブル遭遇率120%ダメダメ男がメチャモテ青春を送るために主人公を目指す

なんちゃってチャンプル

出会い

――H計画候補者観察ファイル。


 2XXX年 4月6日 7時30分 入学式へ向かう途中自宅付近にて自転車との接触事故……流血
 同日 7時45分 最寄駅にて階段より転倒、その際に衝突した不良学生により暴行を受ける……流血
 同日 8時02分 学校の最寄り駅に到着するも建設現場の足場が崩れる事故に巻き込まれる……流血
 同日 8時06分 建設現場から離れる際に居眠り運転による衝突事故……流血
 同日 8時〇〇分〜〜etc……


 以上のことより対象Xを異常人物として測定。
     H計画被験体として拘束せよ。     


 「って言うわけよ、だから私についてきなさい!」


 茶色い髪の毛を左右に束ね、自信満々の美少女が傷だらけの少年に命令する。


 「いやいや、全然納得できないし、そもそもあんた誰?」


 おろしたての制服が数年間愛用していた服のように汚れてしまっている少年が聞き返す。


 「あら、私が可愛いから名前が気になるのかしら?」


 茶色い髪の毛を上から下に撫で下ろしながら少年に
やれやれと言う目を向ける。


 「俺はボンキュッボンのお姉さんが好きなんだよ!ガキンチョになんか興味ねーよ!」


 少女の態度に腹を立てた少年は中指を立てながら挑発するように発言した。


 「殺す!!」


 瞬間、少女の周りに多数の銃火器が現れ一斉に少年の方へ向いた。


 「やめなさい、ナナ」


 無機質で落ち着いた声が帰路に透き通る。


 「申し訳ございません。」


 さっきまでの威勢は感じられないほど弱々しくなった茶髪の少女。まるで借りてきた猫のようになってしまっている。


 「いきなりの非礼を深くお詫び申し上げます。」


 生物レベルで違うものと感じるほどの美貌を持ち、透き通るような銀髪はアート作品のように見える女性が頭を下げて立っていた。


 「あの、あなたたちは一体なんなんですか?」


 あまりにも急な展開なために、脳の処理が追いついていない少年は思わず敬語で口走ってしまった。


 「申し遅れました、私たちはこういう者です。」


 銀髪の女性はそういうとスーツのポケットの内より名刺を取り出して、少年に渡した。


 「主人公…育成機関?」


 少年は初めて聞く単語を理解することができず困惑しいる。


 「はい、私たちは、国家機密主人公開発機関――通称HMPT所属――イブと…」


 「ナナと申します。」


 茶髪の少女ナナと銀髪の女性イブは深々と頭を下げている。


 「国家機密の機関とかそんなこと学校帰りの通学路で話しても大丈夫なんですか?誰かに聞かれてしまうんじゃ……」


 理解がついていかない少年はとりあえず今ある疑問を片付けようと処理をしていく。


 「その心配は必要ありません。私が来た時から既にあなたは私たちの研究機関に来ていますから。」


 はっ!!っと周りを見渡す少年、そこには見慣れない通学路よりもはるかに見たことがないような施設になっていた。


 「えっと……ここって…どこですか?」


 ますます困惑する少年、これでもかというくらいの情報を滝のように流され続け頭はパンク寸前の様子だ。


 「東京のどこかとだけは言っておきます。」


 あくまでも聞かれたこと以上のことは答えないイブ。その後ろでジーっと少年の姿を睨んでいるナナ。


 「そもそも、主人公ってなんなんですか!?」


 少年はひたすらに疑問を解消しようと質問する。


 「主人公とは、どんな困難や難題をも最後は達成し、解決できる人間です。どんなことも成功する勝者と言い換えても良いです。」


 義務的に用意されていたセリフのようにスラスラと話すイブ。尊敬の眼差しで見つめるナナ。


 「あなたにはその素質があります。是非私たち開発機関で主人公になってみませんか?」


 イブがそっと手を差し伸べてくる。


 その白く美しすぎる手は、まるで誰かに作られた夢のようだった。

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