僕と神様の脳内世界創生

あがごん

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今朝の泥棒のやつが良い例。この神様、他人事だと思って僕に無茶をさせようとする。
「そうね、確かに耕太を少し乱暴に扱ってたところもあるから否定はしないわ」
「自覚あるなら止めてくれる!?」
自覚なくてやるのと自覚ありながらやるのってどっちが悪いんだろう? 僕から言わせてもらえば、自覚ありながらやってるのは、気づいていても止めようとしない分、より悪い気がする。
「でもね、」
と一旦リリスは間を置く。
先ほどまでとは打って変わった、真剣な表情をするリリス。リリスがこんな顔するの初めて見た。
「私が耕太に近づいたのって、ただ私自身が楽しむためだけだと思ってる?」
琥珀色の瞳が僕の目をまっすぐに捉えてくる。
リリスが僕に近づいてきた理由か。
改めて理由を考えるとなると非常に難しい。そもそも神様が、何の取り柄もない一般人を気にかけること自体、おかしな話であって、その対象が僕だというのはかなりの謎だ。そのことについて僕だって一度や二度くらい真剣に考えたことはある。だけど、結局出した結論は初めにリリス自身が言っていたことだった。僕に物語を作らせ脳内世界で神様が楽しむため。
でもそれなら別に僕じゃなくていいし、物語を考えるだけなら小説家や脚本家のほうが遥かに良いのが出来るだろう。そしてリリスがそのことに対して自分から聞いてくるってことはつまり、
「楽しむためだけじゃないってこと? え、何。これ以上まだ僕に何か言ってないことがあるの?」
「言ってないことがあるも何も、大事なことを耕太にはほとんど伝えてないわ。この二週間、耕太が私の期待に応えてくれる存在なのか近くで観察させてもらったの。それで、耕太が期待に足る人物かなんだけど……正直なところまだよく分からない」
「分からないの?」
それは残念だなとか別に思っちゃいない。期待通りだったなんて言われても正直困るだけだし。・
「リリスには悪いけど、僕はリリスが望んでるような人間じゃないからね?」
こういうのって一番本人が分かってることだよね。むしろ分かりすぎて辛いレベルっていうか。僕という人物をどのクラスメイトに聞いても平凡という言葉が返ってくる。たぶんグーグル検索しても最初に平凡って出てくるくらい存在が平凡。自分で言って自分で傷つく、誰も得しない自分語りって何なの。



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