僕と神様の脳内世界創生

あがごん

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「田中氏の行動は協定違反に当たらないのかね?」
「大丈夫だ、スパイという名目で潜入している。それよりも水野はどう処理すべきか」
「我々には巨大なバックがいるということを身を持って教えてあげるというのはどうかね?」
ほら、教室で見かけた奴らが隅っこのほうでぶつぶつ言ってる。僕、いつか胃に穴が空くかもしれない。
「今日は水野君の面白い話が聞けて楽しかったです」
「いやいや僕のほうこそ磯野さん達と食事が出来て楽しかったです!」
磯野さんはうふふとにっこり。ああ、どうしてそんなに笑顔が素敵なんだ。磯野さんの微笑みかけるその顔が可愛すぎたため、食事中ずっと頬が緩みっぱなしで食べ物がうまく噛めなかったくらいだ。
「こんなに楽しい時間を過ごせたのはほんとに久しぶりでした」
磯野さんはぺこりとお辞儀をした。なんて礼儀正しい子なんだ。
「えー? じゃあいつもワカメは壱子と一緒じゃ楽しくなかったのー?」
川島さんがぷうと頬を膨らませる。まるでハムスターみたいだ。
「そ、そういう意味じゃなくて、そ、その」
しどろもどろになる磯野さん。ちらと僕を見る。またにこりと笑いかけてくれた。それだけで優しい気持ちになるのはなぜだろう。磯野さんが笑うと僕の体内でそういう成分が作られるのだろうか。この昼、僕は朝の泥棒の話をした。結構盛り上がったと思う。こうして磯野さんとお昼を食べれたのは泥棒のおかげと言っていいかもしれない。リリスのことを語るのは無理があったので、少し脚色して辻褄を合わせたところはあるけど。警察に話した時も最終的に僕がお手柄だったとなっている。
「あの、迷惑じゃなかったですか?」
磯野さんの瞳に不安の色がにじんでいる。いったいなんのことだろう。磯野さんのことで僕が迷惑だなんて思うことがあるはずないのに。
「え? いやもうほんと全然迷惑じゃないですよ。女の子と食事すること自体すごい新鮮で、しかもそれが磯野さんみたいなきれいな人とだからみんなに自慢してやりますよ」
僕がそう言うと、磯野さんの目元がくしゅっとなった。どこか嬉しそうなのは気のせいだろうか。と思ったら急に真剣な眼差しになって、磯野さんの口元が一文字にきゅっと引き締まる。すーはーと一呼吸ついて、
「もし迷惑じゃなかったら明日から……明日からずっと私たちと一緒にお昼食べませんか?」
え? それって……?
「ああ、あのもう、今のでだいぶ話し終えたので泥棒の話の続きはないですよ?」
「いえ、大丈夫です。お気になさらなくても私は楽しいお話ばかり聞きたいとかじゃありませんから」
なんと。僕が磯野ファミリーに入れるとは。今日は母さんに頼んで赤飯にしてもらおう。
「そ、そ、そそれってお、お、お、お、お、おれおれおれもででででですか????」
挙動不審にもほどがある。康明噛み過ぎ。血圧上がりすぎて死ぬとかやめてくれよ。
「ワカメー、壱子も、壱子も入ってるー?」



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