小さなヒカリの物語

あがごん

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じゃなくて、実際に目に見えた。
「……赤い……ほのお?」
ヒカリのは青い炎だ。これはヒカリのものじゃない。これは別の操力? いったい誰の? そういえば前にオウムと戦った時にも似たような感覚があった。あの時はいろいろあったからそれすらも忘れていた。と、一瞬黒い光があたりの風景を覆い、すぐにもとのオレンジ色が景色に染み渡った。
そうか、俺はオウムを倒したんだ。実感がなさ過ぎて、逆に戸惑ってしまう。
これから俺がすること、すべきこと。今はただヒカリの安否を確認して、それから・・・・・・
「俺はどうやってヒカリを助けることが出来る?」
オウムは倒した。で、それから俺はどうやって今のヒカリを元のヒカリの状態にすることが出来る?
「……そうだ! カードだ! ヒカリ! カードで注射器出して、それでまた液体を流せば……」
この前の大怪我もこれで治った。使えば、またすぐにでも穴は塞がってくれるはずだ。
「……だ……め」
「えっ?」
「も……う……だめ……ため……し……た……け……ど……き……か……な……い」
「んなわけねぇだろ! お前が諦めてどうする!? だめだなんてことあるか!」
怪我の状態を見て諦めるなんて早すぎる。早くカードを取り出して、刺して、
「……ちょっと待て。効かないってなんだ?」
もう試した? 注射はもう終わった? なのに何も変わらない? それが意味するのはなんだ?
「……う……う……ぅ……」
目からこぼれてきたのはなんだ? これが答えなのか? この涙が俺の導き出した答えなのか?
泣かないって言ったのに。死なせねぇって言ったのに。
ヒカリを救えない。せっかくオウムを倒したのにこんなことってありなのかよ?
ヒカリの操力が見る影もないほどに弱弱しく揺らめいている。このゆらめきが消えるとヒカリはどうなる?
「……うぅ……ぅ……ぅ……ぅぐっ……」
考えたくない。知りたくない。やっと逢えたはずなのにこんなのって。再会してまだ二週間だけど、もう俺の中じゃヒカリは取り替えることの出来ない日常の一部なんだ。いなくなればきっと俺は壊れてしまう。失うには存在が大きすぎる。
ヒカリの小さな炎に、俺の周りにあるこの炎を注ぎ込めば、ヒカリを救うことって出来ないのか? もう顔に生気が感じられない。
手をヒカリの体に当てて、炎を注ぎ込むようにイメージする。すると、炎が動いた。ヒカリの体に向けて流れ始めて、それは少しだけヒカリの操力を強くさせた。微弱すぎるが、それでも俺にとっては救いの光。手に意識を集中させて、もっともっと力を注ぐ。少しずつ治ってきている気がする。この調子でいけばなんとかなるかもしれない。



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