小さなヒカリの物語

あがごん

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「……えっ」
終わりはいつも唐突に。
運命を呪いたいほどあっけなく。
オウムから伸びた細長いやりが矢を縦に突き破った。そしてそのまま自分にとんでくる。駄目だ、避けられない。
「こーちゃん危ないっ!」
思いもよらない方向から体が押された。体が一瞬ふわっと浮いて、それから地面に倒れた。
元いた場所を見た。そこには人の体を突き破るオウムのやりと、罪の記憶と同じ赤く染まったあの狂いそうなほど痛々しい姿。
目を反らせられればどんなに良かったことか。でも、反らせなかった。
「ヒ……カ……リ?」
この目は閉じるでもなくしっかりとそれを捉えた。ヒカリの胸元にオウムのやりが刺さっている。先端からは赤い血が滴って、それは間違いなくヒカリの体から流れ出ている。
「こーちゃんはいいから逃げて!」
思考は完全に停止していた。目の前の事象を脳が認識出来ない。
「いいから早くこーちゃんは……うっ」
ヒカリの口から大量の血が吐き出た。目に映る風景が瞬間赤く染まった。
そんなの駄目。絶対駄目だ。ヒカリが、血を、流す。また流してしまう。もうこれ以上見たくない。心が痛みで張り裂けそうだ。
「何がいいんだよ……!」
俺だけ逃げることの何が。そんなのいくない。全然いくない。俺はそんなの望んじゃいない。今ここから離れるって事はヒカリを見捨てるってことだ。俺の生きる意味を放棄するってことだ。
ヒカリのいない世界なんて考えられない。
「俺も、俺もここにいる! 死ぬ時はお前と一緒だ! ヒカリが何言っても俺はここを絶対に……」
動かねぇ!と言葉を続けようとした時、
「ばかっ!」
ヒカリの手から何かが投げられて、俺の顔の横を通り過ぎた。振り返ってみれば、地面には短剣が刺さっていた。
「……ヒカリ?」
「目を覚ましてよ! 死ぬことなんて考えないで! 今すべきことをこーちゃんは選んでよ!」
俺は……。強く唇を噛む。一瞬だけ考える。俺は今どうすべきなのか。答えはすぐに出た。オウムを倒して必ずここへ戻ってくること。ヒカリに背を向けて、俺は走り出した。ヒカリが視界から外れる。ヒカリとの距離が遠くなっていく。
今俺に出来ること。俺のしたいこと。それはあの時の続き。走っても走っても見つからなかった答えを

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