小さなヒカリの物語

あがごん

95ページ目

伏せてすぐに引き上げられた。見ると鈴木の隣にヒカリの姿。
「こーちゃん、休み時間のたびに寝てるんだからちょっとした話もできないよぉ!」
結構真面目な顔で言われた。……そうなのか? でもごめん俺は寝ます、と態度で示す。生理的欲求に抗う力は今の俺には残されてないのだ。
「ほら、飯行くぞ!」
英人が俺の右腕を。
「一緒にご飯食べようよ!」
ヒカリが俺の左腕を。
「今日の俺様のランチは特別製だぜ!」
鈴木は俺の頭をつかんだ。
「えっ? あ、ちょっ、放せ! 特に鈴木、お前は俺を殺す気か!?」
きつそうだなと思ったら放っておいてくれよ。
反抗の意思は見せるも結局、鈴木と英人とヒカリに強引に引っ張られ、俺は教室を出た。




「やっぱ屋上は昼食場所の定番だよなー」
「広すぎるくらいだがまぁまたそれがいいなー」
鈴木と英人のどこか気の抜けた会話。
そうなるのも無理はない。その気持ちはよく分かる。
週頭の寒さはどこに行ったのやら、春の陽気でぽかぽかだ。風当たりも良く、眠気を増長させる気候に気温。俺を熟睡させるために用意されたとしか思えない。
弁当箱を開けて、箸で口に昼ごはんを運びつつ、意識は朦朧としてきて、かくん。すぴー。
「なぁ、康介はどうする?」
「……ふぇ?」
「話聞いてなかったのかよ?」
「……殺人的なこの気候はほんとにけしからんな」
目頭に溜まった目やにを落とし、欠伸をきめる。うーんと、思いっきり伸びをする。
「鈴木のお父さんが課長に昇進なさったらしいから、記念してそのパーティーにお友達も誘ってくださるという話だよ」
「……そうなのか鈴木?」
パーティーは家でよくやってるから別に目新しくは感じないけど、他の家のパーティーを一度体験してみるのは悪くないかも。そういうことならと、少し眠気が緩和された。
「今週の日曜日に親父が、家に会社のお偉い方とその部下を呼ぶんだ。曰く<人生最大の喜びに値する空前絶後の立食パーティー>を開くんだとよ」



コメント

コメントを書く

「学園」の人気作品

書籍化作品