小さなヒカリの物語

あがごん

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「そう! ……あ、嫌なら違うとこにするけど?」
「ううん、嫌じゃないよ。すごく嬉しい。うん。週末、約束ね。指きりげんまん嘘ついたらハリセンボン飲―ます、指切った」
ヒカリの不思議なイントネーションに、
「針千本じゃねーの?」
「うちのところはハリセンボンだったよ」
「うちのところって、幼稚園も小学校も一緒だったろ!」
「えー、ハリセンボンだよー」
「あー、はいはい」
「もう、信じてないだろー」
と会話は流れ、ヒカリの表情は少しずつ明るくなっていった。そのままヒカリの部屋で昔の思い出を交代ごうたいに話し合い、時折相づちを打ったり、付け加えの話をしたり。話疲れて、寝る頃には何事もなかったかのようにおやすみと挨拶を交わした。
今週の日曜日はヒカリの誕生日だ。暗い気持ちなんて俺が払拭させてやる。しかし、プレゼントは何をあげたらいいんだろうか。




授業終了のチャイムの音で意識が戻った。……ああ、またか。
「はぁー」
目も開けられないくらいに眠く感じる現在の疲労感に対してため息をつく。
おかしいな。昨日は十一時には寝たのに、脳が睡眠を強要してくる。時計を確認して、再び机に屈服する。もう四限目が終わったのか。二限の途中から記憶がない。
「これで三限連続で寝てるぞ、お前」
声をかけてきたのは前の席の英人ではなく、このだるだる状態で会うと軽くいらっとくる、頭の中が元気な奴。
「せっかく眠ろうとしたのになんだよお前は」
「は? まだ寝んのかよ!?」
「文句あんのか!?」
顔をあげて凄んでみる。俺の席の横に立つ鈴木は鬼でも見たような顔をした。あからさまに顔を引きつらせている。……どうやら俺の顔の状態がひどいらしい。
「最近どうしたんだ? なんか、高校入ってつれなくね?」
「ほっとけ。俺は今眠いんだ」
顔を上げるのもだるくなって、再び机に突っ伏す。
「んもう、こーちゃんは寝すぎなんだって!」



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