小さなヒカリの物語

あがごん

75ページ目

持ちが強くなっていった。
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唐突に目が覚めた。高い場所から落下するような感覚。机が数センチずれてすごい音をたてた。こういうのは本当に焦る。寝てるのがバレたか……?
辺りを見回し、状況を確認する。……よかった。先生は黒板に文字を書くのに奮闘中だ。気づかれてない。しかし、なんというか。体面を気にする割には結構普通に寝てしまった。原因は夜更かしと朝の全力疾走。以後気をつけよう。朝くらい余裕を持って行動したい。あれ、机に立てた教科書が数学に変わっている。誰がこんないたずらしたんだ?
「やっと起きたか」
前の席に座る英人が振り向いて話しかけてきた。
「お前か、これ」
俺は人差し指で置いた記憶のない教科書を指し示す。
「そんな怖い顔するなよ。むしろ感謝して欲しい」
「ただのいたずら……」
言う途中で口をつぐむ。視界に入った黒板が、数字一色だったからだ。先生も変わっている。
「お疲れみたいだな。今は三時間目だ。違う授業の教科書出してたら怪しいと思って俺が変えてあげてたんだぞ」
……三時間目ってことはあれから二時間半も寝てたのか。それはもううつらうつらってレベルじゃないな。
「疑ってすまん。サンキューな」
英人に素直に感謝の気持ちを示しつつ、寝起きの体をごきごきと左右にねじり、復活の感触を確かめる。首をひねると、ものすごい音が鳴った。疲れてたことが至極分かりやすい。
「それにしても……」
また見るようになってしまった。あの夢、罪の記憶。疲れたとき、まさに今日みたいな日。最近は見ることはなくなってたのに、ここ数日は寝る回数に応じて橙色が脳を占拠している。時が経っても目に焼き付いて離れない鮮やかな色の情景。それがいい思い出だったらどんなに良かったことだろう。あの日俺は罪を犯した。
そのことが今の自分に少なからず影響を与えている。流されやすいところとか非常に。俺はあれから自分の意志で何かすることを恐れている。また壊れてしまうんじゃないかって。
ヒカリと再会してからあの夢を見ることが再び始まった。連続ってことはやはり偶然ってわけじゃないみたいだ。なるべく普通に接してきたつもりだが、俺はヒカリを、無意識のうちにあのことと繋げている。すでに許されたことなのになんで今日まで。自問自答はやりつくしてるし、今は難しいことは考

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