小さなヒカリの物語

あがごん

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これが高校生たるものの特権なのか? 自由とはこのことと見つけたり!と勝手に理解しておいた。 
風呂から上がり、喉が渇いたのでリビングに向かうと、ヒカリがいた。椅子に座って何か飲んでいる。
「何飲んでんの?」
ごくごくとおいしそうに飲む、パジャマ姿のヒカリ。ところどころにクマがプリントされていてなんか和む。これは母さんから借りたのかな。母さんクマ好きだし。
「あっ、これね、こーちゃんのお母さんが用意してくれたの。テーブルの書き置きに、レモネードを冷蔵庫に二人分用意してるから飲んでいいわよってあったから」
「へえ、レモネードか」
母さんのレモネードなんて初めて飲む。何で急にまた。でも、すっごくありがたい。確かレモネードって疲労回復にはもってこいの飲み物だったよな。疲れてたからこれはすごく嬉しい。
冷蔵庫に入っているプラスチックの容器から、レモネードをコップに注ぐ。こぽこぽこぽといい音をたてる。喉がからからだったので、俺はそれを一気に飲み干す。
「ぷはぁーうまい!」
「こーちゃんおやじくさいー」
ころころとヒカリが笑う。レモネードうまっ! 酸っぱく作ってるところがまた憎い。母さんに感謝。
「おかわりまだあるからヒカリもどんどん飲んでいいぞ」
二人分と書いておいて、まだ容器には三人分くらい残ってる。
「ほんとおいしいね。こういうの作れるようになって、少しでも役に立てたら嬉しいんだけどなあ」
「役に立つって何に?」
「ほら、私居候させてもらってる身だから少しずつ何か家のことを手伝っていこうと思うの。ただ住むだけで何もしないんじゃ申し訳ないなって。お母さんって何してる?」
「何してるって、いろいろ、料理とか掃除とか」
「料理かあ、それ私の苦手分野だ」
そういえば。ヒカリとは幼稚園に入るずっと前からの付き合いだが、一回小学生の時、俺の誕生日会で作ってもらったことがあった。確かから揚げ。鶏肉に小麦粉まぶして油で揚げればいいだけなのだが、何を間違ったか生ごみのような味がした。誕生日会で人も多かったのだが、みんな唐揚げには手をつけずに、食べろ食べろと俺に勧めてくる。ヒカリちゃんが康介のために作ってくれたんだから、これは康介のもの、みたいな雰囲気だった。味を知ってる本人からすれば生き地獄のようなものだが、事情を知らないやつらはこの幸せ者みたいな目で俺を見ていた。ヒカリの腕前はそういう、普通とは一線をかくしたレベルにあると、その時強く思った。そして泣きながら食べきった。そんなに嬉しかったのかと勘違いもされた。ともかくそういうことなのだ。ヒカリは料理することに向いていない。
「まあ、ヒカリはそんなこと気にしなくていいと思うぞ。母さんが自分で住むことにOK出したんだし」
回想もほどほどに、ヒカリにフォローを入れる。別に母さんはヒカリを住まわせることはなんとも思ってないだろう。それより俺のほうが気にしてるくらいだ。ヒカリも少しは気にして欲しい。年頃の、血

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