小さなヒカリの物語

あがごん

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青い、炎。
「人魂か!?」
自分が言った表現の的確さに感心してしまう。夜という時間帯もあってほんとそれにしか見えない。
「ううん。これは操力を具現化したもの。私の操力の色は青だからまぁ、そうも見えるけど」
ヒカリは言って、改めて自分の手の先を見て「ほんとそっくりだ!?」と驚いた声を上げた。今までそんな見方はしてこなかったらしい。
「それじゃあ見てて。動かすから」
そう言ってヒカリは突き上げた方の腕の人差し指をくるくる回し始めた。炎は動きに従うようにくるくると円を描く。そして指から伸びる青い炎は少しずつ少しずつ細く長くなってゆき、やがてオウムが浮遊していた辺りの高さにまでなる。
「私が適当に揺らすからこーちゃんはそれを矢で射抜いて。弓じゃなかったけど、私達討魔師がよくやってた練習法だよ」
ヒカリは空気を切るようにだがゆっくりと振り回し始めた。追随する速さはそれほどじゃないけど、規則性がなくてあれを弓で当てろっていうのは正直、無理だ。
練習から既にハード。普通モードもクリアしてないのに。
だがしかし、ここで文句を言うのは甚だなお門違い。とりあえずやってみる。
「狙いを定めて……っと」
矢は初め真っ直ぐに空中を疾駆したが、的を通り越し、やがてひらひらと地面に突き刺さった。
「……手ごたえはあったんだけどな。よし、次だ次」
弓を構えて二本目の矢を放つ。が、外れた。さっきより狙いがズレてしまった。
持ってきた矢は全部で五本。すでに二本使ったので、あと三本撃てば落ちている矢を回収しなければならない。気が遠くなりそうな練習だ。
「なんかコツとかないか?」
三十メートル先で炎をオウム仕立てに操っているヒカリにアドバイスを求める。
「コツねぇ……なんかこう、感じることかな……」
さっぱりだ。普通の人間にそういう感覚的なものを求められるのは厳しい。いや、ヒカリはどちらかというとこっちの世界に踏み入って欲しくない感じなので、最初から求められてはない。
そうだ。やると決めたのは自分自身だ。すぐには上達しなくてもひたすらチャレンジする、そんなハングリーさを持つんだ! 上達するまで弱音を吐くな! 俺頑張れ!自分を鼓舞して意識を高める。
 その後、残りの矢のうち一発はあらぬほうへ。二発はコース範囲内には入っていたがやはり当たらなかった。落ちた矢を回収しに回っていると、
「こーちゃん、最初から出来ないのは当然。何事も努力あるのみだよ!」
ヒカリから励ましの差し入れが入った。ありがたい。
「まだ全然大丈夫。小中九年間も弓を引いてきたんだ。少しは自信がある」



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