異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

邪神との対決


『とうとう邪神が動き出したわ……』  

 思っていたよりも少し早かったけれど、こちらの準備も整っている。


『何か想定外があった?』

 ミコトさんがジト目でイリゼ様をにらむ。

『うっ……その、何というか……少々追い詰め過ぎたといいますか……』

 イリゼ様の歯切れが悪い。

『もしかして……邪神が自暴自棄になって、世界もろとも黒歴史を消しにかかった?』

『うっ……その通りです』
 
 ヘタな口笛を吹きながらそっぽを向く創造神。 

 なんてこった!? 大ピンチじゃないか。いや……口笛吹いてるぐらいだから、意外と大丈夫なのか?

『ごめん、カケルくん、作戦失敗。でも安心して、最悪カケルくんだけは守るから』

 全然大丈夫じゃなかった……っていうか俺だけ助かっても意味ないんですけど!?


「な、なにか打つ手はないんですか?」

『……直接邪神の懐に飛び込むしかないわね』

 この際、可能性があるのなら何でもいい。やらなければ世界が終わってしまうのだから。

『大丈夫よカケルくん。こんなこともあろうかと、貴方の子を授かったのだから』

 頬を染めるイリゼ様が超絶可愛らしいが、それってミコトさんの発案では?

『いだだだだだだあああ!!? ご、ごめん、ミコちん、調子に乗りました。すべてミコちんのおかげです』
『……わかればいいの』

 ようやくミコトさんが手を離すと、腫れ上がったほっぺたを押さえながら、涙目のイリゼ様。

 
『と、とにかく、邪神にイソネ君の肉体を付与するところと、送り届けるところまでは私がやってあげるから、あとはイソネ君のチェンジでそこは予定通りお願い』

「わかりました!」

『一応、今は応急処置をしているけど、邪神の世界から漏れ出てくる邪気の影響で強力な魔物が大量発生するから、そっちは、カケルくんのお嫁さんと召喚獣で何とかしてちょうだい。邪神が消えるまでの時間稼ぎでいいから』

「それも了解です!」

 昨日みんなを強化しておいて本当に良かった。今の彼女たちならば、邪神以外なら大抵なんとかなる。


『あと突入メンバーは、カケルくん、イソネ君、ミコちん、キリハ。それ以上は必要ないわ』

 結局は、イソネ君のチェンジが成功するか次第。少数精鋭でチャンスは一度きり、俺たちはイソネ君の露払いが主な仕事になりそうだ。

『じゃあ、いったん戻って、魔物対策よろしくね。イソネ君と合流したらまとめて邪神に転送するから覚悟しておくように』 

「わかりました!」

『キリハ!』
『はっ、ここにおります!』

『ちょっと痛いわよ?』
『へっ?』


――――――ズボッ!!――――――


『痛ったあああ!?』

 キリハさんに両手を突っ込んでこね繰回すイリゼ様。

『痛い痛い痛い痛い痛い!!』 

 泣きわめくキリハさんが可哀想になってくる。

『はい、もう終わったわよ。貴女の本体はここに置いておくから、死んでも安心』

『あの……死ぬつもりはないんですが!?』

『保険よ、保険。キリハったら、「駆、危ない!!」とか言って庇って死にそうだからね?』
 
『そ、そんなことしませんから……でも、ありがとうございます……』

 図星だったのか、真っ赤になっているキリハさん。

 でも良かった。キリハさんが死なないとわかっただけでも精神的にかなり違う。

『カケルくん、何を他人事なこと言っているの? 次は貴方よ?』

 うえっ!? やっぱり俺もやるのか……。

『駆……言っておくけど、死ぬほど痛いわよ? ふふふ』

 キリハさんが仲間を見つけたとばかりに口角を上げる。マジかよ……そ、そうだ、俺は遠慮しようか――――

『ふふふ、逃さないわよ?』

「ぎゃあああああああ!?」



 ちょっと痛いわよどころではなかった。文字通り死ぬほど痛かった。

『ふふふ、最後はミコちんね』
『私は元々神界に本体があるから美琴をお願い。私はイリゼを殺るから』

『ち、ちょっと待って!? なんか字がおかしい! 私は必要ないから!! ぎゃああああああ!?』
  
 ミコトさんにこね繰回され絶叫するイリゼ様。

「う、痛いの嫌なんですけど……」

 すでに涙目の美琴。

『ふふふ、覚悟しなさい美琴!』

「ぎゃああああああ!?」

 イリゼ様とミコトさん二人がかりでこね繰回される美琴。恐ろしくて震えが止まらないぜ!

 残念ながら、チェンジを使うイソネ君にはこの方法が使えない。誠に残念ながら。



「イリゼ様、お願いします……この世界を、どうか……お願いします!!」

 別れ際に思わず言ってしまった。そんなこと俺に言われるまでもないだろうけど、それでも……言わずにはいられなかったんだ。

『ふふっ、そんなこと言われるまでもないわ。でも……任された。安心しなさいカケルくん。貴方には最強の女神がついているのだから』

 そうだよな。今更弱気になってどうする。

 いつだってやることは変わらない。これまでも、これからも。

「行ってきます!!」
『行ってらっしゃい!!』

 勝利の女神の祝福を背に神界を後にする。

 待ってろよ邪神。お前の自暴自棄、俺たちが必ず止めてみせるからな。

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