異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
動き出した邪神
「タチアナさん、つかぬ事をお伺いしますが、もしかして、住んでいらっしゃるのはコーナン王国のジモ村で、娘さんの名前はリズではないですか?」
「あら? よくご存じですね、英雄さま?」
タチアナさんはきっと驚きで目を見開いているのだと思うが、ゴーグルをしているので見えない。っていうか、ゴーグルにマスク、マントってほぼ不審人物感満載だ。俺のせいですいませんね。
「ええ、実は様々な縁がありまして、リズちゃんの婚約者イソネ……いえ、アダム君とは友人なのですよ」
イソネ君のこの世界での名前はアダム君だった。危ない危ない。
「まあ……アダムと!? なぜ英雄さまと知り合ったのか、まったく想像もつきませんけど……」
たしかにな。地理的な条件だけでも、普通なら絶対に出会わないはずだし。こちらから捜し出して、無理矢理接触したんだけどね。
「詳しい状況は後で説明しますけど、アダム君とリズちゃんは、行方不明のご両親を探しにコーナン王国の王都へ向かって旅を続けていますよ。アダム君のご両親もこちらに?」
「あの二人が旅を!? ちょっと信じられないけど、心配かけてしまっていたのね……こんなことなら、もっとちゃんと説明しておけば良かった……ええ、みんな一緒よ。ボディガード兼里帰りね。私たちは全員クリスタリア出身なのよ」
タイミング悪く災厄に巻き込まれてしまったこともあるが、そもそもタチアナさんは、自身が大公妹であることを夫と元パーティ仲間であるアダム君の両親以外には明かしていないそうだ。
本来なら今回の仕事が終わってから二人が成人する前に自身のことを話すつもりだったらしい。
成人の儀によって、リズのスキルが明らかになれば、騒ぎになることはわかっていたからだ。
結局災厄が起きたことで帰れなくなり、そこから歯車が狂っていってしまったんだな。
***
今は俺の異空間に来ている。
ここにいるのは、リズちゃんのご両親とアダム君のご両親。彼らに、俺が知る限りの状況を伝えるためだ。
最初、村で襲われたことを話した時は青褪めていたけど、さすがは元高ランク冒険者たち。
俺の説明をすんなり受け入れて無事を喜んでくれている。
「しかし、まさかアダムがハーレム状態とはなあ……」
4人が、信じられないとばかりに同時に頷く。さすがは元パーティメンバー。息もぴったりだね。
でもさあ……結構重要なこと話したのに、食いつくのそこなのか……。
「ま、まあ、無事邪神を何とかすれば、アダム君の身体は元にもどりますから、ご安心ください」
「……安心しろと言われてもなあ。だって邪神だろ? 失敗したらこの世界が滅ぶんだよな?」
アダムの父親ゼノンさんが呆れたように笑う。まあ荒唐無稽なことを言っている自覚はある。
「まあゼノンったら。失敗したらどうせお終いなんだから、私たちは成功することだけ考えていればいいのよ?」
ゼノンさんの妻でアダム君の母親ヘラさんが明るく笑う。なるほど、アダム君の人柄は、このご両親の影響も大きいのかもしれない。とても前向きで、気持ちが良いひとたちだ。
『コーヒーをどうぞ』
おかわりのコーヒーを持ってきたミヅハが優しく微笑む。
「うへへ、あ、ありがてえ! これ美味しいんだよな」
ゼノンさんはデレッデレな様子でコーヒーを受け取る。そういえば、やたらとおかわりしていたのは、ミヅハが原因なのかもしれない。
「ふふっ、す、すまないね! 美女からいただくとさらに美味しく感じるよ」
リズちゃんの父親カインさんもミヅハに目が釘付けとなっている。あの……タチアナさんから殺気が……!?
――――――スパーン!!――――――
「「いってええええ!?」」
鼻の下を伸ばした男性陣二人が、奥さまから同時に引っ叩かれる。
「まったく鼻の下伸ばしちゃって……」
「ごめんなさいね。うちのエロ旦那が失礼を……」
不可抗力だと擁護してあげようかと思ったけど、矛先がこちらに向いたら怖いので黙って頷く。
「それでどうしますか? 今すぐ彼らのところへ連れてゆくことも出来ますけど?」
「うーん、それも悪くないんだけど、今のアダムは女の子なんでしょう? せっかくなら、元の姿で再会したいわ」
ヘラさんがごもっともなことをおっしゃる。しかし――――
「でもめっちゃ美女なんだろう? もったいない――――」
「ちょっとだけ興味が……いや、探究心が――――」
――――――バチーン!!――――――
「「いでええええええ!?」」
さっきよりも、かなり痛そうな本気の平手打ちが同時に炸裂する。
「ちょっと自分の息子相手に何考えてるのよ!!」
「貴方……これ、リズに話したらどうなるかしらね?」
なんて恐ろしい。我が子に嫌われるのはキツい。
俺もこれからは気を付けないとな。パパ大っ嫌いとか言われたら立ち直れないかもしれない。
「というわけだから、再会は邪神の件が終わってからでお願いしますね?」
タチアナさんがうまく話をまとめてくれる。
「わかりました。再会できるように全力で頑張りますよ」
これで、イソネ君たちの方はすべて解決かな? あとは邪神をなんとかすれば丸く収まるというものだ。
***
異空間から戻って、みんなに合流する。
さあて、ここからが本番だ。俺の混浴担当大臣としての職務を果たさねば……。
意欲に燃えていた俺だったが、アリエスの一言で状況は一変することになる。
『カケルくん、すぐに来て……急いで!』
「アリエス!? いや……イリゼ様か? まさか……」
嫌な予感がする……というか、もうそれしかないよな。
「みんな、どうやら邪神が動き出したかもしれない。悪いが一応準備をしておいてくれ」
一様に神妙な面持ちで頷く一同。
『カケル……私も行く』
「ミコトさん……はい、一緒に行きましょう」
そう言い終わるや否や、俺とミコトさんは、神界に召喚される。
いつもと同じ、だけれども、今日はいつになく騒がしい。
「イリゼ様!」
『来たわねカケルくん。ミコちん』
今日のイリゼ様もやはりいつもと違う。どこかピリピリしているように感じる。
『とうとう邪神が動き出したわ……』
イリゼの言葉に、やはりそうかと、気を引き締めるカケルであった。
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