異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
深海幻の秘密
「ところで、その邪神とやらとは何時対決するんですか?」
幾分吹っ切れた様子のイソネ君。
まあごもっともな疑問だな。
「予定通りに行けば、数日以内に何らかの動きがあると思う。それまでは基本的に自由に行動してもらって構わないが、一つだけ約束して欲しい」
「な、なんですかね?」
そんなにビビらないでも大丈夫だよ。簡単なことだしな。
「なあに、邪神と対決するまでは、絶対にチェンジスキルを使わないこと。それだけだ」
「え? それだけ……? わかりましたけど、どうしてなんですか?」
イソネ君には、全面的に協力してもらうわけだし、場合によっては、しばらく女性の姿で過ごしてもらうことになるからな。
それには邪神のことも含めて説明しなくてはなるまい。
「イソネ君、先に言っておくけど、邪神は元勇者の日本人、深海幻が変異した成れの果てだ」
「うえっ!? じ、邪神って元日本人だったんですか? あれ……深海幻ってもしかしてあの有名な小説家の?」
さすがにイソネ君も知っていたか。まあ、作品でもそれ以外でも、何かと世間を騒がせたからな。
「ああそうだ、イソネ君は、彼の盗作騒動は知っているか?」
「はい、でも事実無根だったんですよね? 彼が死んだあとに分かったみたいですけど……」
悲しそうに目を伏せるイソネ君。悲劇の作家として映画まで作られたからな。
「まあ盗作ではないのは間違いないんだけど、別人が書いたというのも間違いないんだよ」
誰も知らない深海幻の秘密。
「え? それってつまりゴーストライターがいたとか? 実は二重人格だったとか?」
「イソネ君は中々鋭いじゃないか。イイ線言っている。実は、深海の身体の中には、二つの魂が同居していたんだ」
それこそが、深海幻の秘密であり、悲劇だった。イリゼ様によると、極めて珍しい例で、十億人に一人ぐらいの確率で生まれるらしい。しかも男女の魂が同居するとなると、さらに天文学的な確率になるのだとか。
「つ、つまり、深海幻の中には、二人の人間がいた……ということ?」
「そうだ。しかも、男と女だったから大変だっただろうな。結婚どころか、異性と付き合ったこともなかったみたいだから」
「うわあ…それは辛いですね……」
「結局、男の深海が書いた作品はまるで売れず、女性の深海が書いた作品は大ヒットした。男の深海は、ただでさえ女の才能に嫉妬していたのに、盗作疑惑まで世間から突き付けられて絶望し自殺。女の深海は、ただでさえ身体が男な上に、やっと才能が開花した小説すら書けなくなって絶望したんだ」
「そうだったんですね……それが何で邪神に?」
「あまりに不憫に思った女神さまが、勇者として転生のチャンスを与えたんだ。本来自ら命を絶ったものは、その罪を償うまで、長い間転生することは出来ないが、勇者として使命を果たすことで、償いの前倒しをするということだな」
「でも、深海は使命を果たさなかった?」
「いいや、男の深海は使命を全うしようとしたみたいだけど、彼女、女の深海の方は我慢ならなかったみたいだ。2回目の人生も男の身体だし、主人格はあくまで男の深海にあったからな。不満や世界に対する不信感、恨みつらみが蓄積していったのだろう」
「…………」
「限界を迎えた女の深海は、徐々に主人格から主導権を奪ってゆき、魂の分離や性転換の研究を始めたんだ。決して許されることではないが、気持ちがわからなくもないだけにただただ悲しい」
膨大な犠牲者と引き換えに誕生したのが、ヒルデガルドたち魔人だ。
結局、望む結果は得られなかったようだけど。
「人生のすべてをつぎ込んだのに結果が得られなかった女深海は、最後の手段として、天使たちの力を吸収して邪神となった。その際、男の身体と、男深海の魂を分離することに成功したんだが……」
「ど、どうなったんです?」
「肉体を失った女深海、つまり邪神は、魂だけの存在となってしまった。そこで、自らの存在を維持するために、世界中に邪神の因子をばら撒き、自分の世界に閉じこもってしまった。そうやって理想の肉体を作りだそうと思ったんだろうな」
「じゃ、邪神の因子……!?」
「ああ、彼女の魂と適合率の高い肉体に憑依して、精神を操って巣に連れてゆく。本当に恐ろしいものだ。大半は俺が潰したけどな」
「それじゃあ、もしかして邪神には……」
「その通り。まだ肉体のない魂だけの存在ということだ」
「だったら、勝てそうじゃないですか!」
急に元気になるイソネ君。
「だから言ったろ? 勝算はあるって。だけど、はっきり言って、戦闘になった時点で負ける可能性が高い。物理、魔法、状態異常無効。こっちの攻撃は有効打とならないのに、向こうはユニークを除くあらゆるスキルを使う化け物だ。おまけに吸収とかいうチートスキルまで持っているからな」
まあ、デスサイズが当たれば、切り裂けるとは思うけど、向こうの方が早い可能性だってあるしな。
「ええええ……じゃあ、どうすれば? あ、なるほど、そこで俺の出番というわけですね?」
察しの良いイソネ君。
「そうだ。確実に勝つためには、イソネ君のスキルが一番なんだ。期待しているぞ」
「ふふっ、任せてください。でもまさか俺のスキルが世界の役に立つなんてな~」
「ははは、その意気だ。その身体も、彼女に女性として生きて欲しいから用意したんだよ」
もう2度と同じことの繰り返しが起こらないようにな……。
「カケルくんはそこまで考えて……ってあれ? そうすると、俺はどうなっちゃうの? 身体がないんでしょ!? え? 俺、死ぬの? いやああああああ!?」
ちっ、気付いたか……っていうのはもちろん冗談だが、大丈夫だ。
「安心してくれ。女神様が、特別に肉体を用意してくれるって言ってたから」
「そ、そうなんだ……驚かさないでよ~!」
大丈夫……だよな? なんか不安になってきたぞ。
後でイリゼにちゃんと確認しに行こうと心に決めるカケルであった。
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