異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
死亡フラグ回避キス
「無事、条約が締結出来てよかったな、ビザンティヌス」
一度散会した首脳会議だったが、急遽グリモワール帝国が条約に加わることとなり、もう一度集まってもらったのだ。せっかく楽しんでいたところを悪いことをしてしまった。
「ああ、すまなかったな。俺は明日でも良かったんだが、助かったよ。それにしても、想像を絶する場所だな、この屋敷は……」
もう感覚が麻痺しているので、そんなことを言われてもいまいちピンとこないが、ビザンティヌスがそういうのだから、きっとそうなのだろう。
「それで、あのゲートとかいうとんでもない扉は、今後も使えるのか?」
「ああ、もちろんさ、パパ兄さま」
「……なんだ、そのふざけた呼び名は? せめて父兄さまと呼べ」
「いや、だってそれだと、乳兄さまみたいで笑えるから……」
「むぅ……それならば、ビザンティヌスで良い」
「ふふっ、わかったよビザンティヌス」
帝国が条約に加わったことで、帝国の支配下にある国も自動的に加盟されることになる。
そして、大陸の東西の帝国に挟まれたコーナン王国をはじめとする条約未加盟地域も、遠からず加盟する流れになるだろう。だって、加盟していた方が、圧倒的に得だしな。
構想を作ったときは、まさかスタートからここまでの規模になるとは思っていなかったけど、まあ結果オーライだ。
だが、ひとつだけ想定外だったことがある。
「それで、もちろん俺は家族なんだから、これから毎日屋敷に来てもいいんだよな?」
駄目と言っても来る気満々のビザンティヌス。まあ、娘や妹たちがこれからこの屋敷で暮らすわけだから、断ることなど出来ない。
実は、ビザンティヌスだけではなく、他の国の首脳たちも毎日来るみたいなことを言い出している。食事も美味いし、風呂も快適。しかも他国との情報交換も出来ると来たもんだ。まあ気持ちはわかる。
ということで、交流期間が終わってからも、ゲートの使用は原則OKにした。
これからは、毎朝、毎夜、俺の屋敷が国際交流の舞台となるのだろう。というか、もうみんな家族じゃんね?
うんうん、世界が平和になるのなら、いくらでも屋敷を使ってくれ。お嫁さんたちだって、家族と毎日会えた方が嬉しいだろうしな。
「先輩、お疲れさま。これで世界は平和になりそうだね!」
キンキンに冷えたバヌヌジュースを両手に持った美琴が、ほいっと俺に片手を差し出す。
「おお、サンキュー美琴。でも、まだだ。まだ終わっていない」
「……邪神だね?」
バヌヌジュースをストローで吸いながら目を細める勇者。
「ああ、そろそろ動き出すかもしれないからな」
ああ、バヌヌジュースマジで美味い。こういう時、念話は便利だ。飲みながら、食べながらでも問題なく話が出来るからな。
「ねえ……先輩。邪神の件が終わったら―――」
美琴の唇に指を押し付ける。死亡フラグは全力で避けなければならない。
――――先輩との赤ちゃん欲しいな――――
わかってる。口に出さなければフラグは立たない。念話最強かよ。
「あ、駆、こんなところにいた。邪神の件が終わったら―――」
刹那の唇に唇を重ねて黙らせる。死亡フラグは全力回避!!
不満そうな美琴にもキスだ。
「あ、御主兄様、邪神の件が終わったら―――」
クロエにも死亡フラグ回避キス。
「旦那様、邪神の件が終わったら―――」
セレスティーナにも死亡フラグ回避キス。
「貴方様、―――!?」
シルフィとサラにも死亡フラグ回避キス。あ、やべえ、まだ何も言ってなかったか。
「ダーリン、―――!?」
エヴァにも先手必勝死亡フラグ回避キス。
くっ、今日に限って、みんな死亡フラグを立てようとしやがる。
まさか、これが邪神の影響なのか!? 負けない、そんなものに負けるわけにはいかない。
その後も、お嫁さんたちが口を開こうとするたびに死亡フラグ回避キスを使って切り抜ける。
『あの……カケルさま。大変申し上げづらいのですが、8割近くは死亡フラグと関係なかったようですよ?』
ヒルデガルドから、呆れたような念話が届く。ですよね~、俺もそうなんじゃないかって、薄々思ってました、はい。
だが、今更途中でやめるわけにはいかなくなってしまった。死亡フラグ無関係キスを続行する。
『お兄様、そろそろお風呂に入りませんと、晩餐会に間に合いませんよ?』
ミヅハから助け船ならぬ湯船のお知らせだ。
そうだった。今日はみんな外で働いていたからな。
屋敷の大浴場はお客様が使用しているので、今日は異空間の大浴場を使う。時間の経過を気にせずゆっくり入れるしな。
「よし、じゃあみんな行こうか?」
「「「「「「はーい!! 」」」」」」
接客をしてくれているアイシャたちメイド組をのぞくお嫁さん全員で異空間へ向かう。もちろんメイド組も交代で一緒に風呂に入ることは言うまでもない。
「…………」
よく見ると、レーニャさんやマーガレットさまたちお嫁さん以外の王妃様たちがかなり混じっているのだが、気にしないことにする。
「あ、あの……英雄さま!? いきなり混浴はさすがに恥ずかしいのですが……」
リベルテのクリスティーナ王女が恥ずかしそうに訴える。
そりゃそうだ。今日逢ったばかりの俺といきなり混浴はハードルが高すぎる。
だが、経験上、ここさえ乗り越えれば、一気に距離が縮まるんだ。
「大丈夫、みんな家族だし、条件は同じだ。それに、俺の洗体は気持ちいいぞ?」
「ふえっ!? 英雄さまが洗ってくださるのですか!? ……わ、わかりました、入りましょう!」
新規メンバーも加えた、大入浴会。これからもきっと毎晩繰り返される光景だろう。
ひょっとしたら、まだメンバーが増える可能性すら……ごめん、ほぼ間違いなく増えるだろうね。
俺は過去最高数の分裂によって、全員を個別洗体し、最後はみんなで仲良く湯船につかる。
石鹸の泡がはじける様に、みんなの笑顔もはじける楽しい時間。
ありがとう、俺は世界一幸せだ。だからさ……ちゃんとみんなも幸せにしないとな。
想いはずっと変わらない。あらためて自らの成すべきことを確認するカケル。
屋敷での長い永い夜がようやく始まろうとしていた。
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