異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

最後のレジスタンス


 そろそろ限界が近いかもしれない。

 私たち帝国に対するレジスタンスも、徐々に拠点を潰されて、今やここが最後の砦となってしまった。

 ともに戦ってくれたメンバーたちのためにも、全滅だけは避けなければならない。辛い決断ではあるが、一旦国外へ逃れて、体制を立て直す必要がある。


 勝算はまだある。諸外国へ帝国の脅威をうまく伝えることが出来れば、反帝国包囲網のようなものが構築できるかもしれない……いや、やるしかない、やらなければならない。

 ここレジスタンスに集まった者たちは、みな帝国に国や家族を奪われたものばかり。元王族から元奴隷まで、その出自はバラバラだが、帝国の圧政に対抗するという目的のもと、命がけで戦ってきたのだ。

 みんな、すまない……私が力不足なばかりに。

 もっとうまく戦えたのではないか? メンバーを失うたびに、いつもそんなことを考えずにはいられない。

 いや……もうやめよう。今はこれからのことを考えねば。



「マクシミリアさま、帝都からヴァレリアさまが戻られました」

「わかった、今行く」

 帝都へ偵察に出ていた妹が戻ってきた。その情報の内容によって、今後の方針が決まることになるだろう。


***


「ご苦労だったな、ヴァレリア」

 レジスタンスの幹部が集まっている作戦本部。皆、帝都の最新情報を待ち望んでいたのだ。

「……マクシミリアさま……いえ、お姉さま。大人しく帝国に降伏しましょう。ふ、ふふっ、ふふふ――――がっ!?」

 態度が豹変した瞬間に、背後から薬品をかがされて意識を失うヴァレリア。

「やはり……すでに敵の手に落ちていたか……くそっ!!」

 縛り上げられる妹の様子を見ながら、危険な帝都へ行かせてしまった自分の判断を呪う。なぜもっと強固に反対しなかったのか。止めることができたのは私だけだったのに。


「急げ、全員ここから脱出して隣国へ逃れるぞ。ヴァレリアがここへ来たということは、この砦のこともすでに帝国側に筒抜けだろうからな」

 もともと妹が戻ったら、すぐに脱出する予定だったので、すぐに準備は完了する。

 複数のルートを通って、最終的に合流することになるが、全滅を避けるための消極的な作戦だ。最悪誰かが生き残ればそれでいい。

 次々と抜け道から脱出してゆくレジスタンスのメンバーたち。必ず生きて再会できることを祈りながらその背中を見送る。

「マクシミリアさま、あとは我々だけです。行きましょう!」

 最後に残った私たちが、抜け道の入り口を潰してから撤退しなければならない。少しでも追っ手からの時間を稼ぐ必要がある。

 だが――――


「ふふふ、どこへ行こうというのです? 早く帝都へお戻りくださいマクシミリアさま」

 いつの間にか周囲はすっかり帝国兵に包囲されていた。
 
「……リキニウスか。近衛隊長直々にとは、ずいぶんおおげさなことだな?」
 
 意識のないエリカを仲間たちに預けて、先に逃がす。

 近衛隊長リキニウス……こいつは危険だからな。普通なら勝てるかもしれんが、おそらくはもう……。

「できればお前を殺したくはない。見逃してくれないだろうか?」

 無駄だとわかってはいるが、一秒でも時間を稼ぎたい。


「ははは、無駄ですよマクシミリアさま。お仲間は全員、すでに捕らえましたので」

 見れば、先に逃げたはずの仲間たちが次々と連行されてくる。

 くっ、こうなれば私だけでも……単身なら何とでもなる。私は風皇のマクシミリアなのだから。

「おっと、逃がしませんよ? 逃げたら、ヴァレリアさまの命が無くなりますが?」

 
 ……はったりだ。そう言い切るにはすでに帝国は狂いすぎている。今の皇帝……いや、兄ならば、妹の命を奪ったとしてもまったく不思議ではないだろう。


 だが――――


 すまないヴァレリア。私はここで捕まるわけにはいかない。そんなこと、誇り高いお前自身が望むわけないのだからな。散っていった多くの仲間たちのためにも、ここで終わるわけにはいかないのだ……。


 私の周囲に膨大な風の奔流が集まってくる。何物も近寄らせない無数の刃のような風の障壁。風皇のマクシミリアたる所以。このまま一気に突き抜ける。

「くっ、やれっ、逃がすな!! う、うぐっ……ぐうぅ……」

 な、なんだ!? 突然苦しみだすリキニウスと帝国兵たち。意識のないヴァレリアもうなされているように見える。最後に体が淡く光を放つと、みな意識を失い、動かなくなった。


「ヴァレリア!!」

 良かった……どうやら息はあるようだ。それにしても一体何が? 妹からまったく邪気が感じられなくなっている。まさか……もとに戻ったというのか?


『はい、そうですよ、マクシミリアさま。皆さまの魔物化は解除されました。私のお兄様、英雄カケルの手によって』

 反射的に防御姿勢を取るが、敵意はまったく感じない。むしろ神々しい神聖な空気と癒しすら感じる。神殿でもここまでの聖気を感じたことはない。

「え、英雄さまが降臨されたのですか?」

 そう問うのがやっとだった。なにせ直視するのも憚られる、そんな何かを彼女から感じてしまっていたから。

『はい、その通りです。それでですね……マクシミリアさまに耳よりのお話があるのですが……?』

 ちょっとだけ悪戯っぽく微笑む妹君に心臓が跳ねる。

『マクシミリアさまとヴァレリアさま、お二人ともお兄様に会ってみませんか?』

 え、英雄に会える? そ、それは願ってもない事、ぜひお礼も言いたい。

「もちろん、喜んで!!」

『ふふっ、わかりました。ですが、一つだけ。お兄様に会うということは、お嫁さんになることと同義です。それでも構いませんか?』

「ふえっ!? お、お嫁さん!?」

 意味がわからないが、私もヴァレリアも独身だ。英雄さまに嫁になって欲しいと言われれば、是非もない。そもそも、断る女性などそうはいないのではないか?
 
 私はその提案を喜んで快諾した。ヴァレリアには……後で説明すればいいだろう。妹は、私以上に英雄に憧れていたからな。  
 

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