異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

リストルテとフランソワーズの探検


「ち、ちょっと、長居しすぎたみたいね……」
「そ、そうね、そろそろ行かないと……」

 カケルの映像に一発で撃沈され、極秘映像に大興奮だったリストルテ。とっくに中毒患者になっているが、同好の士を得て、より一層燃え上がったフランソワーズ。

 気付けば、2時間以上も経過しており、すでに各種パーティーが始まっている時間だ。情報収集のためにも参加しないという選択肢はない。


「ところでフランソワーズ、私、思ったのだけれど、せっかくユスティティア、セレスティーナ両殿下と従姉妹同士なんだから、そのコネを使わない手はないと思うのよ?」

 服を手に取りながらそんな提案をするリストルテ。彼女はカケル好みの控えめな身体を隠しながら、真新しいギルド受付嬢の制服に袖を通してゆく。本人はそんなことは知らないので、自分の貧相な身体に多少コンプレックスを持っているのだ。

「ええ、私もそのつもりで来たから、ほとんどノープランだったのですけど、さっきメイドさんに聞いたら、セレスティーナお姉さまは、代表として国際会議に参加されていて、ユスティティアお姉さまは、ゴールドラッシュの開発計画に行ってらっしゃるから、お屋敷にはいらっしゃらないそうなんです……」

 フランソワーズは、その豊満でしっかりと主張するところはしているシミ一つない磁器のような身体をなまめかしく動かしながら、同じように制服に袖を通してゆく。リストルテの羨望のまなざしには気付く様子もない。

「そうか……私もなにかコネがあれば良かったのだけど、ノスタルジア殿下とは面識がないし、ミヤビさまとは何度か挨拶を交わした程度だから……リーゼロッテさまは同じ学園でしたけど、一度も話したことないのよね……リリスさまはギルマスだから、ここにはいらっしゃらないし」

 二人同時にため息をつく。どうやら夜になって、知り合いが屋敷に戻ってくるのを待ったほうが良さそうだ。結論はそこに行きつくのであった。


「だったら、せっかくのカケルさま直伝のお料理、存分に堪能しましょうか!」
「そうね、異世界料理……すごく興味あったのよね!」

 二人の興味は、色恋から食欲へとすっかり移り変わっている。

 部屋を出ると、手をつなぎ庭園へと向かう。メイドからもらったイベントマップには、どこでどんな料理が食べられるのかがちゃんと書いてある親切仕様。

 今回会議に参加している各国の伝統料理や名物料理コーナーも捨てがたいが、まずは異世界料理コーナーに行く必要がありそうだ。

「……こんなところに1週間もいたら、オークになってしまわないか心配だわ」
「……たしかに。じゃあこの胃薬飲む? 最近セントレアで人気の薬なんですけど、効果抜群ですわよ?」

 フランソワーズによれば、消化のスピードを引き上げるので、いつもの倍は余裕で食べられるらしい。ただし、その分トイレは近くなるのはご愛嬌。

「何それ……欲しい。あれ……これってもしかして、『ONIISAMA』ブランドの商品なの?」
「そうそう、最近服だけじゃなくて、薬なんかも売り始めたのよ」

『ONIISAMA』は、最近セレブの間で絶大な支持を得ている新興ブランドだ。当代聖女をはじめ各国の王女や貴族たち、そして高位の女性冒険者たちまで虜にしている。すでに神殿本庁では、神官たちの新しい神衣を『ONIISAMA』製に切り替えることが決まっている。

「あちゃー、最近忙しくて行けてなかったから、気付かなかったよ……」
「ふふっ、しかも値段もお手ごろなのよ? 一瓶たったの五千お兄様なのですわ!」
「え? 一瓶たったの五千お兄様!? 安っ!?」

 一般庶民からすれば決して安くはないのだが、リストルテとフランソワーズは高給職である受付嬢の頂点に君臨しているのだ。ちなみに二人のギルドカードには、1億お兄様以上入っている。

「たくさんあるから、一瓶差し上げますわ。お友達ですからね」

 ありがとうと、涙ながらに感謝するリストルテ。

「そうだ、胃薬のお礼に良いこと教えてあげる。実はね。今度の新しいギルドの制服……『ONIISAMA』製に決まりそうなのよ!! まだ内緒だけどね!」
「ほ、本当ですの!? あわわわわ……どうしましょう。嬉しすぎておかしくなりそうです……」

 あまりの興奮におかしくなり始めるフランソワーズ。サービスよと、もう一瓶おまけしてしまう。



「さて……着いたけれど、予想通りすごい人ね……」
「ええ……まあ、出遅れた私たちが悪いのです……」

 異世界の花々が咲き誇る『サクラの花園』の中央に位置する広場には、異世界料理を堪能しようと、千人以上の人が集まっている。料理だけではなく、美しい花を愛でることができるので、まあ人気が出るのも仕方がないだろう。

 とりあえずと、適当な列に並ぶ二人。

「おお、綺麗なお嬢様方。お困りのようですね?」

 別に困っていないので困惑する二人。

「はじめまして、俺はベルトナー。よろしければ屋敷内をご案内しますよ? ぐふふ」

 この赤毛の男はいったい何を言っているのだろうか? 困惑を通り越して怒りが沸いてくる二人。せっかくの楽しい気分が台無しではないか。 

「……結構です。私たちはお料理を堪能しに来ただけですから」

「そうですか……いやあそれは残念、俺は英雄カケルくんと特別なコネがあるんだけどなあ……」

――――ピクッ――――

「そういえば、カケルくんは俺の事、親友って言っていた気がするなあ……」

――――ピクピクッ――――

「ああ、俺なら厨房へ入れるから、こんな風に並ばなくても、出来立ての料理食べさせてやれるぜ?」

 激しく揺れ動く二人の心。

 ここが攻めどころと悟ったベルトナーは、さらにとどめを刺そうと、口を開きかける、が――――


『ベルトナー? ここで一体何をしているんでしゅか……?』
「ひ、ひいぃ!? り、リッタ、ち、違うんだ、これにはマリアナ海溝より深いわけが……」
『ふう……やはりベルトナーの頭部も、私とお揃いにすべきでしょうか……』
「ごめんなさい~!! もう二度といたしません……」

 土下座したまま、リッタにズルズル引きずられてゆくベルトナー。

「……一体なんだったのでしょう?」
「……それより、リッタさまの頭部が無かったようなきがするんですが……」

 リストルテとフランソワーズの探検は始まったばかりだ。

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