異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
本の世界へ 後編
「おっはよう! 駆」
教室へ入ると、満面の笑みで、桜が駆け寄ってくる。園芸部の部長で、カルト的な人気がある。隠れファンも多いらしいが、本人はあまり自覚がないらしく、天真爛漫な振る舞いがさらに人気を集める結果となっているから心配になるよ。
桜は美琴の親友でもあり、昔から一緒に遊んだいわば幼馴染の一人だ。高校生になってからも、なんやかんや理由をつけて、うちに入り浸るのは何とかならないのだろうか?
「おーい、桜、俺もいるんだけど?」
「あ~いたんだ、おはよう都名、寝癖が酷いから気付かなかったよ」
都名がジト目を向けるが、いつものことなので、これもあいさつのようなものだ。
「おはようございます、大海原さま」
席に着くと、隣の席から上品で涼やかな声が聞こえてくる。
「おはよう、ノスタルジア。今日も可愛いな」
「ふえっ!? か、可愛い!? だ、駄目ですわ、そんなこと仰らないでください……」
真っ赤になって照れているのは、外国から留学してきているノスタルジア。某国のお姫様だけど、詳しいことはシークレット。その圧倒的なお姫様感は、制服を着ていても隠しようもなく、先生を含めて男女を問わず虜にしてやまない。
みんなには秘密なんだが、ノスタルジアは、ヒルデガルド母さんのお姉さんの娘で、つまり俺のいとこだ。今はホテル暮らしだが、今週末からはうちに居候することになっている。クラスメイトには絶対に言えないけどな。
わざわざ日本にやってきたのは、会いたい人がいたかららしいんだが、聞いても恥ずかしがって教えてくれない。むう、気になる。
「おはよう、四葉。また小説書いてるのか?」
反対隣りの席でせっせと書き物をしているのは、四葉。こう見えて、現役商業作家様でもある。知っているやつはごく一部だけどな。アイドルでもやっていけそうな容姿なんだが、本人にその気はまったくないらしい。なんでも好きな人以外にみられたくないんだとさ。
「……お、おはよう、大海原くん……」
彼女が今書いている新作の小説は恋愛ものなんだけど、なんとなく主人公が俺に似ている気がするんだよな。自意識過剰とか言われそうだから、そんなこと言わないけどさ。
「あ、あの……放課後暇かな? 良かったら感想聞きたいんだけど……」
「ああ、構わない。いつものカフェでな」
四葉からは定期的に感想を求められるけど、素人の俺の意見なんて参考になるのだろうか?
「はいはい、みんな座りなさい授業を始めるわよ」
担任のレーニャ先生は、うちの母さんの親友で、若いころはモデル仲間だったらしい。よく遊びに来ているから、なんかいまだに先生っていう感じがしなくて学校で顔を合わせるのが照れくさい。
「あ、ちょっと大海原君いいかしら?」
「はい、なんですか先生」
「後で職員室にきて。手伝ってもらいたいことがあるのよ」
またか……なんで俺ばかりと思うけれど、役得なのは間違いない。先生に言われたら断れないしな。でも最近お願いがどんどん過激になっていっているのは、きっと気のせいだろう。
「おーい、大海原くんはどこにいる? あ、いたいた、今日こそは首を縦に振らせてみせるよ?」
休み時間になると勧誘にやってくるのは、空手部の主将雅さんだ。その美貌とは裏腹に、戦闘狂とも恐れらている人でもある。
「また来たんですか? 入部しないと何度も言っているじゃないですか?」
「頼む……今度の大会の時だけでいいんだ。私はこの大会にすべてをかけてきたんだ……頼む」
空手部は、部員が起こした不祥事のせいで、現在廃部になる寸前だ。大会にエントリーする人数が揃わないことも知っている。まったく……仕方がないな。
「わかりました。今度の大会が終わるまでですからね?」
「ほ、本当か!? あ、ありがとう……お礼に……で、デートしてあげるから……」
「え!? いや、そんなのいいですって、気にしないでください」
「む……私では不満か? それとも……もっと過激なほうが好きなのか?」
「……わかりました。ではデートしましょう」
ま、まあ見た目だけは可愛い人だし、デートぐらいならいいだろう。
昼休みは、いつものように図書室へ向かう。あの静かさと本の匂いが好きなんだ。
「…………」
図書室には先客がいた。っていうかいつもそうなんだけど。
「お邪魔するよ、璃々香」
黙って本を読んでいるのは、図書委員長の璃々香。いつ来てもここにいるから、もしや図書室に住んでいるのか説が俺の中にあったりする。
特に返事はなく、自分の隣の席の椅子をそっと引いて、机をとんとんする。隣に座れという意思表示だ。なぜこんなに席が空いているのに、隣に座れというのかわからないが、嫌われてはいないのだろうとは思っている。とはいえ、何を話すでもなく、ただ黙々と本を読むだけなのだが。
放課後、俺は生徒会室へ向かっていた。校内放送で呼び出しをくらったのだ。
なんか呼び出されるようなことしたかなあ。そんな風に思いながら生徒会室に入ると、校内で四天華と崇められている美女四人が待ち構えていた。
理事長の孫娘で生徒会長のセレスティーナ、才色兼備の副会長パルメ、某外資系令嬢で書記のネージュ、超売れっ子声優で会計のフェリス。この学校は外資系の資本なので、ハーフや日本に住む外国人の生徒も多い。
「大海原駆……なぜ呼ばれたかわかっているか?」
会長のセレスティーナが詰め寄る。って近い、近いよ。っていうか鼻先が付いてるんだが。
「いや……まったく心当たりがないけど?」
「とぼけるな、お前のここに聞いてみろ」
いや、パルメ? なんでお前が俺の心臓に耳を押し当てているんだ?
「仕方がない、あまり乱暴な真似はしたくないのだが……」
俺を羽交い絞めにするネージュ。や、柔らかい、色々当たってますよ?
「ネージュ、それじゃあ駄目よ、ほら、聞こえるでしょ?」
俺の手を自分の胸に押し当てるフェリス。うむ、確かにお前の心臓の音は聞こえるな。むにゅっとした感触のほうが気になってしまうけれども。
「もう限界なんだ、なんで生徒会室にこないんだ?」
泣きながら抱き着いてキスをしてくる生徒会長。え……何これ? っていうか俺生徒会役員じゃないからね?
「ふう……なんとか振り切ったか……」
結局、週に2回は生徒会室に顔を出すということで、ようやく開放してもらった。
「四葉との約束までは、少し時間があるか……」
男子トイレに入り一息つく。ここなら邪魔は入らないからな。
『ふふふっ、そうでもないよ?』
「うわああっ!?」
突然の声に思わず声をあげてしまう。
この学校の生徒でもない、いったい何者だ?
『私はトイレの妖精リブラ。さあ私にくちづけを……』
なんとなくトイレの妖精とキスをするのは嫌だったが、不思議と抵抗できない。
妖精とのキスは、ほのかに芳香剤の匂いがした。
***
「みんな、お疲れさま!! どうだった?」
「お、おう……なんかあんまり変わらなかったような……」
「カケルくんはいいよな? 俺なんて良いところなしだよ?」
「ふわあ……憧れの異世界生活……楽しかったな」
セレスティーなをはじめ、おおむね満足だったようだ。
『……酷いでしゅ……私の扱いが酷いでしゅ……』
ぶつぶつ言っているのはリッタか? あれ? そういえば出てこなかったな。
「り、リッタ? お前のサッカーボール役、格好良かったぞ?」
必死に慰めるベルトナー。
…………リッタ、なんて不憫な。
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