異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
妖精宮の大図書館
結局、ヨツバとリリカは、お互いに今の名前で呼び合うことにしたそうだ。まあ、こちらで生きている時間のほうが長くなっているし、今後のことを考えたらその方が自然かもな。
「うはあ……何これヤバいんですけど……」
ヨツバが驚くのも無理はない。俺も正直びびった。図書館っていうから、本棚が並んでいるのかと思ったら、壁一面天井まで本がビッシリ詰まっている。
なぜ落ちてこないのか、どうやって取るのかなど興味は尽きないが、とりあえず禁書庫へ向かう。
しかし規模の割に利用者が少ない。リリカによると、王族ぐらいしか使わないらしい。実に勿体ない話だ。
美琴たちに念話で図書館のことを教えたら、すぐに行くと言ってきた。ここなら良い時間つぶしになるだろう。
歩きながら眺めていると、小さな妖精たちが、一生懸命働いているのがわかる。
「あれは本の微妖精たちですね。飛べない利用者のために本を取ったり、読み終わった本を戻したり、掃除をしたりしてくれるんです」
ふーん、微妖精か。そうだ、せっかくだから、俺の微妖精たちも呼び出そう。
「アカリ、アオイ、カレン、ミドリ、モモ」
俺の眷族である微妖精たち。厳密にいえば、眷族化した時点で、妖精にランクアップしているんだけどな。めちゃくちゃ強くなっているけど、可愛いから姿はそのままだ。
『マスター!!』
5人の妖精が嬉しそうに飛び回る。
「お前たちも少し本を読んだほうがいいぞ。賢い大妖精になれるかもしれないしな」
『ほえ~、私たち大妖精になる~』
張り切って本棚にむかう彼女たちを微笑ましい気持ちで眺めていると、リリカが怯えたように震えている。
「どうしたんだ、リリカ?」
「か、カケルさんのケダモノ!! あんな小さい子たちまでお嫁さんにするなんて……」
「いや待て、あの子たちはお嫁さんじゃない。それにああ見えて、リリカより年上だぞ?」
「そ、そうなんだ…… ごめんなさい」
『エッチなマスター、私のこと食べないの?』
くっ、カレンのやつ、なんて間の悪い。
「…………」
ご、誤解なんだリリカ。食べるというのはカレーの話で。
「うわああああん、ヨツバああ、カケルさんが、カケルさんが……」
泣きながらヨツバの後ろに隠れるリリカ。やれやれ完全に怯えさせてしまったな。
「よしよし、少しずつ慣れていこうね、リリカ」
ヨツバを呼んで良かったよ。実に頼もしい理解者だ。ありがとう。でも否定はしてくれないんだね。
「…………リリカ頑張れ」
そういえば貴女もいましたね。あまりに馴染んでいるから、たまに存在を忘れそうになるんですよ……
***
「ここから先が禁書庫になります。主に異世界に関する資料と禁断の研究についての資料に分かれています。当然持ち出しは厳禁。扱いには注意してくださいね」
禁書庫は……うん、完全にダンジョンだね。ゴツゴツしたむき出しの岩肌に、キノコみたいに本が生えている……のか?
「リリカ、このダンジョンぽいのは何か意味があるのか?」
「さあ……一説によると創設者の趣味だとか云われてますけど、まさかですよね?」
いや、そのまさかだと思うぞ。
「ねえ、リリカ、まさか魔物が出たりしないよね? おちおち本も読めないよ?」
「それこそまさか! でも、階層を下るにしたがって、本の難易度は上がるみたい」
「……本の難易度って何!?」
リリカの説明によると、内容の難解さと階層はリンクしているのだとか。特にこれから会いに行くリブラさまがいる最下層は、非常に危険でエキサイティングな書物があると噂されているらしい。
「でも、正直言って、異世界関連はくだらないものが多いですね。日記とかはめちゃくちゃ面白いですけど」
おおっ、異世界人の日記か。いけないものを見ているようで面白いだろうな。っていうか、なんで日記残したし!! ますます変なこと書けないな。
一方で、禁断の研究の方も欲望丸出しのものばかりでやばい。これは禁書だわ。内容よりも、書いたやつの頭が危険だ。
中には服を透視する魔術の研究や、入浴をのぞくために透明になる術など、至極真っ当な良書もあったので、一概には評価できないが。
禁書庫は妖精宮の地下に広がる正にダンジョンだ。その昔、巨人族との戦いの最中、長い避難生活を楽しむために利用されたこともあるらしい。
また、元々魔力濃度の濃い地盤に建設された都市ゆえに、妖精にとっては、食糧の問題はなく、地下水脈を引き込んであるため、水分補給も解決済み。
つまり、リブラさまのように長期に渡る引き籠もりも可能となっているのだ。
「この先が、最下層へ至る階段となりますが、結界があって進めないのです」
以前はなかったそうなので、おそらくリブラさまが張った結界だと思われる。
「…………英雄である貴方なら、もしかしたらとフェリルは考えた」
名残惜しそうに、背中から降りるレーニャさん。ずっと感じていた温もりが無くなるというのは、案外淋しいものだな。
「気を付けて下さいね、カケルさん」
心配そうに俺の手を握るリリカ。最近心配されなくなっているから、嬉しくて、抱きしめてしまう。
「ふにゃう!? にゃ、にゃにするんですか!? だ、駄目ですよ」
真っ赤になって照れるリリカのおでこにキスをする。これならセーフだ。
「今度は私のターンですね!」
先程までレーニャさんがいた場所に乗り込むヨツバ。はあ……温かい。そして柔らかい。
「うえっ!? ヨツバズルい!!」
「…………そこは私の場所なのに」
抗議の声を上げる2人。
「ふふっ、私は駆さんの眷族ですからね!」
勝ち誇るように、残酷な現実を告げるヨツバ。たしかに眷族であれば、俺と一緒に移動できるかもしれない。
「じゃ、じゃあ、私も眷族になります!」
「…………私も」
「レーニャさんはともかく、リリカにはまだ無理だと思うよ?」
ヨツバさん? レーニャさんも駄目だからね!
眷族化の条件をヨツバがリリカに耳打ちすると、茹でだこのように真っ赤になる。
「行ってらっしゃい、カケルさん」
「…………眷族化、眷族化!」
レーニャさんを必死に押さえ込むリリカに見送られながら、結界の前に立つ。
『結界の認証パターンを記憶しました』
よし、これなら通れそうだな。
「駆さんにかかれば、結界も形無しですね」
ヨツバが呆れながら、首筋にキスを落とす。
「んふふ、駆さんを独り占め出来るなんて、リリカに感謝しないと……ねえ?」
「そうだな。なあヨツバ、魔力酔いが辛そうだし、ちょっと休憩しようか?」
「ふぇっ!? ば、バカ! な、何を言って……ま、魔力もたっぷり下さい……ね?」
危険な最下層では何が起こるか予想もつかない。可能な限り万策を尽くすのが、特級探索者である俺のやり方だ。
最下層攻略を前に、異空間でヨツバと英気を養うカケルであった。
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