異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
妖精王からのお願い
ハクアたちは久しぶりの、というか実質初めての家族団らん、家族水入らずということで、しばらくは別行動することになった。
良かったなハクア。これまで出来なかった分、たっぷり甘えるんだぞ。明日どうなるのかなんて、誰にもわからないのだから。俺みたいにさ。
俺は、妖精王と王妃でリーニャさんの双子の姉レーニャさんとともに、みんなのところに戻る途中だ。
妖精宮は、半透明な素材で作られているので、屋内にいるのに、外で庭園を散策しているかのような開放的な気分になるね。
「あの……パパ兄さま?」
なぜ俺だけこの呼び方をしなければならないのか文句を言いたいところだが、仕方あるまい。フェリスとアリエスを嫁にした俺が悪いのだ。
「なに? カケルくん」
心底嬉しそうな妖精王の顔を見ると、それでも悪くない気分になってくるのから不思議だよな。
この人は本当に人たらしだと思う。正直、頼まれたら断る自信がないんだよな。
「いや……なに? じゃなくて、良いんですか? レーニャさんこのままで」
俺の首に腕を回しておんぶされているレーニャさん。リーニャママの双子のお姉さんだ。
みんなで抱きしめあってから、離れようとしない。リーニャママも苦笑いしていたな。
「良いんだよ、家族なんだし、でもさすがだね。レーニャがそこまで懐くなんて初めてのことだよ」
「…………」
レーニャさんは基本無口だ。っていうか。さっきずるいとかなんとか叫んだっきり、一言も発していない。
「ふふっ、これは相当気に入られたね。いっそのこと、そのまま連れて帰る?」
「…………」
相変わらず無口だが、激しくこくこく頷くレーニャさん。ええぇ……マジですか?
「じゃあ、レーニャのことはよろしく。ボクのことは気にしないで。2、3人孫の顔を見せてくれればいいから」
いやいやいや……それはさすがにまずいんじゃ……?
「…………3人」
レーニャさん、なに赤い顔して、しれっと希望人数申告しているんですか!? 駄目ですよ、2人までにしてください。
「ところでカケルくん、君にお願いがあってね」
突然立ち止まって真顔になる妖精王フェリル。これは嫌な予感しかしない。
「……なんでしょうか、パパ兄さま?」
「うん、実は、知っているかもしれないけど、ボクには子どもがたくさんいてね。今現在17432人いるんだけど……」
多いとは知っていたけど、5桁とは。さすがに多すぎるだろ!?
「すごいですね。まあ、俺も将来似たような感じになりそうな気がしますけど」
「ふふっ、だろうね。それでちょっと問題があってね。兄弟姉妹だらけになってしまって、結婚相手が国内にもういないんだよ。ははっ、このままだと少子化待ったなし!」
妖精は長生きするため、基本数が少なく、子をもうけるのも稀らしい。加えて巨人族との戦いで、現役世代が大きく数を減らしたことも響いているのだろう。
まあそうなるだろうね。俺の方も、アトランティア、ガーランド、トラシルヴァニアあたりは、将来そうなりそうだもんな。うん、ある程度自重しないとヤバいかもしれない。
「そこでね、将来生まれてくるカケルくんの子どもたちの許嫁にしようと思ってさ」
なるほど、組み合わせは自然に任せたい気もするけど、幼いうちから交流を持たせるのは案外悪くないかもしれないな。
「いい考えだと思います。そういうことならぜひ」
「ふふっ、カケルくんならそう言ってくれると思ったよ。ところで本題なんだけど……」
って今のが本題じゃないのかよ!?
「実は、ボクの母の姉で、もう何百年も禁書庫に閉じこもっている妖精がいるんだけど、もうアラフォーなのに結婚する気配もなくてね。悪いんだけど、ちょっと様子を見てきてくれないかな?」
確かに書庫に入り浸って本だけを読む生活って憧れるけど、長くない!?
「ちなみにアラフォーって?」
「もちろん400歳のことだよ」
……さよですか。それはまた……ひょっとしてもう死んでいるんじゃ?
「いや、干からびているかもしれないけど、死んではいないと思う」
いや……どっちにしろ怖いんですけど。
「あの、なんで俺が行くんです?」
「それはね……君が英雄だからだよ」
なんか適当に誤魔化されたような気がするけど、そんな風に言われたら断れない。それに、禁書庫にも興味があるしな。
「ところでカケルくん、フェリスだけじゃなくて、娘をあと300人ぐらいお嫁さんにどう?」
「いやもう結構です。縁があればまた」
「なるほど、シチュエーションが大事なわけだね」
そうそう、角を曲がったらぶつかってとか、そういう運命的な? って違います。もう増やしませんからね!!
「きゃっ!? す、すいません!? よそ見をしていたものですから……」
何故か広い直線の廊下でぶつかってきた女の子が、わたわたと落としたメガネを探している。
「はい、君のメガネ。気を付けないとな」
落とさないように手を取り、しっかりメガネを握らせる。
「ふぇっ!? あ、あああありがとうございます!」
壊れたおもちゃのように、何度もお辞儀をしたせいで、背負っていた大量の本を撒き散らし、それを拾おうとしてまたメガネを落とす悪循環。
「くくっ、相変わらずだね、リリカ。ちょうど良かった、カケルくんを禁書庫まで案内頼むね」
「ふぇっ!? わ、わわわ私がですか!?」
「カケルくん、彼女は禁書庫を含む妖精宮図書館の司書をしてもらっているリリカ。こんなだけど、とても優秀なんだよ。じゃあまた後で、みんなにはちゃんと言っておくからね」
楽しそうに手を振り去ってゆく妖精王。
「ということみたいだから、よろしくリリカ」
散乱した本を異空間に一旦しまい、リリカに手を差し出す。
「あ、あわわ……本が消えてしまいました……はっ!? す、すいません! よろしくお願いします、い、痛ったーい!?」
慌ててお辞儀をして、差し出した手に顔をぶつけるリリカ。うむ、なんて可愛い生き物なんだろう。
「まずは……メガネ、逆さだよ?」
メガネを直してあげると、綺麗なブルーの髪と瞳が真っ赤に変わる。へぇ! 感情で色が変化するのか?
「うきゃあ!? あ、ありがとうございます」
ドタバタな司書リリカに案内されて禁書庫へと向かう。
え? レーニャさん? もちろんいるよ、俺の背中にね。
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