異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

邪王バロール


「……う……こ、ここは?」

 邪神の因子から解放されたエリックが目を覚ます。

 記憶が混乱しているようなので、現状を説明していくと、徐々に自分の犯した行動を思い出してきたようで、耐え切れず泣き出してしまう。

「……すまなかった、フェリス。謝って許されることではないが、この通りだ」

 もともと優しい男だったのだろう。額を擦り付け土下座するエリック。妖精の国でも通用するのか……すごいな土下座。

「頭を上げてエリック。そうね、許されることではないけれど、なるべく穏便にすむように私も協力するわ。そのかわり貴方には、最後まで付き合ってもらうわよ。それで残りのアーティファクトはどこにあるの?」

 すでに使用された設置型の罠と街にばらまかれた魔法陣。残りは二つあるのか。

「私は持っていないんだ、惚れ薬と交換で、巨人妖精に渡したんだよ。でも薬は偽物で、気付いたらこんな有様になっていたんだ……」

 惚れ薬だと!? まさかそれを使ってフェリスを……まあ気持ちはわかるぞ、男のロマンではあるよな。おそらくその時に因子に憑りつかれたのだろうが。それはいいとして――――

「フェリス、巨人妖精ってなんだ? 巨人族とは違うのか?」
「巨人妖精は、妖精と巨人族との間に生まれたものたち。一部からは、巨人族のスパイだと迫害されていたんだけど、まさか本当にこんなことになるなんて……」

 なるほどな、おそらく、妖精の国では嫌われたり、疎まれていたせいで居場所がなかったのだろう。そうやって徐々に積もり積もっていった不満を、うまく巨人族に利用されたのかもしれないな。


「状況は分かった。それで、残りのアーティファクトは、どんなものなんだ?」
「あ、ああ、一つは転移するためのもので、その宝具が一度訪れた場所ならどこにでも転移できるというものだ」

 ということは、当然、このガレリアにも転移可能だってことだよな?

「もうひとつは――――」   
「二人とも下がれ、来るぞ……」

 俺の背後にフェリスとエリックを下がらせて何もない空間をにらむ。

「来るって、まさか……」
「ああ、巨人族だと思う。心配するなフェリス」

 徐々に空間の歪みが大きくなり、歪から異形の巨人が這い出てくる。ちょっと出口が小さすぎて大変そうだな。手伝った方がいいだろうか?

 現れた巨人は、額に1本、側頭部に2本の角が生えており、茶褐色の肌に爛々と光る赤い瞳。その筋肉質な身体に簡単な腰巻だけの軽装で、硬そうな金属製の棒を携えている。トゲトゲが生えていて、殴られたら絶対痛いアレだ。


「ひっ!? さ、三本の角!? ま、まさか……伝説の邪王バロール?」

 エリックがガタガタ震えながら腰を抜かしている。妖精たちにとって、幼いころから聞かされている恐怖の象徴だ。この反応も仕方がないところだろう。

「二人とも、すぐに終わらせるから、絶対奴の眼をみるなよ。邪眼にやられるぞ」

 実際にとんでもなく強い。スキルがなくても化け物だが、種族スキルに加えて、邪眼まで持ってやがる。こいつだけでケルトニアが滅んでもおかしくないレベルだ。

 だが、思ったより小さいな? いや、3メートルはあるから、亜人種も含めて十分に巨人族といえるサイズなのだが、あの高い壁のせいで、数十メートルぐらいあるのかと勝手に思ってたよ。よく考えたら、異種族間交配できているんだから、そこまでサイズ差があるわけないか。

『ふはは! どうやら無事王女を捕らえたようだなエリック。最大戦力である王女さえいなければ、怖いものなどない。ようやく我々巨人族が返り咲く時が来た……』

 なるほど、男からの攻撃無効のスキルがある巨人族にとって、最大の脅威はフェリスだったのか。たしかに攻撃が快感に変換されても、ダメージが消える訳じゃないからな。死ぬ時も最高の快感の中で昇天するのだろう……なんか羨ましいな。くそっ、許さんぞ巨人族。

「おい、邪王バロール、俺が相手してやる。お前を倒せば済むわけだし」
『んん? なんだ貴様は? 黒髪……まさか異世界人か?」

「そのとおり、異世界から来た英雄カケルだ、相手が悪かったな」
『ふはははは! 何を言うかと思えば、たかが異世界人が吠えるな! 貴様では我に傷一つつけられぬわ!! それにな――――』

 口角を上げていやらしい笑みを作る邪王バロール。

『今頃、レガリアの街中に同胞たちが暴れまわっていることだろう。もう手遅れだと知れ!!』

「そんな……私は魔法陣を発動していないはず!?」

 エリックが青ざめて絶望に崩れ落ちる。

『ふははは!! 馬鹿め、騙され利用されていたことにまだ気付いていなかったのか? これは傑作、やはり妖精などという下等な生物は駆逐せねばならん』

「ふざけないで!! そんなことはさせないから、英雄さまが!!」

 あまりの言動に憤慨するフェリス。その信頼が嬉しいね。

「そういうことだから、死んでもらうぞバロール。せっかくだから、ご自慢の邪眼とやらを使ってみたらどうだ? それと、魔法陣は全部撤去済みだから、来たのはお前だけだぞ?」

 有能な仲間たちに感謝だな。

『ふはは、ずいぶん煽るではないか英雄! 仮にそれが本当だったとしても、こんな国、我一人で十分だ。死ね!!』

『邪眼を記憶しました』

『なっ!? なぜ邪眼が効かない? まさか……貴様も邪眼持ちか? だが、貴様に勝ち目がないのは変わらない――――ぎゃああああああああ!?』

 両目を押さえてのたうち回るバロール。

「二人とも、もう大丈夫だ。邪眼は潰したから」
『ぐうう……ば、馬鹿な……攻撃は無効なはず……』

「攻撃じゃないからな。目玉にちょこっと魔力を注入しただけだよ」

 やはり攻撃判定されなかったか。回復魔法と同じ要領で一気にピンポイントで魔力を注いだからな。器が耐え切れず破裂したのだろう。

『くそがっ!? 我を舐めるなよ? 開け第三の眼よ!!』

 バロールの額が割れて、ぎょろりと巨大な眼が開く。意外にしぶといね。

「英雄さま、気を付けて下さい、バロールの第三の眼が開かれるとき、世界が終ると云われています!」
 
 へえ……ここからが本領発揮ってことか。

 面白い。全部見せてみろ、俺がすべて喰らい尽くしてやるよ。邪王バロール。

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