異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

既成事実以外はおまけみたいなものね


「あ、あの……助けていただいてありがとうございます」

 そうだ、いつまでも惚けている場合じゃなかった。お、お話をしなければ!!

「俺は異世界から来た英雄カケルです。今のうちに服を着てください。ありがたくはあるのですが、やはり目に毒なので」

 そういって微笑む英雄さまの言葉に赤面する。そうだった、私下着姿だったのよね!? 慌てて服を着ながら考える。やっぱり英雄さまだったんだ。本当にいたんだ。おとぎ話じゃなかったのね。

 安心したせい? それとも嬉しかったから? ううん、たぶん両方ね。涙がぽろぽろ止まらない。

 なんて情けないのだろう。別に何かされたわけでもないのに。しっかりしないと。まだ終わったわけじゃない。魔法陣のこともあるし、盗まれた宝物はほかにもある。泣いている場合じゃない。

「ふえっ!?」

 服を着終えた私をそっと抱きしめ頭を撫でてくれる英雄さま。

 だ、駄目です!! 全然嫌じゃないけど、駄目じゃないけど、そんなことされたらもっともっと好きになってしまいます!! どうせなら、服を着る前にこうしたかった……はっ!? 私ってば、なんて破廉恥な……いやあああ!?

「すみません……怖かったでしょうフェリス王女」
「……ぐすっ……英雄さまが、私に敬語なんておかしいわ……」
「ごめんな……怖かったろうフェリス王女」
「……ぐすっ……フェリスとお呼びください」
「ごめんな……怖かったろうフェリス」
「はい……とても怖かったです、英雄さま」

 ここぞとばかりに思いきり抱き着く。見た目は華奢なのに、ものすごく鍛え上げられた引き締まった身体。固く熱を持ったたくましい筋肉に、私の柔らかい部分を押し付ける。

 体を支える両腕が、頭を撫でる手がとろけるほど気持ち良くてどうにかなってしまいそう。あれ? 両手を使いながらどうやって頭を撫でているのだろう? まあ、細かいことはどうでもいい。今はこの状況を堪能するほうが大事なんだから。


「そうだ、英雄さま、エリックが……そこで倒れている男がレガリアの街中に、巨人族を召喚する魔法陣を設置したと言っていました!」
「何!? 巨人族だって? わかった、すぐに仲間に連絡して調べてもらおう」

 英雄さまが何やら仲間と連絡を取り合って、テキパキと指示を出している。はあ……格好良い……話している姿も素敵。なにより、私を抱きしめたまま、頭を撫でたままっていうのが最高ね。出来る男って感じでしょ? 

 バレないように、匂いを堪能する。なんでこんなに良い匂いなんだろう? 吸い込むたびに力があふれてくる。気力が充実するのがわかる。

「フェリス、エリックのことなんだけどな、ちょっと見せたいものがあるんだ。頭部への濃厚接触が必要なんだが、おでこ、鼻、口、耳、どこが良い?」

 断るという選択肢がない。絶対に断られないという自信に満ち溢れている英雄さまが素敵。もちろん断りませんけど。

 でも、難しい選択だわ……普通ならおでこな気もするけど、今の私がそれで満足できるかと言えば疑問。かといって、鼻や耳は変態じゃないかと思われそうで怖い。となると、残るは口か……口? はわわわわわ……そ、それって、もしかしなくても、き、キスよね!? しかも濃厚? うはあああ! だ、駄目よ、結婚前の王女がキスなんて……ん? まてまて、これはチャンスじゃない! ふふっ、既成事実を作る絶好の機会じゃないの。そうと決まれば、さっそく口で……まてまて、キスまでするんだったら、もはや他のはおまけみたいなものよね? むしろ流れ上必要まであるのでは?


「というわけで、全部盛りでお願いします」
「……なにがというわけなのかわからないが、分かった、全部盛りだな」

 言ってしまってから後悔する。もしかして、とても破廉恥な要求だったのだろうか? いや、大丈夫、だって英雄さまったら、全然動じてらっしゃらなかったですし。期待で胸が破裂しそう。

「それで、濃厚接触の強度だが、初級、中級、上級、そしておすすめはしないが一応聖級もある」

 な、なんですって!? へ、へえ……きょ、強度も選べるのね。なんて親切なのかしら。

 でも困ったわ。基準が全然わからない。仮にも第一王女たるものが初級、中級を選ぶことなど誇りが許さない。実践したことはないが、座学だけは極めているんだから!! べ、別にそういうことに興味があったわけじゃないのよ? 王族として当然のたしなみですからね。

 となると、上級か聖級の二択となるけれど、答えは最初から決まっている。上に立つものとして、常に高みを目指すことは当然。ならば聖級一択。怖いけれど、期待が、好奇心が上回ってしまう。もちろん、英雄さまに対する絶対的な信頼感があって初めて成り立つのですけれどね。

「というわけで、聖級でお願いします」
「お、おう、なにがというわけなのかわからないが、分かった、聖級だな」


 その衝撃を私は生涯忘れることはないだろう。はへえ~き、気持ち良かった……あれ? なんでこんなことしてたんだっけ?

「大丈夫か、フェリス? ちゃんと伝わったか?」
「だ、駄目みたいでしゅ……私妖精だから……もう1回すればたぶん伝わるかと……」
「そうか、じゃあもう一度」

 うはああああああああ!? た、たまりましぇん。死ぬ、死んでしまう。


 結局3杯おかわりしてしまった。呆れられていないだろうか? いまさら不安になる。

「フェリス、お前は本当にすごい、大したもんだよ」

 えへへ……英雄さまに褒められちゃった。

「今なら見えるはずだ。エリックを見てみろ」

 英雄さまに言われて倒れているエリックを見ると、体の中を、おぞましいものが動き回っているのがわかる。全身が震え、嫌悪感で鳥肌が止まらない。

「え、英雄さま、あれは一体……あ、そうか……これが邪神の因子……?」

 英雄さまからいただいた情報で理解ができた。だとすればエリックが別人のようになってしまった理由もわかる。なんて恐ろしいのだろう。

「まあでも大丈夫だ。見てろ」

 英雄さまが中空から取り出した専用武器デスサイズのシグレさまを一閃すると、邪神の因子があとかたもなく消滅する。

 え? なんでそんなこと知っているのかって? だって3回も情報提供されてしまいましたからね。うふふ。 

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品