異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

妖精の国は危険がいっぱいね


 ルクスとラクスが用意してくれた妖精の馬車だが、ぱっと見は悪くない。

 まるで有名なおとぎ話に出てくる魔法の馬車みたいに見えなくもない。外見は。


「なあラクス、ルクス、この馬車なんか動いてるよな?」
『もちろん、この馬車自体が妖精だから』
『うっかり乗り込んだ女性を襲う悪い妖精……』

 そんなもんに乗せるなよ!!

『大丈夫、しっかり調教済み』
『たまに触手が伸びてくるけど、引き千切って構わないから……』

 全然安心出来ないんだが……1名を除いて……いや、2名か。

「うはあっ!? 触手馬車とか……ハアハア……」
「マジかよ……胸熱……ハアハア……」

 変態勇者と変態ベルトナーは嬉しそうだね?

「それで……馬車を引くのがこいつらなのか?」

 馬車妖精に繋がれている半馬半人の妖精グラシュティン。どうでもいいんだが、下半身が人なんだね。普通逆だよね?

「これって、ほぼほぼ人力車だよね? 遅くね?」

『大丈夫、こう見えて馬より早いから……』
『ただし、女性に目が無いから、襲われないように注意が必要……』

 うすうす思ってたんだけど、妖精って意外と危険だよね? もしかして結界って妖精を守るためじゃなくて……

『その通り、結界を張っているのは、悪い妖精が逃げないようにするため』
『うっかり女性が迷い込んで餌食にならなようにするため』

 なるほど、たしかに普通の女性が迷い込んだらお終いだな。危険すぎる。メルヘンチックな世界観台無しな件。



 とはいえ、こうして馬車から眺めている分には、とても素晴らしく幻想的な世界が広がっている。

「うわあ……ナイトさま、見てくださいおっきなお花が咲いてますよ!」
 
 うん、人面が付いてなければもっと良いと思うけどね。キモッ!?

『ちなみにあの花も女性を襲うので近寄らないように』
『女性の蜜を吸う悪い妖精……』

 ……聞かなかったことにしよう。良い妖精居ないの!?

「王子様、ほら見てください! 羽が生えた可愛い妖精たちが手招きしていますよ!」
「先輩、あれって、ザ・妖精って感じだよね! 行ってみようか?」

『止めた方がいい。あれは男の娘妖精、見た目で騙されたら駄目……』
『ついて行ったら最後、100人産むまで帰れない』

 怖っ!? 怖いよケルトニア……泣きそうなんだけど!?


「旦那様、前方に見目麗しい騎士たちがいるぞ、検問だろうか?」

 確かにイケメン騎士団が道を塞いでいる。何かあったのだろうか?

『あれはガンコナー。女性をたぶらかして手酷く捨てる悪い妖精』
『このまま速度を維持、轢き殺す……』 

『ぎゃあああああああ!?』

 維持どころか速度を上げてガンコナーを轢き殺す妖精馬車。そしてその死体を触手で捕えてバリボリ食べてるのが完全にホラー。
 
 ……どうすんの? 馬車内の空気が重いんだけど? 妖精嫌いになりそうだよ?

「ま、まあ、たまたま悪い妖精ばかりでしたけど、もちろん良い妖精もいますから……」

 アリエスがたまらずフォローする。

「例えばどんな妖精がいるんだ、アリエス?」
「…………ごめんなさい、ちょっとど忘れしました」

 おーい、そんなレアなのかーい!?

「あっ、ちっちゃい小人たちがカラフルなキノコに座って手を振っていますよ、可愛いですね」

 珍しくミヤビが空気を変えようと話題を変える。
 
『あれはレプラコーン。基本的には善良な妖精』
『ただし、近づくと物を盗まれる。セクハラされる』

 全然善良じゃない件。

『あ、もうすぐ私の故郷の町が見えてきましゅよ! ほら!』
「おおっ、リッタの故郷!! うっ……」

 ……結構見慣れたと思っていたけど、集団の首なしはやっぱりヤバいね。特に頭部だけ並べて置くの怖いから止めて!! 絶対泣く、昼間でこれだから、夜とか絶対無理……。

「……王子様、私、やっぱり帰ろうかな?」

 だよな! 俺も帰りたいよ、サクラ。


『大丈夫、王都に入れば比較的安全……』
『王都には悪い妖精はあまりいない……』
 
 くっ、基準が微妙過ぎて安心できない。

 
 数時間ほど走ったところで馬車が止まる。

『この辺りで小休止。お昼にするならすれば?』
『結界を張ったから悪い妖精は近づけない。食べるならどうぞ』

 基本的にルクスとラクスは食事をあまり食事が必要ないらしい。どこか他人事で食事への興味は薄いようだ。

 ふふふ、お昼は挽肉ハンバーグで決まっている。偶然、新鮮な馬妖精の肉が沢山手に入ったのだ。せっかくなので、ハンバーガーも作ってみよう。

 調理器具を取りだして助手のアランも呼び出す。

 肉の焦げる香ばしい匂いが辺りに漂い始めると、みんなのお腹が鳴る。

 初めて使う馬妖精肉だけど、幸い普通の馬肉とあまり変わらなかった。でも作っていて分かる。これは美味いと。だって、興味無さそうにしていた双子姉妹もお皿の前で涎を垂らしながら待っている。

 こらこら、お皿をチンチン叩くのはお行儀が悪いですよ?

 新鮮な食材と、極上の調味料、絶景のロケーションに空腹のスパイス。そして……ともに味わう仲間がいれば、料理スキルなんて無くたって絶対美味しい。スキルがあるから超絶美味しい。

 馬肉のハンバーグと、ハンバーガー、どちらもあっという間に売り切れた。売ってないけど。

 ルクスとラクスも余程気に入ったのか、その後馬妖精をどこからともなく狩ってきたよ。それも大量に。これなら定番メニューに加えても良さそうだな。

 そういえば、大事な事を聞いていなかった。

「牛の妖精はいるのか?」

 肉の為じゃない。主にミルク的な? ふふっ。

『池や沼の中にいる。美味……』
『ハンバーグ! ハンバーグ!!』

 どうやら食べれる系の妖精のようだね……残念。

 やはり明日は絶対に牛獣人をリクルートしに行こうと決意を新たにするカケルであった。

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