異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
大人買いでみんな幸せ
港町フェアリーには、リッタが居てくれたおかげで、思ったよりすんなり入る事が出来た。
町は色とりどりの木造倉庫が並び、ちらほら石造りの複数階建ての建物も見える。雰囲気が近いのは、地球ならノルウェーのベルゲンか。
町の入り口から続く市場では、水揚げされたばかりの新鮮な魚介が並び、活気にあふれた様子は、人族の町と何ら変わらない。それらを売っているのもまた、多くが人族だからだろう。
「妖精はあまり魚を食べませんからね」
アリエスが魚を見ながら、妖精について色々教えてくれる。
ハクアの母のように人の精気を吸うものや、花の蜜だけ食べるもの、果物しか食べないものなど、基本的に妖精は偏食なものが多いらしい。
なるほどね、だから漁師はほとんどが人族なのか。
「でも、アリエスとかリッタは何でも食べてるよな?」
「ふふっ、妖精にも色々あるのです」
そういって微笑むアリエスは幻想的なほどに美しい。こんな娘が俺の嫁さんだとか、あらためて感謝するしかない。
「ふーん、なるほどな。おっ、見たこともない魚介がたくさんあるから、とりあえず買っておくか。リッタ、この町では、大陸の通貨は使えるのか?」
『はい、ケルトニアには通貨がありましぇんので、すべて大陸の共通通貨でしゅ』
それは助かる。よし、大人買い発動!!
「おじさん、ここからここまで全部売ってくれ!」
「おおっ!? お兄さん太っ腹だね! って、黒髪!? もしかして異世界人かい?」
「ああ、異世界から来た英雄カケルだ。こっちが勇者美琴」
「うはあ!? こりゃあすげぇ! かあちゃんに自慢出来るな、魚は何処へ運べば良い?」
「運ぶ必要はないよ、美琴頼む」
「ハイハイ、アイテムボックス〜!!」
購入した魚介類をアイテムボックスに詰め込んでゆく。
「ははあ! こりゃすげぇ……まるでおとぎ話みたいだな」
あっという間に消えてゆく大量の魚介に目を丸くする魚売りのおじさん。
「おーい、英雄さま、勇者さま、うちの店も見てってくれよ、大陸じゃあ手に入らない魚介が沢山あるよ!」
周囲の店から次々と声がかかる。魚介だけでなく、果物や農産物の店も多い。
「よし、みんな! 手分けして買えるだけ買うぞ!」
「カケルくん、俺も買っていいのか?」
「もちろんだ、好きなだけ買いたまえ」
「ひゃっほう!!」
『英雄しゃま、私もいいでしゅか?』
「ああ、なんでも買うがいい」
『うはあ! 英雄しゃま大好きでしゅ!』
全部買ってしまうと、地元の人たちが困るだろうから、買占めないように注意が必要だ。
婚約者たちも大喜びで買い物に走る。
なんだかんだ言っても、やっぱり女性は買い物好きだからな。ましてや見たこともないものばかりで、俺もワクワクしている。ストレス解消にもなるし、町の人も喜ぶ。なんだ、買い物最高じゃないか。
***
買い物を済ませた俺たちは、ホクホク顔のおじさんたちに見送られて、町の中心部にある町役場を目指す。リッタが入国の為の手続きを行うからだ。
役場といっても、各種ギルド、役所機能、神殿、生活に必要なほぼ全てが揃っている巨大な建物だ。大陸の街は、ほとんどの場合、街に点在しているのでまわるのが大変だが、これは便利だな。セレスティーナでも部分的に採用してみるのもいいかもしれない。
「旦那様、これは良いな、ぜひ私たちの街でも取り入れよう!」
どうやらセレスティーナも同じことを考えたようだ。
「そうだな、早くセレスティーナの街も、セレスティーナみたいに魅力的な場所にしたいからな」
「ふえっ!? そ、そうなのか? わ、私は旦那様にとって魅力的に映っているのだろうか……」
 
恥ずかしがるセレスティーナの手をそっと握る。言葉よりもその方が伝わると思ったから。
「それで、入国は出来そうなのか?」
『お父しゃまからの手紙がありましゅから、ハクシしゃまとハクアしゃまは問題ないでしゅが、英雄しゃま方は、国王の許可証がいるかもしれましぇん。一応家族枠でゴリ押ししてみましゅけれど……』
俺はハクアの夫だから行けそうだが、他は厳しいかな? 一応家族ではあるし、ベルトナーくんもリッタの旦那枠でいけそうな気もするが。
「ちなみに許可証をもらう場合にはどれくらい時間がかかるんだ?」
『うーん、急いでも1週間はかかりましゅ……』
「マジで? まあそれもそうか。王さまだって暇じゃないんだろうし」
『違いましゅ、私が王都への往復に1週間かかるでしゅ……』
「……ちなみに、ここから王都まで距離は?」
『馬なら一日といったところでしゅかね……』
なるほど、リッタが道に迷うことが前提なのね。
「その選択肢はあまり取りたくないな。最悪、強引に結界を突破して、事後承認してもらうかな……」
1日ぐらいなら待っても良かったが、今は時間が無い。
『そ、それはマズいでしゅ、この国の結界は古すぎて、今では張り直せるものが居ないのでしゅ!』
古代の失われた術式か……直接見てみないと何とも言えないな。
とりあえず、今はリッタに頑張ってもらうしかない。
『それでは、頑張って交渉してくるでしゅ! 皆さんは、飲食スペースで待っていてくだしゃい』
気合十分で役場エリアへ向かうリッタ。
「リッタ、悪いんだけど、この町に家を買いたい。可能かな?」
ゲートを設置するのにわざわざ家を買うのも何だが、一番確実だからな。幸い金ならいくらでもあるし。
『人族が家を買うには、外国人なら、ケルトニアの国民と結婚しないと駄目でしゅ、私の名義で良ければ、貸しましゅよ?』
「悪いな、それで頼むよ。予算、大きさは問わないから、頑丈で、すぐに入居出来る家が良いな」
『分かったでしゅ、期待して待っていて欲しいでしゅ』
リッタと別れて飲食スペースへ向かう。
すれ違うのは、初めて見る種族ばかり。あちこち眺めながら歩いていると、前を歩いていた美琴にゴツンと追突する。
「ん? どうした美琴?」
「先輩! 出番だよ!」
悪戯っぽくにやつく美琴。こういう顔をするときは美少女絡みと相場が決まっているんだよな。
みれば、思った通り、若い女性二人組が、見るからに悪そうな連中に囲まれている。ていうか、君たちの誰でも助けられるんじゃないのかな? なんで俺に助けさせようとしているのか理解に苦しむ。
仕方ない……これも英雄たる俺の使命。
カケルは、女性二人組を助けるべく、一歩踏み出すのだった。
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