異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

カケル神の加護


「おーい、何をしているんだ、君」

 ぷりぷりのお尻を鷲掴みしたいという気持ちをぎりぎりのところで抑え込み、声をかける。

 ふりふり動いていたお尻がピタリと止まり、茂みの中からおずおずとした女性の声が聞こえてくる。

『ふえっ!? あの……私が見えているんでしゅか?』

 若干噛みながら、驚きの混じった声色で女性――――おそらく声の感じだと若い――――が返事をする。

「ああ、残念ながらかわいいお尻が丸見えだぞ?」
『はうっ!? か、かかかわいいお尻ってなんですか!? 変態ですねあなた変態ですね!?』

 あわあわと非難するが、かわいいだけで、まったく怖くない。

「まあ変態であることは否定しないけど、こんなところで何をしているんだ?」
『ひう!? や、やはり変態でしたか……あ、あの、実は落とし物を回収しようとして、挟まって動けなくなったのです。変態さんの手を借りるのは非常に不安ですが、どうか助けていただけないでしゅか?』

 なるほど、かくれんぼしていたんじゃなかったんだな。そりゃそうか。でも、困っているんなら助けてやるか。

「わかった、助けてやるから待ってろ。身体を引き抜けばいいのか?」
『うわあ……ありがとうございましゅ。変態さんなのに優しいんですね……』
「ま、まあな。友人に俺とは比較にならない真性の変態がいるけど、そいつの影響かな。困っている人を見たら放っておけなくなっちまった」
『おおう……変態さんは優しいってことですね、勉強になりましゅ』

 全然違うんだが、まあ間違ってもいないか。

「よし、じゃあ引っ張るからな」
『ち、ちょっと待ってください、木や枝に服が挟まっているので、ゆっくり丁寧にお願いしましゅ、服が破れてしまいましゅ』

 ほほう……それは危険だ。一気に引き抜いてあられもない姿を見たい気もするが、ここは我慢だ。ゆっくり長時間楽しんだほうが良いに決まっている。んふふ。

『あ……後ですね、たぶんびっくりされると思うので、先に言っておきますね?』
「ん? よくわからんが、わかった」

 どういう意味だろう? びっくりするほど可愛いとか? それともびっくりするほど醜い? どちらにしてもやることは変わらない。

 彼女の身体を引き抜くためには、どうしても触れる必要がある。ふふふ、晩餐会を抜け出してきて良かった。やはり今夜の俺は波が来ているのだろう。合法的に触って、感謝されるなんて、カケルくんみたいじゃないか俺。

 やはり近くで勉強させてもらった甲斐はあった。最近女性とも自然に話せるようになっているからな。あれだけの美女軍団に日々接していれば、嫌でも慣れるというものよ。

 とはいえ、触れるとなれば話は別。実際、美琴たんを含めて、誰一人指一本触れさせてくれないからね!?

 しかーし、今は話は別、頼まれて助ける立場なのだから、堂々と触れる。しかも、ゆっくり丁寧にというご希望まであるのだからたまらない。カケル神に感謝の祈りを捧げながら、ぷりぷりとした肉付きの良い腰に手をかける。

『ひぃう!? さ、ささ触り方がいやらしいのでしゅ!? も、もっと、がしっと掴んでくだしゃい』

 そ、そうか……緊張しすぎてフェザータッチになってしまったよ。すまんな。あれ?

「そういえば、君の名前は? 俺はベルトナー」
『わ、私はリッタです。自己紹介している場合じゃないでしゅよ? さあ、一思いにお願いしましゅ』
「わ、わかった、リッタ。ちょっとだけ我慢してくれよ?』

 結論から言おう。この時が俺の人生最高の瞬間だったと断言できるね。

 複雑に挟まった枝や木からリッタを救うためには、それこそ全身をくまなく触れる必要があったんだ。まさにご都合主義……おそらく、俺のステータス画面には、カケル神の加護がついていることだろう。後で美琴たんに鑑定してもらう必要がありそうだな。ふふふ。

 今の俺ならば、ドラゴンにすら圧勝できそうなそんな万能感。

 しかし、何事にも終わりが存在する。必要以上に時間をかけてみたものの、これ以上は不自然になってしまうと俺の第六感が告げている。ならば終わらせる、この両手で!!

 両手に魔力を集めて、感覚を数十倍に引き上げる。これによって、服の上からでも、直に触っているのと何ら変わらないほどの境地に到達することができる。カケルくんオリジナルの魔法だが、実に実用的で、まさに天才の発想としかいえない。

 万感の想いを乗せて両手で鷲掴みすると、全身を密着させて一気に引きずり出す。密着するのはリッタの服が破れないようにするためであって、やましいことなど何もない。

『ち、ちょっと、どこ掴んでいるんですか!? いやあああああああ!?』

 リッタの悲鳴と、俺のカタルシスが爆発するのと、身体が茂みから抜けたのはほぼ同時だった。


「大丈夫か? 怪我はしていないか? って、ぎゃああああああああ!?」

 助け出したリッタを見た瞬間、俺は絶叫していた。

 
 そう……彼女には頭が無かったんだ。


 え!? なにこれ、もしかして強く引っ張りすぎて取れちゃった!? やべえ……俺、人殺し?

 天国から地獄とはまさにこのことか。頭が真っ白、顔が真っ青になる。


『もう、だから、驚かないようにいったじゃないでしゅか……』
「……へ? い、生きてる?」

 不思議なことに、頭がないのに声が聞こえる。どうなってんの?

『あのね、私はデュラハンなの! だからこれが普通なんでしゅ!』
「え!? デュラハンって魔物だよね?」

 ゲームやファンタジー小説の知識しかないけどさ。

『はああああああああああ!? 違いましゅ! デュラハンは妖精、妖精だから! まったくこれだから人族は……』

 デュラハンが妖精……なるほど、たしかにあの手触りは妖精に間違いなかった。うん、納得だ。

『ち、ちょっと、なんていやらしい顔しているんでしゅか!? そ、その手の動きやめてええええ!? 妖精をいやらしい目でみたらだめでしゅよ! この変態さん!』

 うーん、頭はないけど、不思議と可愛く思えてきたような……あれ、ってことは、もしかして落とし物って……

『そうでしゅ、頭を落としたでしゅ……』

 ですよね~、それは一大事。

「よし、俺に任せろ」


 気分はカケルくん。ふふふ、待ってろリッタの頭部。俺が必ず助け出してやるからな!! 


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