異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

大地の守護者ベステラ


 浮遊力を失い徐々に落下してゆくベヒーモスの巨体。 

 最初は、なるべく細かく切り分けようかと思ってたんだけど、そうすると素材としての価値が失われるかもしれないし、小分けにしたとしても、どうしたって自動車やトラックくらいのサイズにはなってしまう。

 であれば、危険物を雨あられのように撒き散らすよりも、いっそのことまるごと落とした方が対処しやすいだろう。キリハさんも結界で受け止められるって言ってたしね。

 瞬時にそこまで考えて、結局ベヒーモスは、そのまま落下させることにした。

 キリハさんの結界に加え、ミヅハのウォータークッションの存在もあって、実質的に落下による被害はゼロだったけど、地上にいた人は怖かっただろうな。この世の終わりだと考えても、全然大げさじゃないと思う。

 すぐに美琴のアイテムボックスにしまったから、ほとんどの人は夢か幻かと思ってくれるだろうけど、山脈が無くなったのは誤魔化しようがない。そこはもうなるようにしかならないだろうな。



『じゃあね。夜は空いてるからいつでも呼んでいいんだからね?』

 顔を赤くしながら、ウインクすると、キリハさんは慌てて神界へ戻って行く。俺が何度も呼んでしまったせいで、仕事が大変なことになっているんだとか。ごめんね、キリハさん。今度絶対埋め合わせするから。ありがとうございました。


『……主、感謝するぞ。見事な手際だった。ベヒーモスの奴、おそらく自分が倒されたことすら認識していないのではないか?』

 ちっこいリーヴァが、ポフッっと胸に飛び込んでくるので、そのサラサラな水色の髪を撫でまくる。ああ、気持ちが良い。

「そうかもな。だったら、一度召喚しておいた方が良さそうだな」
『うむ、我も久し振りに話がしたいのだ。ドキドキワクワク』
 ……リーヴァさん、ドキドキワクワクは普通口で言わないんだよ? 覚えたてで、使ってみたい気持ちはすごいわかるけどね。

 勉強熱心で好奇心旺盛なリーヴァは、最近ヨツバのラノベを読んで、人間のことを学んでいる。教科書としては少し、いやかなり偏りがあるのが気がかりだが、良い傾向ではあるので、放置推奨している。


 ふふふ、それではベヒーモスの名前も決めてあるし、さっそく呼ぶとするか。

『出でよ、大地の守護者ベステラ!』

 ベスかテラのどちらにしようか悩んだんだが、あまりにもまんまなんで、くっ付けてみた。なんか甘いお菓子っぽくなってしまったが、気にしない。

 リーヴァの時のように、初回限定の豪華な魔法陣が出現し、べステラがその姿を現す。

『……ここは?』

 困惑している褐色の肌に、黄色い髪の美女。しまったな……完全にカステラ配色じゃないか。今から名前を変えたら怒られるだろうか?

「べステラ、俺はカケル。お前の主だ、よろしくな」
『……理解した。我は倒されたのだな』

 その口調は、少しばかりの悔しさと、隠し切れない喜びに満ちていた。本能的に、呪縛から解放されたことが分かったのだろう。もちろん、俺の召喚獣という新たな鎖はあるけれど、移動すらままならないこれまでの状態よりはマシなはずだと思いたい。

『ベステラ! 元気だったか?』
『!? リーヴァ姉ではないか。姉さまも倒されたのか?』
『そうだ。今は主のおかげで楽しく幸せに暮らしている。これからは、べステラも一緒だ。こんなに嬉しいことはない……』
『……我にも出来るだろうか? そんな生き方が? 許されるのだろうか……』

 何で今付けたばかりの名前で自然にやり取りできるのかは不思議だが、原初の魔獣で最強の一角だ。そういうものなのだろうと納得はできなくもない。

 だが、どうしても納得できないことがある。ベステラのビッグマウンテンのことだ。そのあまりの大きさに、ドワーフのドミニクさん以来の衝撃を受けざるを得ない。なぜ姉妹なのにリーヴァとこんなに違うのか? そして、そんなに大きいのになぜ垂れないのかという根源的な疑問だ。


「べステラ、これを着てくれ。人型で全裸はまずいからな」

 姉妹の感動的な再会が一段落ついたところを見計らってメイド服を渡す。決してべステラのビッグマウンテンをガン見していた訳じゃない。ちなみにメイド服は俺の趣味。リーヴァとお揃いだ。

「ベステラ、着方が分からないなら――――え? 大丈夫? ……そうか」

 くっ、なんで彼女たちは初めて着るはずの服の着方を知っているんだ? あまりに無慈悲な現実に、心が折れ、世界に絶望しかける俺。

『うむ……服など鬱陶しいばかりと思ったが、悪くない……しかも姉さまとお揃い……』

 褐色の肌をほのかに染めるべステラの、はち切れんばかりのメイド服姿は、まさに最強の一角と言っても差し支えない。折れかけた心も、絶望しかかった世界への失望も、驚異的なカーブを描いてV字回復だ。

 ふふっ、ここにルーザーがいれば泣いて喜んだのだろうが、生憎俺はオールラウンダーだからな。当然泣いて喜びますよ。


『主……あらためて礼を言う。我を呪縛から解放してくれて感謝している。出来ることなら何でもすると、ここに誓おう』
「ありがとう、ベステラ。でも、これからは出来るだけ自由に生きて欲しいんだ。何かしたいことや欲しいものがあれば、遠慮なく言ってくれよ?」
『したいことや、欲しいもの……?』
「ああ、焦らなくても、ゆっくり考えればいいさ」

『……ある。子作りしたい。それから子どもが欲しい』
「……そうか。俺で良ければ力になろう。こう見えて、その道のスペシャリストだからな」
『ふふっ、楽しみだな。ずっと願っていたことだから』
 くっ、可愛い。そのわがままボディで、そんな可愛らしいこと言うのは反則だろう?

「そういえば、残りのガルーダはどこにいるんだろうな? リーヴァとベステラは知らないんだよな?」『まあな、ずっと寝ていたから』
『もう千年以上、会っていない』

 手掛かりなしか……まあ、そのうち見つかるだろ。根拠は無い。なんとなくの経験則だ。


『あら、カケルくん、ガルーダなら私の頭の上で寝ているわよ?』 

 ルシア先生から衝撃の事実が明かされる。

 マジかよ!? 思いっきり俺の行動範囲に全員いるじゃないか。ご都合主義万歳!!
 

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