異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
宮廷筆頭魔導師マーリン
「ふははは! 無駄ですよ。今更剣でどうしようというのですか? この空間内では、私は神に等しいのです。無駄な抵抗は苦しみが長引くだけですよ?」
勝ち誇ったように笑うマーリン。
「ふふっ、それはどうかな? この聖剣クロスレイヤーの威力。その身で思い知るがいい」
刀身が青く輝き出す。精霊神ミヅハから賜ったこの聖剣いや、神剣の力を披露する時がついにきたか。
「先輩、やっちゃいなよ!」
美琴の期待に満ちた声に、知らず口角が上がる。ああ、言われるまでもないさ。
「シグレ!」
『主殿、拙者にお任せあれ』
艶やかな黒髪をなびかせ、濡れた椿色の瞳が鋭く光る。俺のデスサイズ『シグレ』がマーリンの創り出した疑似空間を一刀のもとに切り裂いた。
「ば、馬鹿な……あり得ない」
目の前で起きていることに理解が追いつかないマーリン。だろうな。本当によく出来た空間だった。シグレがいなければ、力ずくで破壊しなければならないところだった。
「神剣クロスレイヤーよ、闇(ローブ)を切り裂き、混沌(服や下着)を正せ。真実を日の元にさらけ出すのだ」
神剣クロスレイヤーは、服や装備品のみを切り裂く奇跡の剣。その切れ味の前では、いかなる耐性や防御も意味をなさない。
「い、いやあああああああ!? な、何これ!? ふ、服が……」
「いやあああああん! み、見ちゃ駄目えええええ!?」
神剣の裁きを受けた女魔導師軍団が、あられもない姿で悲鳴を上げる。だが、それで終わらせるほど甘い勇者ではない。助けるふりをして、ちゃっかり触りまくってやがる。くっ、うらやましいが、俺には瞬間記憶がある。後から十分挽回可能だ。
「あわわわわわ、こ、この変態がっ!! み、見るなああああああ!?」
男か女か分からないほどの微妙なラインを懸命に両手で隠し、真っ赤になって抗議するマーリン。さすがは宮廷筆頭魔導師。良い物をお持ちで。だけど、防御力ゼロの状態で、エレインの殿方耐性すら貫通したこの俺の魅力に耐えられるかな? 自分で言っておいて恥ずかしいがな。
「大丈夫だ、マーリン。俺に身を任せろ!」
「は!? お前は何を言って……ふわあ!? や、やめろ……う、うわあああああ」
無防備なマーリンを抱きしめる。サラサラの銀髪に特徴的な銀色の瞳。珍しい魔族の女性だ。一瞬だけ抵抗を試みたようだが、それも形だけのもので、みるみる大人しくなってゆく。
……ちょっと待て、なんか俺、ヤバくない? さっきまで殺すとか言ってたのに、顔を赤くして小動物みたいに震えてるんですけど? え? 今更? せやな。
ま、まあ魔族は魔力酔いするから、こうなるのも仕方ないんだけどな。くっ、魔力注入してみたいが、ここは我慢だ。取り返しがつかなくなる。
「……我の負けだ。煮るなり焼くなり好きにするがいい……」
俺の作った魔法少女のコスチュームを着させられた魔導師軍団がすっかり意気消沈して項垂れている。マーリンはともかく、他の子たちは、美琴がやり過ぎたせいだぞ? 注意したいが、そんなキラキラした笑顔を見せられたら、何も言えないじゃないか。今夜お仕置きするしかないな。んふふ。
「心配するな。お前たちをどうこうするつもりはない。今後も、キャメロニアのために働いてくれればそれでいい」
実際、優秀な魔導師たちだし、魔導師軍団も、マーリン以外は命令に従っただけだしな。
「……だが、我を放置すれば、また貴方の邪魔をするかもしれませんよ?」
ジト目でにらむマーリンだが、仮にそうだとしても、俺は何度でも止めてやるまでだ。
「マーリン、お前はなんでそんなにルーザー王子に肩入れしているんだ?」
「……幼いころ、助けてもらったから……」
マーリンは、幼いころ人身売買組織にさらわれて、船で運ばれているところを、たまたま通りかかった、ルーザー王子の船に救われたらしい。なるほどな……命の恩人ってわけか。恩返しをしようと頑張っていたら、眠っていた才能が開花して宮廷筆頭魔導師まで登りつめたと。
「……ルーザー殿下は、生粋の巨乳好きとして国民から親しまれているお方。当然私のようなまな板では女として見てもらえる可能性はゼロでしたので……」
少し淋しそうに俯くマーリン。うーん、国民から親しまれているところをツッコむべきか、まな板ってこの世界にもあるの? とか言いたいことは色々あるが……
「マーリン……俺はまな板を愛している」
「ふえっ!? な、なななな、何を言って……」
俺に出来ることは、偽り無き本心をあるがまま飾らずに伝えることだけだ。それで冷え切ったマーリンの心を解凍できるかどうかは正直分からないが、彼女には自信を持って生きて欲しいのだ。いつまでも、過去の呪縛に縛られながら過ごして欲しくはない。
「……ありがとう、少し考えてみます」
ようやく落ち着いたマーリンの表情は、幾分か和らいだようにも見える。
「ああ、それで良いと思う。焦る必要なんてないんだからな。大丈夫、ルーザー王子にも悪いようにはしない。約束するよ」
ドアに手をかけ、部屋を出る直前、彼女はふと思い出したように振り向いた。
「……このお洋服、もらっていいの?」
恥ずかしそうに聞いてくるマーリン。俺が作った特製の魔法少女コスだ。まな板なマーリンには普段着のように似合っている。
「もちろんだ。とても似合っているぞ、マーリン」
俺に出来る最高の笑顔でサムズアップする。
「……あまり勘違いさせないで……バカ」
色白の彼女の顔は、まるでキャメロニア人のように真っ赤に染まり、逃げるように出ていってしまう。
「……恐るべし、神剣クロスレイヤーの力よ……」
「先輩……神剣関係ない」
「……せやな」
精霊神ミヅハに感謝の祈りを捧げる、カケルであった。
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