異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

聖剣クロスレイヤー


 キャメロニア王国の王都アヴァロンは、地球でいうところのロンドンの辺りにある。

 現在この地域は赤毛のキャメロニア人が支配しているが、この土地は歴史的に支配民族が何度も入れ替わるという、いわゆる血塗られた大地だったのだとか。

 そんな惨状を憂いた水の大精霊が、後のキャメロニア王ガリオンに聖剣を授け、その聖剣の力を借りることで、悲願の統一を成し遂げた。


「――――というのが、キャメロニアの建国神話だね」

 一生懸命キャメロニアの説明をするベルトナーくんだが、全員すでに情報は渡しているので、今更なことになっている。でも、知らない事も出てきたし、復習にもなるから助かったよ。ご苦労さま。


「ミヅハ、水の大精霊が人間に聖剣を授けることなんてあるのか?」

 あまり人間の争い事に興味を持たなそうなイメージがあるから、ちょっと違和感を感じる。

『ゼロとは申しませんが、可能性は低いでしょうね、お兄様』
「だよな」
『……湖に落ちていた剣を戯れに渡したなら有りそうですけれど』
「おお、銀の斧金の斧的なやつか!」

 湖に剣を落としたガリオンの前に水の精霊が出てきて、お前の落とした剣は……みたいな?

「先輩、じゃあ、そのガリオンとかいう男は、池ポチャガチャでLR引き当てた強運の持ち主だったんだね!」

「美琴たん、そんな夢も希望もないこと言わないで――――痛だああああ!?」
「だから美琴たん言うなああ!?」


「授けたかどうかは別にして、水の大精霊が、聖剣を作った可能性は?」
『ほぼ無いですね。剣という概念が精霊にはありませんし、ネーミングセンスも精霊的じゃないです。エロスカリバーなんて卑猥な名前絶対に付けません』
「でも、ミヅハは最近、結構卑猥になってきたような……」
『それは、お兄様のせいです……バカ』

 真っ赤になって照れる精霊神な俺の妹が可愛い過ぎる件。

『そんないやらしいお兄様にぴったりな聖剣を授けましょう』
「ほ、本当か?」

 最近、ミヅハの提案は素晴らしいものだと無条件に信じてしまうパブロフの犬状態の俺。だが、実際素晴らしいのだから仕方がない。

『服や鎧だけを切り裂くことが出来る聖剣クロスレイヤー。殺傷力はゼロのまさに聖戦向けの1振りです!』

 何だって!? 俺の理想を具現化したような、素晴らしい聖剣ではないか!! 

「ベルトナーくん、キャメロニアには女騎士団はあるのか? 教えてくれ、大事なことなんだ!」
「……ありますよ。まさかその性剣振るう気じゃないでしょうね? お供します」

『そんな最低なベルトナーには、この透け透けゴーグルを授けましょう!』
「え? マジで!? ありがとうございます、ミヅハたん!」
『……装着してみてください』

 うわあ……ミヅハが怖い……ベルトナーくん、止めたほうがいいぞ?

「うえへへ、これでバラダイスが……あれ? 何にも見えない……」

『いやらしい目で見なければ大丈夫です。あと、ラッキースケベ防止機能も付いておりますので安心です。私たちが!』

「そ、そんなああああああ!?」

 絶望するベルトナーくん。分かるぞ、その気持ち。俺が装着したら、それは失明するのと同義だからな。あな恐ろしや……

「は、外れない……これじゃあエロ本も見れないじゃないか!!」

 怒りを爆発させるベルトナーくん。え……この世界にエロ本あるの? そこのところ詳しく。

「か、カケルくん、頼むよ、俺のエロ本半分やるから助けてくれよ!」
「ミヅハ、彼も反省しているようだ。少し機能を緩和してやったらどうだろう」

 決してエロ本に釣られたわけではない。断じてエロ本に心動かされたわけではないが。同じ男として、情けはある。情けは人の為ならず。いずれ自分に返ってくることもあるだろう。

『ふふっ、わかりました。お兄様の頼みなら喜んで』

 結局、俺の婚約者限定で、ラッキースケベが見えない仕様となった。うむ、これで安心だ。


『それで、どうしますか? この国の精霊に本当のところどうだったのか聞いてみましょうか?』
「え? そんなこと出来るのか?」
『もちろん。簡単なことです。私は最上位の精霊神なんですから』
「うーん、いや……今はやめておこう。でも必要になった時は頼むよ」
『かしこまりましたお兄様』
 

***


 ようやくキャメロニア国内に到着した。

 国全体に起伏が少なく、草原と畑が多い印象だ。街は城塞化されており、強固な壁で囲まれたその内側に人々が暮らしている。

 かなりの高度を飛んでいるのだが、一部の住民が気付いて騒ぎになっている。そりゃそうだ。普通、街に竜が現れたら即終了だからな。

 この世界における竜の存在は別格だ。知能も高く、物理・魔法どちらの攻撃もほとんど効かない悪夢のような存在。ただし、人間の暮らす領域に現れることはまずないので、上手く棲み分けしているという印象だけどな。

「キャメロニアでは、竜を神聖視する文化があるから、無差別に攻撃を受けることはないと思うよ」
「へえ……ベルトナーくん、もしかして、竜騎士とかいたりするの?」
「いる。王家直属の超エリート騎士だよ。ただし、乗っているのは竜じゃなくて、亜竜のワイバーンだけどね」

 ワイバーンか……イレブンのやつが乗っていたやつだな。そういえば、召喚契約していたのに、全然召喚していなかったよ。っていうか今の今まで忘れていたんだけど!? うん……後でしれっと呼んで適当に誤魔化そう、そうしよう。


『主、そのワイバーンが近づいてくるぞ。その竜騎士じゃないのか?』

 おお、噂をすればなんとやら。さすがにすんなりとは通してくれないようだな。

「クロドラ、このままここで待機してくれ。あまり刺激したくない」
『わかった』


 小さかった複数の影がだんだんと大きくなってくる。

 5メートル強のワイバーンに跨った竜騎士が5騎。俺たちの前に姿を現した。

「キャメロニア竜騎士団長のエレインだ。我が国に何用か?」

 5騎の中でも、ひと際大きい銀色の鱗のワイバーンに騎乗した女騎士が叫ぶ。


「先輩……さっそく聖剣クロスレイヤーの出番キタコレ!」

 美琴さん……使わないからね!? 

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