異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

竜の背に乗って


「……すげえ……俺、ドラゴンに乗って飛んでるんだな……」

 初めてクロドラに乗るベルトナーくんは大喜び。たしかにテンション上がるよな。

『小僧……我はドラゴンではない。暗黒竜だ。間違えるなよ?』
「ひ、ひぃっ!? す、すいません、クロドラたん……うわああああああ落ちる落ちるから!?」
『クロドラたんとか呼ぶなあああああああ!!』

 ベルトナーくん……きみ意外と勇者だよね? ある意味尊敬するよ。

「なあ、クロドラたん、結局ドラゴンと竜ってどこが違うんだ? 俺にも違いが判らないんだが?」
『そ、そうだな。より知性のあるのが竜と呼ばれるが、主ならどちらで呼んでも構わないぞ。似たようなものだからな。で、出来れば名前で呼んで欲しいがな』

 最近デレッデレのクロドラ。そうか似たようなものか。

「くっ、俺の時と態度が違いすぎる……あ、クロドラたん、もう少し北へ向かって……ぎゃあああああ!? 落ちる落ちるって! なんでだよ、カケルくんは良くて俺は駄目なのかよ!」
『うるさい、愚か者! 主は特別なのだ、次はないぞ?』

 落っこちる前に到着するといいね、ベルトナーくん。



「ナイトさま、私も空を飛ぶの初めてで、とても興奮してしまいます」

 藤色の瞳をきらきらさせながら、上空からの景色を眺めるアルカリーゼ王女ノスタルジア。こんな喜んでもらえるなら、もっと早く乗せてあげれば良かったな……

「そうか、また一緒にあちこち行こうな、ノスタルジア」
「はい、ナイトさま」

「ノスタルジア、こういう時は、落ちないようにカケル殿にしっかりつかまるんです。こんな風に」

 ミヤビが素晴らしいポジショニングでいろいろ押し付けてくる。さすが戦闘狂……寸分の狂いもなく、ピンポイントで当ててくるとは、達人の凄みを感じざるを得ない。

「わかりましたミヤビ姉さま。こう……ですか?」

 反対側からノスタルジアがぎこちなく押し付けてくる。さすが箱入り王女。一切の計算がない、それゆえ予測できない喜びや驚きがあって新鮮だ。これは……甲乙つけがたいな。

 決して相容れぬ、同居できないゆえの究極の選択か。最終的には個人の好みというところに行き着くのだろうが、俺はそんな安っぽい理由で優劣をつけるつもりなどさらさらない。


 どっちも最高! それが俺の出した結論だ。異論は認めるが、考えを改める気はない。


「やっぱカケルくんすげえな……あんな美女二人にサンドイッチされてるっていうのに、それに惑わされることなく、真剣にキャメロニアのことを考えているなんて!」

 カケルを尊敬のまなざしで見るベルトナー。

『ほほう、我が主を見る目だけは誉めてやろうベルくん』
「べ、ベルくん言うなあああああ!?」
『ククク、お返しだ、愚か者』


(あれは、絶対くだらないことを真剣に考えている御主兄様ですね)

 クロエは匂いであっさり見抜くが、またもや出遅れたことを悔やむ。

(カケルさまにあそこまで言わせるとは中々やりますね、ノスタルジアさま、ミヤビさま)

 ヒルデガルドは心の中で、両名の評価を一段階引き上げる。


「セレスティーナ、急ぐよ!」
「わかった、美琴さま」

 一方で美琴とセレスティーナは、素早く立ち上がり走り出す。

「私が後ろを担当する、セレスティーナは前をお願い!!」
「だが、それでは……」
「構わないって、私のほうが近い、こっちは任せなさい」
「ふふっ、さすがは勇者さま、任されよう」 

「な、なんだ!? 魔物の襲撃か?」

 慌てて杖を構えるベルトナー。


「んふふ~、先輩の背中いっただきー!」

 カケルの背中に抱き着く美琴。

「んふふ……旦那さま、ぎゅってして?」

 甘えるように前から抱き着くセレスティーナ。


「し、しまった!? またこのパターン!?」

 歯ぎしりするクロエ。最近、出遅れが慢性化しているのだ。いまだに婚約者としてより、メイドとしての振る舞いが邪魔をしているとわかってはいるのだが、なかなか上手くいかない。

『……クロエは、少し考えすぎなのですよ。だから出遅れる』
「……それ、そのまんまお返ししますけど?」
『……ですね』
  
 ヒルデガルドも、冷静な顔をしているが、内心忸怩たる思いを抱えている。ただ、プライドの高さが、それを表に出すことを許さないだけだ。

「クロエさん、ヒルデガルドさん、俺なら空いてますけど?」

 ベルトナーが両手を広げてウエルカムしている。

 一体この男は何を考えて生きているのだろうか? クロエはあまりの出来事に思考が混乱する。

 くっ、殺したい。この男がカケルさまのご友人でなければ今すぐ、事故に見せかけてここから突き落とすのに。なまじ透視で考えていることがわかるだけに、危険なことを考えてしまうヒルデガルド。


『分裂』


「おいで、クロエ、ヒルデガルド」

 二人を見かねて、分裂スキルを使うカケル。

「ご、御主兄様……」
『か、カケルさま……』

 感激に震える二人のメイドコンビ。

「うわーい、御主兄様……御主兄様あああ」 

 抱きしめられ、モフられて、歓喜の声を上げるクロエ。その尻尾はちぎれんばかりに振られている。

『ああ、あああ、こんな素晴らしいことが……カケルさまああああ』

 手を取り、匂いを確かめ、本物であることを確認して感極まるヒルデガルド。カケルの全身をスリスリ堪能している姿は、控えめに見ても変態の所業である。


「……なにコレ? ここって拷問部屋? 放置ってひどくない? クロドラた……さん」
『んん? 我は全身で主を感じることができるからな。ふはあ……2倍幸せ……』

 カケルが増えたことで大喜びのクロドラ。

「……さよですか」


 早く到着しないかなあ……と長いため息をつくベルトナーだった。 

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