異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

慎重な英雄とやり過ぎ勇者


 テンプレに駆けつけた俺たちの目の前に居たのは、クラーケンに囚われた可愛いお姉さん。

 俺も美琴も、想定外の事態に体が動かせない……いや動かない。

(くっ、さすがはクラーケン。海の魔物最強の一角を占めるだけのことはある。こんなエロ……いや攻撃をしてくるとは……みんなを連れてこなくて正解だったな)

「美琴、気を付けろ、クラーケンの変異種だ。とにかくどんな力を持っているかわからない。焦らずじっくり観察するんだ」
「わかってるよ先輩、こんないやらしい……いや恐ろしい敵だから慎重にいかないとね」 


 鑑定眼によれば、獲物にしびれ効果のある媚薬を打ち込んだ後、体液を吸い尽くすらしい。なんて恐ろしい奴なんだ。とても野放しには出来ない。俺の召喚獣に加えて管理しなければなるまい。


 くそっ、早く助けてあげたいが、触手が邪魔でうかつに手が出せない。奴が獲物に止めをさしにいく瞬間まで耐えるしかない。その瞬間を見極めるために、集中力を極限まで高める。


「先輩!」

 美琴の声に反応する。分かってるさ。ようやく出来た隙だ、絶対に逃す訳にはいかない。

「分かってる、出でよデスサイズ、頼むぞシグレ!」

 ザシュッ!!!

『GRRRRRRRRRRRRRAAAAA!?』

 
 クラーケンは倒したが、俺たちにはまだやらなければならないことが残っている。

(美琴、わかってるな?)
(もちのろんだよ、先輩)

 そう、彼女のユニークスキル『癒しの浮き袋』を解明するという使命だ。やはり魚だけに浮き袋があるらしいが、それと癒しというワードが上手く結び付かない。

 生物学の権威として、これは調べないという選択肢はないだろう。

「……はぁ、はぁ……な、何とか倒せたみたいだな」

 癒しというぐらいだから、何かしらの回復系のスキルなのだろう。迫真の演技で疲れたアピールをする。くくっ、この場にヒルデガルドとクロエを連れてこなかった俺の英断がここで生きてくるな。


「私はアクア、アビス王国の守備隊長だ……英雄殿、せめて貴方を癒すことを許して欲しい。この私のユニークスキル『癒しの浮き袋』で!」

 キター!!!! やはり癒し系スキルか。

 問題は、魚人族の浮き袋が何処にあるかだが、それに関しては、鑑定で判明している。ふふふ。さらに言えば、アクアが自ら実演してくれたので、間違いないだろう。

 アクアによれば、浮き袋を圧迫することで、癒し効果のある液体を分泌することができて、身体にかけるだけでも効果はあるが、やはり直接体内に取り込むのが一番効果が高いらしい。素晴らしいスキルだアクア。

「くっ、助かるよアクア……直接飲んで大丈夫なのか?」

 だが俺は石橋を叩いても渡らない、勇者とは対極にいる慎重な男だ。本人確認は忘れない。

「もちろんだ。それが一番効果が高い。さあ遠慮など要らない、飲んでくれ。浮き袋を揉むように圧迫するのがコツだ」

 実際にやってみせてくれるアクア。正直これだけですでに癒されている。

「……分かった。やってみよう」

 やはり何事も実際にやってこそ本当の知識、経験として血肉になるのだ。俺は慎重ではあるが、同時に飽くなきチャレンジャーでもある。

「くっ、そ、そうだ……上手いな……あ、ちょっと待ってくれ、クラーケンの毒がまだ残って……ああああああああ!?」

 本当はもう毒なんて残っていないんだけど、それを言うほど野暮ではない。 


「おおっ、すごい効果だ! ありがとうアクア、すっかり回復したよ」

 正直なところ、癒し効果を舐めていた。さすがはユニークスキル、色んなところが元気になり過ぎてヤバい。

「そ、そうか……それは良かった」

 顔を赤くして、息を荒くするアクア。足腰が立たないくらいにふらふらだ。くそっ、クラーケンめ、アクアをこんなになるまで痛めつけやがって。

「じゃあ、次は私ね」

 俺が回復すると同時に待ちきれない美琴が癒しチャレンジだ。美琴も見えないところでクラーケンからダメージを受けていたような気がするからな。

「ふえっ!? ち、ちょっと待って、まだ出したばかりで……ああああああああ!?」

 
 
「……クラーケンに襲われていたとはいえ、あんな姿を見られたのですから、もうお嫁さんになるしかないですね!」

 なぜかご立腹のアクア。どうするんだ美琴。お前が調子に乗り過ぎるから……はい……責任はとらせていただきます。反省してまーす。


 アクアは一旦アビスに報告しに戻るそうだ。すごいスピードで、あっという間に泳ぎ去る。さすがは魚人族。文字通り水を得た魚のようだ。


「……ねえ、先輩」
「なんだ美琴」
「私、スキルのせいで元気になり過ぎちゃって困ってるんだけど?」
「……奇遇だな。俺もそうなんだ」

「……みんながくるまで、少しだけ発散しようか?」
「……いいね、水中で運動するのも悪くないかも」
「…………先輩のバカ♡」
「……300倍発動!」


 そのあと、美琴とめちゃくちゃ運動した。

 水の中だから汗をかいても大丈夫なのがいいね!

「……先輩、まだ足りないね?」
「そうだな、恐るべしだな癒しの浮き袋」


「カケルさま~!」

 向うからサフィールたちがやってくる。俺と美琴は、顔を見合わせ頷きあう。

「おーい、みんな、クラーケン退治の前に、少し準備運動しておかないか?」


 このあと、みんなと軽い準備運動をして、ようやく落ち着いた俺と美琴。

 目の前には、ぽっかりと口を開けて獲物を待っているようなほこらの入り口がある。

 中にはおそらくクラーケンがいるはず、しかも先ほどの個体のように変異している可能性が高い。それが三又の矛の影響によるものなのかは不明だが、油断は禁物。

 だが、そんな想いとは裏腹に、少年のように期待している自分もいるのだ。


 変異種を集める。コレクター魂がうずくカケルであった。  

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