異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

魚人王国アビス


 海中を潜水艦のように……いや、どちらかと言えば、竜宮城へ向かうウミガメの方が近いシードラに乗って進むこと約10分。

 早くもアビス王国の姿が見えてきた。

 
「先輩、これがリアル竜宮城なんだね」
「そうだな……これは想像以上だったな」

 光がほとんど届かない深海で、チョウチンアンコウのような怪しげな魚と光るサンゴによってボンヤリと浮かび上がる様子は、控えめに言ってお化け屋敷だ。断じて竜宮城ではない。

 まあ、見た目で判断するのは良くない。入ってみたら普通かもしれないしな。

 アビスの人々を無暗に驚かせるのもアレなので、シードラには、人型に戻ってもらう。 


「待て、ここから先は魚人の国アビスだ。何用か?」

 門の側まで行くと、当然のように呼び止められる。門番は深海魚の魚人たち。控えめに言ってもグロい。たいていの人は泣くね。中途半端に人間ぽいから、余計に違和感が凄いんだよな。

「エメロードラグーンの者だ。シェーラ殿下を迎えに上がった。国王に謁見を希望する」
 
 サフィールが、門番と交渉して、無事謁見出来ることになった。すごいなあの門番と至近距離で話をするなんて尊敬するよ。

 幸い、サンゴで出来た門の中に入ると、オドロオドロシイ外見とはガラッとイメージが変わって、大分明るくて安心する。カラフルな色とりどりの小魚たちも安心して泳いでいて実に癒される空間だ。


***


 謁見までの間、控室で待つように言われたので、今は雑談タイムだ。

「でも、キトラ、魚人の王子もあんな怖い顔してるの? だとしたら王女様が可哀想だよ」

 美琴の言う通り、もしそうだったらマジできつい。

「そんなに怖かったですか勇者さま? そうですねえ……もう少しだけ優しい感じだったような? 私たち半魚人族から見ると割と普通に見えるんですけどね」
「うえっ!? そうなんだ……」

 驚く美琴だが、そうか、半魚人族は、半分魚なんだよな。そういうこともあるのかもしれない。いや、あるいはキトラが単にゲテモノ趣味の可能性も……他の人の意見も聞いておいたほうが良さそうだな。

「そうなのか、サフィール?」
「ええ、先ほどの門番も中々整った良い顔をしておりました。あ、誤解しないで欲しい。私が好きなのはカケルさまだけなのだから」

 そう言って頬を染めるサフィールはとても可愛いのだが、そして好きと言われてとても嬉しいのだが、あの門番がカッコいいと言われた後だと複雑な気分になるよ!? うーん、謎の審美眼ってやつだな。

 そういえば、半魚人族の男性も、魚っぽい顔が多かったような気が……陛下もたらっぽい顔してたし。


***


「余がアビスの王、アヌビスじゃ。ようこそ、わが王国へ。歓迎するぞ異世界の英雄よ」

 謁見の間に現れた陛下は、鋭い眼光、ギラリと並んだ凶悪な牙が特徴のやくざ風の男性だった。完全にあれだね。サメだったよ。ここまでくると逆にカッコいい気がしてきた。

「お目通り叶い恐悦至極です、陛下」
「うむ、ところで英雄殿は、とても強いらしいな。どれぐらい強いのじゃな?」

 むむ、なかなか答えにくい質問だな。比較するものが、海とでは違いすぎるし……そうだ!

「不意打ちでなら、海の女王リヴァイアサンを倒せるぐらいには強いです陛下」

 うん、嘘は言っていないし、これなら魚人族にも通じるだろう。後ろからリーヴァがめっちゃ蹴りを入れてくるのが微笑ましい。

「わはははははは! これは面白いことを言う。さすがは英雄殿、冗談も一流じゃな」

 ありゃ、さすがに信じてもらえなかったか。でもまあ印象は悪くないみたいだから別に構わないけどさ。

「ところで陛下、シェーラ殿下を迎えに来た件ですが……」

 空気が和んだところで、本題を切り出す。さて、どう反応するかな。


「それなんじゃが、実は息子がシェーラ姫をいたく気に入っておってな? それなりのものがないと、説得できんのじゃ」

 なるほど……王子が諦めざるを得ないほどの対価を寄越せということか。わかりやすくて助かる。

「それはそうでしょうね。もし、お困りのことがあれば、殿下を保護していただいた御礼に、俺が解決して差し上げますよ、陛下」

「おお、それは頼もしい。実は折り入って英雄殿にお願いがあるのじゃよ」

 してやったりとニヤリと笑う陛下。サメ顔なのにちゃんと表情があるのが面白い。短く息を吐くと、本題を切り出す。

「英雄殿には、失われた神器『三又の矛』を取り戻して欲しいのじゃよ」
「三又の矛……? 失われたというのはどういう意味ですか」

「かつて、我が王国アビスを建国した初代様が、海神リヴァイアサンさまから賜ったとされる神器なのじゃが、祀っていた祠が、クラーケンの寝床になってしまって近寄れなくなってしまったのじゃ」

 ええ……リーヴァからもらった奴か……なんか凄そうだね。

「でも、近寄れないだけで、ちゃんと祀ってあるんですよね? 特に問題無いんじゃ?」
「それが問題大有りでな。どうやらクラーケンが三又の矛を抜こうとしているらしく、結界が壊れそうなんじゃよ」

 確かに、寝床にそんなものがあったら邪魔だもんね。抜きたくなる気持ちはわかる。

「な!? それはまずい。カケルさま、もしそうなれば、エメロードラグーンの結界も連動して壊れてしまう。私からもお願いしたい」

 そうか、2つの国の結界は、その『三又の矛』を触媒にしていたんだな。ならばやることは一つ。

「わかりました。すぐにクラーケンを排除して、『三又の矛』を安定させて見せましょう」

 
  

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