異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
王妃シェラザード
「俺はカケル。異世界から来た英雄さ」
「くっ、お前が誰だろうが関係ねえ、やっちまうぞ!」
ジアンの命令で一斉に襲い掛かってくるキャメロニアの兵士たち。  
「……ったく、そっちが聞いてきたんだろうが」
「へ? な、何が……」
気付けば全員船底に倒れ伏していたジアンたち。
「さあ、お前たちに質問だ。ここで死ぬのと、俺の奴隷になって安心安全に働くのどっちが良い? まあ奴隷と言っても、ちゃんと3食風呂付だ。あ、ちなみにお前ら以外の連中は全員奴隷として働くってさ。じゃあ、10秒だけ考える時間をやる。はい、10、9、8……」
「な、なります、奴隷になりますから、命だけは……」
「わかった。『奴隷契約』発動!」
男たちの手の甲に光の文字が浮かび上がり、奴隷紋が現れる。
奴隷契約を交わした者は、主に危害を加えることはもちろんだが、命令違反、逃亡など、多岐にわたるペナルティを違反したと判定されれば、死ぬほど辛い痛みに襲われる仕組みになっている。違反の度合いに応じて痛みも変化するため、例えば主を殺そうとすれば、当然奴隷も死ぬことになる。
その半面、奴隷に対する不当な暴力などからも守ってくれる側面もある。つまり、雇用主と奴隷側が、お互い普通にしていれば、なんの問題も無く日常が送れるのだ。強制力のある雇用契約と思っていればそれほど間違いでは無い。
「せいぜい頑張って働いてくれたまえ。近いうちにお前たちの本国とは交渉する予定だから、上手くいけば、ほどなく帰国できるかもしれないぞ?」
***
「さて、大丈夫ですか? シェラザードさま」
何が起こっているのか分からず、唖然としている王妃さまに声をかける。
「あ、あの……助けていただきありがとうございます。なぜ私の名前を?」
「鑑定という能力です。エメロードラグーンも解放しました。もう大丈夫ですよ」
その言葉を聞いて、張り詰めていたものが切れたのだろう。へなへなとしゃがみ込んでしまう。
「あの、シェーラは? 私の娘は無事なのでしょうか?」
国が安心となれば、当然娘が気になるよな。
「シェーラ殿下は、魚人族の国アビスにいらっしゃるそうです」
「そう……アビスに……」
シェラザードさまは、その真珠色の瞳を曇らせる。
友好国でもないアビス側が、無償で受け入れる訳がないと察したのだろう。
俺も直接無事を確認したわけではないから、無責任に無事ですとは言えない。
せめて少しでも早く再開できるようにするぐらいしか出来ない。
「御心配なく、これから迎えに行ってきますから、きっとすぐにまた会えますよ」
「……ありがとうございます。それで、あの……腰が抜けて立てないのですが……」
申し訳なさそうに頬を染めるシェラザードさま。
ああ、言ってなかったけど、彼女もたいがい幼い。リリムと良い勝負だ。まったく、揃いも揃って娘より幼いとか、この世界の母親はどうなってるんだ? イリゼ様に感謝の祈りは欠かさない。
「気にしないでください。ちょっと失礼しますね」
シェラザードさまを優しくお姫様抱っこする。
「あ……ふわあ……あわわわわ……」
顔を真っ赤にしてあわあわしているシェラザードさまがとてもお可愛らしい。
「じゃあ、船ごとエメロードラグーンへ転移しますからね?」
「あの、主様、船ごと転移出来るのであれば、別にお姫様抱っこしなくても良かったのでは? うぎゃあああああああああ!?」
可哀想なジアン。何故か奴隷紋が発動したようだ。なまじ頭が回るのが仇になったな。空気読もうぜ?
「ぷっ、くすくすくす。英雄さまは、面白い方なのですね? ふふふ」
「え? マジですか? 初めて言われたかも……嬉しいですよ」
いつも変人、エロ魔人扱いされているからな。日本に居た時も、カッコいいとはよく言われたけど、面白いって言われることは無かった。なんか新鮮だな。え? 自慢かって? まあな。
「でも、ですね……その、色々とくい込んでいるので、もう少しお手柔らかに願いたいのですが……」
「へ? あ、す、すいません、ついいつものくせで……」
しまったな、無意識に婚約者たちが一番喜ぶタイプのお姫様抱っこをしてしまった。
「ほら、もうエメロードラグーンに着きましたよ。降ろしますね?」
「……嫌! あ、いえ、その、まだ歩くのは嫌ってことです。怖くて無理です」
コアラのように、必死に腕にしがみ付いてくるシェラザードさま。本当にお可愛い。
「俺は構いませんけど、すぐにシェーラ殿下を迎えに行かなければなりませんから、王宮までですからね」
「はい、そこまでで結構です。英雄さま」
嬉しそうに微笑む王妃さまに、ついつい甘いものを与えたくなる。もし飴を持っていたら、間違いなく握らせていたであろう。
***
とりあえず、捕まった人々は全て助け出して、後は王女さまを迎えに行くだけとなった。
魚人の国アビスは海中にあるらしいが、俺は水中呼吸があるのでまったく問題ない。眷族である美琴も俺のスキルが使えるので、同様だ。
案内役として、サフィール。シェーラ殿下付きのメイドであるキトラ、ナディア、フローネも当然同行する。乗り物はもちろんシードラだ。
『主、我も行こう』
「珍しいな、でもリーヴァが居てくれたら安心だよ。ありがとう」
『ふん……勘違いするなよ? 別に主と一緒に居たい訳ではないぞ!』
そうか……俺と一緒に居たいのか……
『なっ!? なぜ抱きしめるのだ! まったく甘えん坊な主で世話の焼けることだな!』
プリプリ文句を言いながらも抵抗しないお可愛いリーヴァの頭を撫でながら、魚人の国アビスのことを思う。
長い間、外部どの交流が無く、独自の文化を持っている国。
敵対する理由もないため、王女の身に心配はないだろうが、唯一の懸念材料は、エメロードラグーンと、アビスの仲があまり良くないことだろうか。
身柄と引き換えに変な条件を出してくるとか、王女は渡さないとか言って来てもおかしくない。聞いた話だと人族を嫌っているみたいだし。
まあ、実際に王女を保護してくれたのは事実なのだから、なるべく要望に応えるつもりではいるけれども。
色々考えても、結局なるようにしかならないんだよな。
「よし、アビスへ向けて出発進行だ!」
俺たちを乗せたシードラは、アビスに向けて潜水艦のように、海中へと潜ってゆくのであった。
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