異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

即堕ちのサキュバス


 部屋に入ると、中は思ったより明るくて安心する。もっと薄暗い部屋を想像していたのだけれど。


「初めまして、少子化対策特命担当大臣のカケル=ワタノハラです。いや、大海原駆といった方がいいかな? ヨツバさん。いや、涼宮四葉すずみやよつばさん」

 奥のベッドに腰かけていたのは、黒目黒髪の青年。パッと見高校生くらいに見えるけど、落ち着きが半端ない。っていうか神々しさが半端ないんですけど? 格好良すぎて目が潰れそうなんですけど? 本当に人間ですか?

 でも、あれ? 私、自己紹介したっけ? あ、鑑定持ちか。さすがチート様。っていうか前世の名前まで分かるものなの? 色々考えつつも、彼から目が離せない。え? 何これ一目ぼれってやつ? 

「あ、あの、えっと……好きです」
「……へ?」

 ああああああああ!? 何言ってんの私。最初の一言が好きですとか馬鹿じゃないの? 小学生か!?

「いや、違うんです、いや違わないんだけど、そうじゃなくて、あのスキルがですね……」

 駄目だああああああ!? テンパっちゃって自分でも何言ってんのかわからない。絶対呆れてるよ……どうしよう。

「ああ、『運命の赤い糸』だろ? 中々面白いユニークスキルだよな。ちょっと試してみても良いかな?」

 良かった。ちゃんと分かってくれてる。有り難くて涙が出そう。これなら犯罪者にならなくてすむよね?

「試すのは構いませんけど、何が起こるか私にも分からないんで、気を付けて下さいね?」

 過去には相手を再起不能にしたこともある。怪我をさせたら申し訳ないよ。

「分かった。じゃあいくよ?」

 温かい感触に包まれる。この世界にきて初めて経験する抱擁……ごめんなさい、見栄を張りました。向こうでも経験ないです。訂正します、生まれて初めての男性からされる抱擁。

 ヤバい……気持ちが良い。良い匂いがして頭がぼーっとしてくる。ダメ……抱きしめられるだけでおかしくなっちゃう。ああ……これが魔力酔い? ふにゃあああああ……もう無理……何も考えられない……

「……ヨツバさん。大丈夫みたいだけど?」
「……ふえっ!? そ、そういえば……」

 ってまさか……いいえ、間違いない。スキルが邪魔しないってことは、この人が……駆さんが私の運命の人なんだ。嬉しい……嬉しいよ。

 とめどなく流れ落ちる涙が駆さんを濡らしてしまうから、体を離そうとしたけれど、彼はかえって力強く抱きしめてくれた。ああ、もう好き、大好き。即堕ちだよ。チョロインだけど構わない。

「駆さん……お願い、めちゃくちゃにして? でも初めてだから優しくしてね?」

 我ながら言ってる事めちゃくちゃ、アホなお願いしてるなあと思うけど、

「わかった。任せとけ」

 さわやかな笑顔でサラッと言ってのけるからたまらない。きっと今、私の瞳はハートマークになってるよ。


***


 すごかったね。我ながら引くぐらい。自分が女だって嫌ってほど自覚したよ。はあ……幸せ。

 そう言えば1分過ぎてるって途中で気付いたんだけど、なんか時空魔法とやらで時間を引き延ばしてるんだってさ。すごすぎて意味わからないよね?

「あの……駆さん? 魔力吸わせてもらってもいいかな?」

 魔力酔いが酷くておかしくなりそう。こんなの信じられない。

「もちろん。どうぞ召し上がれ」

 彼が言い終わると同時に、我慢できずに首筋にかぶりつく。その瞬間に魔力が私の体に染み渡ってゆく。あ……これダメな奴。気持ち良すぎて意識が飛ぶ。

「あああああああああああああ!? 知らない、こんなの知らない……気持ちいいいいいい!」

 そこから先は何も覚えていない。ああ恥ずかしい。なんかとんでもないことを口走っていたような……でも、駆さんは慣れてるみたい。なんかちょっと悔しい。


「そういえば、面白かったよ『サキュバス無双ハーレム』。続きが気になってたんだよな」
「へ? 私の小説読んでくれてたんだ……」

 ヤバい……嬉しすぎて死にそう。

「実は、この世界でも出版してるんだよ」
「マジで? じゃあ後で本屋行って全巻買わせてもらうよ」
「ありがとう……でも結構高いよ? 1冊金貨5枚もするんだよ」

 私の月給の2倍以上なんだよね……だから作者なのに1冊も持ってないんだ。悲しいけど。

「……金ならある。って一度言ってみたかったんだよな」
「ぷっ、あはははは、さすが英雄。お金持ちなんだね」

 この国の王女を二人も婚約者にしてるぐらいなんだから、きっとすごいお金持ちなんだろうな。凄すぎて雲の上の人だね。


「……もし良かったら、家に来るか? 俺以外にも日本出身者何人もいるしな?」
「……それって、もしかして全員婚約者だったりする?」
 
「まあな。一人は妹だけど」

 やはりそうか。無理もない。この人に出逢って好きにならないのは多分不可能だろうし。身を持って教えられちゃったからな。ふふふ。

「あの……それって皿洗いをする使用人ってことかな?」

 この人のことだから、私の皿洗いスキルを見抜いているはず。英雄の皿洗いなら超出世じゃない私。お給料も今より良さそうだし……

「は? いや、洗ってくれても構わないけど、婚約者としてって意味なんだけど?」
「……コンヤクシャって何?」

 音は聞こえるんだけど、意味が理解できない。

「え? いやお嫁さんって意味だけど?」
「ええええええええ!? 私がお嫁さん? いいの? 私、皿洗いぐらいしか出来ないよ?」
  
「もちろん。ヨツバはとても魅力的だよ。それに小説を書けるじゃないか」
「良いの? 小説を書いて良いの?」

「ああ、好きなだけ書いてくれ。この世界には娯楽が決定的に足りないと思うんだよな。もちろん衣食住完備だし、温泉設備もある。取材が必要なら、世界中連れて行ってあげるよ」

 ああ、神様。ありがとうございます。

 衣食住が保証されて、好きなだけ小説書けるとかヤバいくらい幸せ。

 しかも温泉! 世界中旅行! ハッピーエンド来たでしょコレ。

 
 すでに頭の中は、バラ色の未来予想でいっぱいのヨツバ。どうやってマスターに店を辞めることを伝えようか考え始めていたのだった。

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