異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

いざアトランティアへ


 メエとの打ち合わせを終えたら、今度は元廃エルフの従業員たちに、今後の説明をしなければならない。

「うん……やはり羊モフはやみつきになるな……」
「なにかおっしゃいましたか?」
「いや、独り言だよ、エルヴィン。それより何か困ったことや要望はないか?」

「いいえ、むしろ恵まれすぎていて戸惑いのほうが大きいといいますか……」

 真面目さが顔に出ている元近衛隊長のエルヴィンが頬をかく。

「そうか。まあ、何かあればメイドたちに言ってくれ。すぐに対処するから」
「はっ、かしこまりました。カケルさまも、どうぞお気をつけて」

 エルヴィンには、エルフたちのリーダーとして、当面ここで頑張ってもらう。数少ない貴重な男性従業員なので、大いに期待したいところだ。適性を見る必要はあるけど、近い将来、各国にある領地運営を任せてもいいかもしれないな。

 ちなみに屋敷の敷地内は、樹粉を完全に防ぐ結界を張ってあるので、従業員たちも安心だ。もちろん、夫婦や恋人がいる従業員のために、必要な時に使える世界樹シリーズを完備してあるので、夜の生活も安心だよ。

 
「貴方様、そろそろ行きましょうか?」
「そうだな、シルフィ。帰ろうプリメーラへ」

 王族の人たちには、こんど会議で会うから特にお別れはしない。

 ちなみにマーガレットさまは、ベルファティーナさまとアストレアに行くという名目で俺の屋敷にしばらく滞在するらしい。大丈夫だよね? 二人とも住み着いたりしないよね? いや俺は別に構わないんだけどね?

 あ……そういえば、ルシア先生はどうするんだろ? そもそも、ここから離れられるのかな?

『もちろん私も行くわよ? え? 本体から離れて大丈夫かって? だって世界樹は世界中に根を張り巡らせているんだから。いってみれば、この星すべてが私の体の一部みたいなものよ』

 なるほど、世界樹だけに世界中……なんてね? はい、ごめんなさい。

『それに……プリメーラには、可愛い子がいっぱいいるんでしょう? ワクワクが止まらないわ』

 目にハートマークを浮かべるルシア先生を見て、美琴が二人になったような錯覚を覚える。

「……先輩、いま私のこと考えたでしょ?」

 嬉しそうに抱き着いてくる勇者が愛おしい。すまんな、事実とはいえ失礼なことを考えたのに喜んでくれるなんて。せめて精一杯抱きしめようじゃないか。


 思えば一泊しただけなのに、すでに長年住んだ我が家のような感覚だ。

(……また来るからな)

 そびえたつ世界樹の絶景もいったん見納め。ルシア先生は隣にいるけどさ。


 大げさかもしれないが、まさに万感の思いでユグドラシルを後にする。

 何度もプリメーラの屋敷に戻ってたじゃんと言われればその通りなんだけど、結構この街が好きになっていたりするんだよな。


 次は全員で来よう。そう心に誓いながら転移を発動するカケルであった。


***


 プリメーラに戻り、早速アトランティアへ出発するための準備を始める。

 とはいっても、すでに準備は終わっているので、同行するメンバーを決めるぐらいだけれど。

 ただ問題は――――


「「「「はいはい、行きます!!」」」

 行き先が超人気のアトランティアだけに希望者が殺到したこと。もっと言えば、全員行きたがったことなんだよね。


「え……何でそんなに行きたいのみんな?」
「そりゃあそうですよ、カケルさま、アトランティア行きのチケットは3年先まで埋まっていて、フリーパスに至っては、王族でも中々手に入れることが難しいんですから!」

 バドル冒険者ギルドのサブギルドマスターのリノが説明してくれる。そんなに人気だったのか……全然知らなかった。

「え……そうなんだ!?」

 アトランティアの王女であるリリスも驚きを隠せない。

 俺とリリスは、アトランティアが滅んでいた時のままの記憶しかないので、他のメンバーとの認識の差、温度差がすごいんだよな。

「ダーリンのことじゃから、飛んで行けば誰でも入れると思っていたじゃろ?」

 はい、エヴァさま、思っておりましたとも。

 どうやら、入国に際しては、厳しく制限されているらしく、家族、親せき、招待客以外は、よほどの紹介状がないと無理らしい。冒険者に関しては、S級のみフリーパスなんだってソフィアが自慢してた。

(……言えない。アトランティアの浮島は私がシステムを作ったなんて絶対に言えない)

 みんなが浮島の話題で盛り上がる中、刹那は内心苦悩していた。

 みんなの夢を壊してまで言うことでもないし、せっかくのファンタジー感が台無しだろう。駆や美琴たち異世界組のためにも秘密にしようと決意する。

 だが――――

『あ、そういえば、浮島って……うっ……』

 口を開きかけたイヴリースに麻酔針を打ち込み黙らせる刹那。 

(そうだった……あと、フォルトゥナも知っているんだった)

『フォルトゥナ、死にたくなければ、浮島と私のことは黙っていなさい』

 注射針を突き付けながら、耳打ちする刹那に震えながらこくこく頷く小悪魔。

(あと知っている可能性はリリスのみか……)

「ねえリリス、サキュバスの寿命ってどれぐらい?」
「え? そうね、だいたい200年だけど、王族だと400年ぐらいかしら? いきなりどうしたの刹那?」

(なら、当事者はもう死んでいるか……今の反応を見る限り、リリスは知らないようだし……)

 それなら安心と、ほっと胸を撫で下ろす刹那。

「ううん、何でもない。じゃあリリスはあと300年近く生きる可能性があるのね」 
「いいえ、カケルの眷族になったから、理論上は500年は余裕ね。でも多分そうはならないわ」
 
 にっこりほほ笑むリリス。

「……どういう意味?」
「だってカケルが死ぬ時に私も死ぬからよ。カケルがいなくなった世界に残る意味なんてこれぽっちもないもの」
「……なるほど正論ね」

 その気持ちはよくわかる。むしろ刹那のほうが、その想いが強いぐらいだ。

 同じ想いを持つ者同士、力強く握手を交わすリリスと刹那。

 いつの間にか、周りには婚約者たちが集まり拍手の嵐となる。


(ええぇぇっ!? いや、嬉しいんだけど、困ったな……)

 さすがの俺も一緒に死ぬとか言われると単純には喜べないんですけど!?

 理想を言えば、みんな同時に死ねばいいんだろうけど、そうなると寿命が短い方に合わせなければならなくなるしな。

 まだまだ先の話ではあるけれど、いつか訪れる未来に今から頭が痛いカケルであった。
    
 

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