異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
ミヅハ=ワタノハラ
『はい、おしまいです。これで大丈夫ですよ』
風呂に入ると発情してしまうことが分かったので、ミヅハには、別の水脈から水を引いてもらった。さすがに世界樹の水の風呂では、エルフたちが仕事にならなくなってしまうからな。
もちろん、世界樹の水は違う目的で使えるから、ちゃんと地下槽に蓄えてある。これなら安心だろ? 俺が。
「ありがとう、ミヅハ。助かったよ」
ミヅハを抱き寄せて、アクアブルーのサラサラな髪を撫でる。
超精霊であるミヅハは、海の水さえ干上がらせることも出来るし、その気になれば世界を滅ぼすことだって出来る。
けれど、嬉しそうに目を細めているミヅハは俺の可愛い妹で、華奢で綺麗な女の子だ。
俺の頼みを断るどころか、率先して喜んでやってくれるのだ。
『いいえ、お兄様のお役に立ててミヅハは嬉しいのです』
そう。ミヅハはいつもそうだ。俺のために考え、俺のために行動する。俺のために笑い、俺のために怒る。
それがミヅハ自身の喜びであるのだと、わかっていてもやっぱり何かしてあげたいと思うし、申し訳ないとも思ってしまう。でも――――
『そう思っていただけるだけでミヅハは幸せです、お兄様』
そう言われてしまえば、もうそれ以上何も言えなくなってしまう。
(もう……お兄様ったら……困った人)
上位精霊は純粋な愛情しか抱かない。人間のように妬みや嫉妬、不満や憎しみのような感情は、理解は出来ても抱くことはないのです。
私にあるのは、お兄様への純粋な愛情のみ。存在そのものを肯定し、その全てを愛しているのです。
だからお返しとか、ご褒美なんていりませんのに……
でも、お兄様の気持ちも分かりますけどね。逆の立場ならきっと私もそう思うでしょうから。
けれど……私は肉体を持った精霊。だからでしょうか? お兄様ともっと深く繋がりたいと思ってしまうのです。
人間の肉体の約7割が水分、そして私は肉体をお兄様から頂いておりますから、99.9%私とお兄様は同じ存在。あくまで理論上は。
でも……足りないのです。私はお兄様に溶けてしまいたい。混ざり合って一つになれたらどんなに幸せだろうかといつも夢想しているのです。
けれど……それは出来ません。私が消えたらお兄様が悲しむのがわかるから。私もそれは嫌ですから。
きっと……だから人間は、互いに抱き合い、キスをして、身体を重ねるのでしょうね。
永遠に埋まらない距離を必死に近づけようとするのでしょう。
だから私は世界一、幸せなのだと思います。だって他の誰よりも、お兄様を近くに感じられるのですから。
***
『お兄様……ミヅハ……何だか身体が変なのです……』
顔を上気させて俺に抱きついてくるミヅハ。まさか世界樹の影響か? 落ち着け、リーゼロッテの時の二の舞いは御免だからな。
「ミヅハ、俺が楽にしてやるからな」
『お兄様……お願いします……水源転移……』
「こ、これは凄いな……」
ミヅハの水源転移でやって来たのは、地下深くにある巨大な湖。
以前ミヅハと出逢った地底湖よりもはるかに大きく、向こう岸が霞んで見えるほどだ。
壁面全てを覆い尽くす発光する苔によって、湖面は磨き上げた鏡のように輝いている。
『この……湖全てが……世界樹のエキスが濃縮された……もの……です。一緒に入りましょう、お兄様』
湖の水は、世界樹の水よりもはるかに濃度が高く、樹液に匹敵するほどだ。さすがのミヅハも無事ではいられないだろう。
「なっ!? そんなところに入ったら……」
『……ふふっ、どうなる……でしょうね?』
妖艶な微笑みを浮かべて俺を湖の中に誘うミヅハ。
俺は水中呼吸のスキルがあるから問題ないし、なんか凄いことになりそうで、不謹慎ながらワクワクしてしまう。
湖の中は全体的に淡い緑の水色で、まるで森の中にいるみたいな神秘的な世界だった。
魚も水草もない二人だけの空間。このまま湖に溶け出して、混ざり合ってしまいそうな、安心とも不安ともつかない不思議な感覚。
思わずミヅハに手を伸ばし、抱きしめずにはいられなかった。
***
ヤバい……まだ幸せな感覚が押し寄せて止まらない。全てを包みこまれたような安心感と、細胞レベルで一体になったような抗いようがない強烈な快感。
「ミヅハ……少しは楽になったか?」
『……ごめんなさい、お兄様……まだ駄目みたいです。もう少しだけこのまま……いいですか?』
可愛いミヅハのお願いを断る選択肢などありませんよ?
「もちろんさ。ミヅハが楽になるまでな?」
『えへへ……ありがとうございましゅ……お兄様』
うーん、ちょっと語尾が怪しくなってきたけど大丈夫かな?
更に5分後(100倍使用中)
「あ、あの〜、ミヅハさん? そろそろ……」
『うふふ……お兄しゃまあああ……みじゅはにゃら、まだ大丈夫らから……』
……全然大丈夫じゃなかった。っていうか、ここに居る限り、ミヅハの状態は無限ループ……いや、酷くなる一方だよな。
「ミヅハ、悪いけど一旦、湖から上がるぞ」
素早く抱き上げ、湖から上がる。
水の中では気付かなかったが、ミヅハの身体が淡く光り輝いている。
精霊神……それが眷族となったミヅハの進化した姿だ。
4大精霊を始めとしたすべての精霊を従える精霊界の頂点に君臨する女神。自然現象すら操る、この世界最強の1角だ。
『むにゃむにゃ……お兄様……抱っこ……』
「はいよ、おおせのままに」
『う〜、お兄様……ぎゅってして……』
「これで良いか? って……ありゃりゃ……寝ちゃったか……」
起こさないように、寝息を立てるミヅハを見つめる。
「ふふっ、なんか懐かしいな。亜里沙を寝かしつけたことを思い出すな……」
(ごめんなさい、アリサお姉さま。二人の思い出の記憶を少しだけ借りました)
ミヅハはカケル視線を感じながら内心アリサに詫びる。
お兄様……どうして私が妹として生まれ変わったのかご存知ですか?
お兄様の心の奥底に、喪った妹への強い想いと愛情を見つけたからなのですよ?
私はそんな妹になりたかった……お兄様に想われ、愛される妹になりたかったのです。
羨ましい……精霊だった私に初めて宿った人間らしい想い。
私は……なれたのでしょうか? お兄様に愛される妹に。
「ああ、もちろんだ……ミヅハ。お前は俺の大事な妹だぞ」
『……お兄様……気付いてらっしゃったのですか?』
「当たり前だろ? 俺はお前の格好良いお兄様なんだからな」
『……違いますよお兄様。とってもとってもすごーく格好良いお兄様です」
「ふふっ、そうか……覚えておく。それじゃあ帰ろうか?」
『はい。あの……お兄様……おんぶして?』
「ほれ、いいぞ」
しゃがんだお兄様の背中に飛び乗る。私がいくら暴れても、びくともしない強い背中。
温かくて大きな背中。私だけの特等席。このままずっとこうしていたい。
お願いお兄様……もう少しだけゆっくり歩いてくださいね。
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