異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

ユグドラシルの屋敷とご褒美部屋


 晩餐会は急遽、王太子と廃エルフたちの帰還の祝宴へと変更され、規模を拡大して盛大に執り行われる運びとなった。 

 俺たちは疲れているという名目で、シルフィとサラ、リーリエを残して顔見せだけで早々に会場から離脱。ユグドラシルの1等地にもらった屋敷へとやってきた。新たに雇用した3百名のエルフたちが暮らせるように、急いで整備する必要があったからだ。


 正直、勝手に大きな屋敷だと思い込んでいたが、思ったより小さい可能性もある。少なくとも300名が暮らせるかどうかは見てみないとわからないので、ドキドキしていたのだが――――


「大きいですね……王子様」
「ああ、大きいな……サクラ」

 もらっておいて文句があるわけではないが、いくらなんでも大きすぎるだろう?

 まあ、エルフは人口減で土地が余っているとも聞くし、王女二人の屋敷、いわば離宮のような場所になるわけだから、理解出来なくはないが、まさかプリメーラの屋敷より大きいとは思ってもいなかった。


「ほらほら先輩、早くしないと間に合わなくなるよ!」

 美琴の言葉で我に返る。そうだった、時間がないんだった。最近時空魔法があるせいで、どうにも時間の感覚がおかしい。使いすぎないように注意しないと。

 ちなみに時空魔法100倍を使えば、当然100倍時間が経過するから、亜神である俺や長寿種族である魔族やエルフでないと、あっという間におじいちゃん、おばあちゃんになってしまうからね。

「悪い悪い、じゃあ美琴は、じゃんじゃんアイテムボックスから物を出してくれ」
「了解だよ先輩!」

 美琴たちには、必要になるであろう物資を調達してもらっていたのだ。

 アイテムボックスから大量の物資が取り出されて、辺り一面に積み上がる。

「ミヅハ、悪いんだけど、先に屋敷の清掃を頼む」
『お任せくださいお兄様、ちゃちゃっと終わらせてみせます』

 物を清める水魔法の『クリーン』でも似たようなことはできるが、ミヅハの場合は桁が違う。その気になれば、都市丸ごと洗浄することも出来るのだから、屋敷一つ綺麗にすることなど造作もない。

「サクラは、植物魔法で屋敷の敷地内に桜の木を植えていってくれ。待ってろ、いまイメージを伝えるから」

 サクラの桜色の唇にキスをしてイメージ映像を伝える。

「うわあ……これが桜並木なんですね。素敵……任せてください、サクラ頑張りますよ!」

 巫女服姿のサクラにクラクラしてしまうがかろうじて耐える。走り去るサクラの背中を見送りながら精霊召喚を発動する。


「精霊召喚モグタン」

 土の大精霊であるモグタンが姿を現す。

『マスター、呼んだモグか?』
「呼び出して悪かったな。モグタンには、温泉設備を作って欲しいんだ」
『……温泉ってなんだモグ?』
「待ってろ、いま見せてやるから」

 モグタンに口付けして温泉と設備のイメージを伝える。彼女にお願いするのは、風呂本体の作成と、温泉を掘り当ててもらうこと、地下室を作ってもらうこと。土と水の精霊がここにいる以上、これもまた造作もないことだ。

 モグタンが風呂を作っている間に、俺は屋敷の外装と内装にも手を入れる。どうせなら好みのデザインにしたいからな。当然照明やインテリアにもこだわってしまった。

 清掃が終わり、ベッドや布団、シーツやタオルその他生活必需品を運び込んでゆく。あとは厨房かな。

 厨房に向かい食器や調理器具を確認して足りないものを揃える。食材や調味料、酒類は刹那の作った冷蔵と冷凍の魔道具を完備した地下倉庫に収納した。

 最後に、これが一番大変だが、地下水脈から水を引き、水道設備を作る。これまた刹那が作ってくれた殺菌消毒の魔道具があるので、安心安全な飲料水としても使えるのだ。

 
 そして1時間後、世界樹を背景に美しく幻想的に夜闇を照らす屋敷が完成した。


「うーん、思ったよりいい感じだな」
「……先輩、なんかプリメーラの屋敷より素敵なんだけど?」

 たしかに少しやり過ぎた感はあるな。後悔はしていないけれど。

「元廃エルフの方々が腰を抜かさなければいいのですが……」

 クロエも心配そうに屋敷を眺める。え? そんなにヤバい?

「はっきり言ってやり過ぎよ、私の騎士」

 くっ、りーぜロッテまで……ま、まあ悪いよりはいいじゃないかと開き直ってみる。


『カケルさま、エルフたちの教育係はどういたしますか?」
「それなら、プリメーラの屋敷にいるメイドの中から派遣しようと思ってる。人選は任せるよヒルデガルド。アイシャと相談して決めてくれ」

『かしこまりました。では屋敷までお願いいたします』
「わかった、行こうか」
「お待ちください、私をお忘れなく」

 専用メイド長と専用妹メイドを連れてプリメーラの屋敷へ転移する。


「おかえりなさいませ、カケルさま、ヒルデガルド、クロエ」

 メイド長アイシャが出迎えてくれる。ああモフりたい……最高級の手触りを堪能したい。



「……なるほど、それは大変な作業ですね……」

 話を聞いたアイシャが難しい顔をする。

「そんなに人選が難しいのか?」
「御主兄様、メイドたちにとって、この屋敷を出るということは、言ってみれば王都の豪邸から人外魔境の鉱山に送り込まれるようなものなのです」

 そんな大袈裟な……!?

『大袈裟ではありません。もし私がその立場になれば、迷わず腹を切って切腹いたします」

 ヒルデガルドさん!? この世界にも切腹ってあるの? 怖いよ!?

「……そうなのか? だったら派遣するメイドたちには、何らかのご褒美が必要になるということか……」

 苦渋の決断だが、やむをえまい。エルフの従業員たちの未来と人生がかかっているんだからな。妥協するわけにはいかないだろう。 

「カケルさまが嬉しそうなのは気になりますが、その通りです」

 ……気のせいだアイシャ。

「御主兄様がエロしそうなのはいつものことですが、その通りです」
   
 ……エロしそうって何ですか? クロエさん。

『そして、それを選ばなければならない私たちにも、相応のご褒美が必要かと存じます』

 ……なるほど、君もとってもエロしそうだねヒルデガルド。

「よし、とりあえずお前たちにご褒美を渡しながら、じっくりとメイドたちへのご褒美を考えるとするか」


「そうなると思いまして、お部屋のほうは準備出来ております」

 頬を染めて恭しく頭を下げるアイシャ。お前は本当に優秀なメイド長だよアイシャ。

「そう来ると思いましたので、しっかり毛並みを整えてあります」

 自慢げに尻尾を振るクロエ。さすがだ……モフが神がかっているぜ。

『私は24時間いつでも受け入れ準備OKです。カケルさま』

 ……何も言えねえ。ヒルデガルドはガチだからな。

 
 エルフたちの未来とより良い職場環境を実現するため、カケルは強い意志を胸にご褒美部屋へと向かうのであった。
  

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