異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
世界樹の罠
「ま、まさか……ブレイヴ兄上は、樹液を採取に?」
「そうなのです……兄上が高層に向かってからもう3年……消息不明、生死も不明なのです」
悲しそうに……いやどちらかというと恥ずかしそうに告白するシルフィ。
恥ずかしがることなんてないぞシルフィ。兄上は男の中の男だ。誇るべき兄だ。
「本当はボクも連れて行ってって頼んだんだけど、危険だからって一人で……」
そうか、そのおかげでサラに逢えたわけだから、兄上には感謝しかない。
だけど、いつまでもこのままって訳にもいかないだろうな。王位継承の問題もあるし、家族みんなも心配している。だったら俺のやることは一つしかないじゃないか。
「俺が……俺が必ずブレイヴ兄上を連れて戻ってきます」
「おおっ、婿殿……それは本当かね?」
「もちろんです。ついでに樹液も手に入れてきますよ」
(嘘ね……樹液が本命で兄上がついでね……)
(うん、樹液が9割で兄上が1割だね)
シルフィ、サラ、それはいくらなんでも言い過ぎだろう。せいぜい6:4ぐらいだよ!? 樹液はほら、担当大臣としての仕事の一環として……うんぬんかんうん。
***
結局、晩餐会が始まるまでの間に、世界樹の高層へ向かうこととなった。
「みなさま初めまして。護衛ならびに案内役を務めさせていただきます、白百合騎士団長リーリエです」
真っ白な鎧に身を固めた美しいエルフの騎士団長リーリエさん。気の強そうな高潔な佇まいに俺と美琴の興奮は最高潮だ。まったくこれだから異世界人の業は深い。
(せ、先輩……来た、エルフの女騎士来たよ!?)
(ああ、絵にかいたようなエルフの女騎士が来たな)
(で、でも先輩……世界樹にはオークがいないよ!?)
(ふふっ、大丈夫だ美琴、世界樹先生を信じろ)
「リーリエさん、カケルです。案内よろしく頼みます」
大変失礼な妄想はおくびにも出さず、さわやかスマイルで握手をする。
「くっ、こ、これが英雄の力……ま、負けない、この程度で屈したりはしない……」
素晴らしい……想像以上の逸材だった。俺の手を握ってまだそんなことを言えるとは……美琴、よだれが垂れてるぞ!?
***
世界樹の高層に行くには、国の許可が必要になる。様々な危険が待ち受けているかららしい。
「実は、高層は女性にとってとても危険な場所なのです。残念ですが、勇者様以外は許可できません」
ということで、高層に行くのは、俺と美琴とリーリエさんの3人だけだ。なんて都合の良い……いやみんなには申し訳ないが、ここは俺たちに任せて欲しい。
「みんなすまない。お前たちをエロい……いや危険な目に遭わせるわけにはいかないんだ」
「「「…………」」」
うっ……みんなのジト目が痛い。ほら美琴なにか言ってやれ。
「ぐふふ……」
駄目だ……美琴の奴、すでに妄想で正気を失ってやがる。
みんなのジト目に見送られて、世界樹高層へと出発する。
「それで……どうやって高層へ?」
危険な高層への道は険しい。まさか木登りをするのだろうか?
「え? 普通に階段ですけど?」
「あ、ソウデスカ……」
3人で世界樹内部にある螺旋階段を上ってゆく。
「足元に気を付けてください。ってしまった!?」
先頭を進んでいたリーリエさんが突然声を上げる。
壁や床から無数の蔓が伸びてきて、リーリエさんの体を拘束してゆく。
「こ、これは、世界樹の蔓です。全身を拘束して女性から魔力を吸収するのです……くっ、やめろ!? うっ、鎧の隙間から……あ、ああああ!?」
俺も美琴も、突然の事態に体が動かせない……いや動かない。
(くっ、さすがは世界樹……こんな罠が待ち受けているとは……みんなを連れてこなくて正解……いや後悔)
「美琴、気を付けろ、初見の魔物……いや魔物ではないが、とにかくどんな力を持っているかわからない。焦らずじっくり観察するんだ」
「わかってるよ先輩、こんな素晴らしい……いや恐ろしい敵は初めてだから慎重にいかないとね」
鑑定眼によれば、一定の魔力を吸収したら解放してくれるので、魔力が減る以外は無害らしい。俺たちにとっては大変有益だが。
心から助けてあげたいが、世界樹を傷つけるわけにもいかないし、見守る以外に選択肢はない。まったく世界樹最高だぜ。
「はあはあ……申し訳ございません。案内役といいながら、あんな初歩的な罠に引っかかるとは……」
真っ赤に上気した顔で荒い息をはくリーリエさん。いいえ、貴女は最高の案内人ですよ。美琴と顔を見合わせて力強く頷く。
「あの……大丈夫ですか? 具合が悪そうですよ?」
「だ、大丈夫です。樹粉の影響に加えて、先ほどの罠のせいで体がおかしくなっているだけです」
いや……全然大丈夫じゃないでしょ!?
「ふふっ、たとえ体が屈したとしても、心までは屈しない。それが騎士道ですから」
凛とした眼差しからは樹粉の影響など感じられない。素晴らしい精神力。まさに騎士の鑑だ。最高ですリーリエさん。
***
しばらく上り続けること30分。ふと疑問に思ったので、リーリエさんに尋ねてみる。
「でも、ブレイヴ兄上は、なぜ3年も戻ってこないのでしょうか?」
「……もしかしたら、ブレイヴ殿下は、伝説の廃エルフに出会ってしまったのかもしれません」
「「は、廃エルフ!?」」
美琴とともに歓喜に震える。やはり、エルフといえばハイエルフ。エロフとダークエルフは揃っているので、これでコンプリートエルフだ。
エルフの上位腫で、エルフよりもさらに長命で美しい、ファンタジーの定番。ふふふ。
ってちょっと待て!? 廃エルフって何? ハイエルフじゃないの!? いや音は同じなのになんで分かるのとか突っ込まないでね?
しかもよく考えたら、シルフィたちって進化してハイエルフになってたから、もうコンプリートしてたよ。廃エルフはまだだけど。
「先輩……なんか残念な感じのエルフだね……」
「そうだな……あまり関わりたくない感じのエルフだな……」
とはいえ、今更行かないわけにもいかないしな。
まだ見ぬ種族? に思いをはせながら、俺たちは階段を上り始めるのだった。
「……ねえ先輩。飛んでいったほうが早くない?」
「……それな、俺も今気付いたよ」
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