異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

吸血鬼ハーレム


 初代エヴァンジェリンを連れて、地上で待つ仲間のところへ戻る。

 王家の人たちは慌てふためいていたけれど、クロエたちはちっとも驚いていなかった。


「御主兄様が動けば婚約者が増える。いつものことですから」 

 クロエ、いつも苦労かけてすまんな。

『専用メイドでなければ私は構いませんが』

 メイド服は着てるけど、専用メイドではないからセーフだ、ヒルデガルド。

『あああ……刻一刻と交代の時間が近づいて来た。もっと主と戯れたかったのに……』

 フリューゲルに至っては、それどころではない御様子。そうか、帰りはクロドラと交代するんだったな。

「フリューゲル、別に交代するからって戻らなくても良いんだぞ? 一緒にクロドラに乗れば良いんだからな」

『ほ、本当か主よ? ふふふ、ならば我の身体を好きにして良いぞ。この姿、好きなのであろう?』

 尻尾をぶんぶん振る姿はとても可愛いのだが、さすがに周囲の視線が痛い。


 王城に戻ってからは、条約締結の件での打ち合わせや各大臣や貴族たちとの顔合わせで忙しかった。

 普通なら顔合わせなんて面倒なだけかもしれないが、俺の瞬間記憶と鑑定、そしてクロエの匂い鑑定とヒルデガルドの透視まであれば、隠し事など不可能。

(やはり、この国にも居たか……) 

 貴族たちの中に3人、人身売買組織と繋がっている者を発見した。

 この件は、すぐにブラッド陛下に報告し、その貴族たちは即御用となった。

 ついでなんで、彼らの屋敷に囚われていた人たちも救出。とりあえず今やるべきことはやったと思う。


 ちなみに、俺はトラシルヴァニアの公爵位もいただき、犯罪組織と繋がっていた貴族の領地も俺の領地となった。こんなに領地もらっても、現状手が足りてないんだけどな……

 当面は陛下が代官を派遣してくれるから、すぐにどうということはないが、落ち着いたらちゃんと領地経営しないと。日々の生活を送っている領民がいるんだから無責任なことはできない。

 それにしても婚約者は沢山いるのに、実務をこなしてくれる人材が全く居ない事実。男だ、男が欲しい。いや変な意味では無くて。女性だと婚約者になってしまうからな。自分でも何を言っているのか分からないが、事実なのだから仕方が無い。

 実務をやってくれる人材については、ミレイヌにでも頼むかな。各国王家は復興で大変そうだから、人材を引き抜いてしまっては申し訳ないし。

 
 トラシルヴァニアでやり残したことは、王家のみなさんとの夕食会のみ。

 今夜はセレスティーナが待っているし、早めに帰りたい。んふふ。


 だが――――

「ごめんねダーリン。お母様がどうしてもっていうから……」
「うふふ、ごめんなさいね。次の機会がいつになるかわからないから……」

 俺の前に最強の吸血鬼母娘が立ち塞がる。いや、ノクタニアさんは人族だったか。そんな上目遣いでお願いされたら断れないじゃないか……

「わかりました。俺がエヴァの夫に相応しいかどうか、しっかり見極めて下さいね」

「ふふっ、さすが英雄ね。でも私は甘くないわよ? 王室仕込みの手練手管味あわせてあ・げ・る」
「はは、それは楽しみですね。ですが、二人まとめて失神することになりますよ?」
「望むところだわ。私が失神するまで国に帰れないと思うことね!」


***


「ふう……どうやら合格をいただけたようで良かった」

 幸せそうに仲良く眠る母娘の姿に頬が緩む。姉妹にしか見えないけど。エヴァは今夜はトラシルヴァニアに泊っていくので、一旦お別れだ。 
 
「ちょっと待ってあなた」

「エヴァンジェリン……」 

 呼び止めたのは、いつの間にか目を覚ましていたエヴァだった。抱き起こして膝の上に乗せる。

「んふふ。ひょっとしてあなた気にしてたんじゃないの? もし将来私たちの娘が出来た時に、私が他の男の味見をするんじゃないかって?」
「う……正直気になってはいたな」

「うふふ、ダーリンが嫉妬してくれるなんて可愛い。大丈夫よ。私はそんなつもりないから」
「エヴァ……」

「だから……しっかり捕まえておいてね……ダーリン」

 最後に長い長い甘いキスをして部屋を出る。


「……ずいぶんお楽しみだったね」

 腰に手を宛てて可愛いジト目でにらむのは初代エヴァンジェリン。

 すいません。思いっきり楽しんでいたので何も言い返せねえええ!?

「すまなかったな。話は終わったのか?」
「うん、まさかこんなに時代が違うとは思わなかったけど、みんな親切だったよ」

 エヴァンジェリンは陛下を始め王族との会食。歴史資料の確認など、大忙しだったのだ。特に国家の歴史を担当している学者たちの喜びようは凄かった。なにせ歴史の生き証人がいるのだから。

「それでさ。すごく疲れてしまったから……君に癒してもらいたいな?」

 ぐはぁ!? 殺人的な可愛さでおねだりする初代様。

「かしこまりました。身も心も癒して差し上げます。女王様」
「ふふっ、じゃあお姫様抱っこして? 幻は一度もしてくれなかったから……」

 あのもやし野郎、人生の楽しみ方を知らないんだな。

「エヴァンジェリン……いいのか?」
「もちろん。早く私を君の物にして欲しいな?」

  
 そのままエヴァンジェリンも眷族にしてしまった。出会ってからの最速記録かもしれないが、苦しんだ時間が長かったということで許して欲しい。誰に許しを請うているのかはわからないが。

 
 二人のエヴァンジェリンは、しばらくこの国に残るので、その間に残りの2か国も回ってしまうつもりだ。

「おおっ、婿殿、探していたのだ。ちょっといいかな?」

 ブラッド陛下に捕まってしまった。嫌な予感がする。

「……スキアです」
「……イスキアです」

 淡いグレーの髪に赤い瞳の双子の吸血鬼。髪の分け目が逆なこと以外は本当にそっくりだ。

「私の姪っ子でな。幼いころから異世界の英雄に憧れていて、異世界人以外とは絶対に吸血の儀をしないと固く決意していて困っていたのだ。貴重な血を受け継ぐ一族なので、なんとか子孫を残したいのだが……何とか面倒をみてもらえないだろうか?」

 頭を下げる陛下。双子の吸血鬼も見事な土下座を決める。

「お願いします。メイドでも構いません、お情け頂けないでしょうか?」

 なんだかセレスティーナとユスティティアの姉妹に似ている。どうしたものか。

「わかった。俺でよければ喜んで。でも、こんどの満月の日までしっかり考えて結論を出すといい」
「……婿殿、今晩が満月なのだが……」
「…………左様で」

「……よし、スキア、イスキア、外に出てするぞ。吸血の儀」  
「「はいっ!!」」 
 

「「あああああああああ!? 何これ……こんなの知らない!? あああああああ!?」

 シルフィたちと同じように、彼女たちも感覚共有するようだ。だとしたら危険なほどの快感だろう。吸血は、一対一でさえ意識が飛びそうなほどの快楽なのだ。二人分同時に味わってしまったらそれは……

 
 二人仲良く失神してしまった双子を陛下に預けて、ようやく帰る準備だ。


「クロエ、ヒルデガルド、そろそろ帰るぞ」

「御主兄様……さんざん楽しんでおいて私たちには何もなしですか?」
『カケルさま、私は受け入れ準備万端です』

 ヒルデガルド……何の受け入れ準備かは聞かないよ!?


 セレスティーナ、すまない。帰りは少しだけ遅くなるかもしれない。
 

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