異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

逆鱗に触れる


『ちょっと魔王を助けてくる。予定通り時計塔の前で待っててくれ』 

 念話でみんなに伝えると、

『『『『『行ってらっしゃい!!』』』』』

 と軽い返事が返ってくる。

 誰からも心配する声は聞こえない。

 それだけ信頼されているということだろう。

「買い物に夢中なだけだと思うよ、先輩……」
「どうせ駆の婚約者が増えるだけなんだから心配するだけ無駄……」

 くっ、事実だけに何も言えねえ!?


『……本当に大丈夫かな? この人たち……』 

 フォルトゥナの心配を他所に、4人を乗せたフリューゲルは飛び続ける。


「ふんふふーん」
「ふふっ、ふふふ」

 それにしても、さっきから美琴と刹那がやけにご機嫌だ。良いことでもあったのだろうか?

 実は美琴と刹那は、フォルトゥナに運命の人を占ってもらっていたのだが……

『……占うまでもない……すぐ隣にいるわよ』

 と言われて超ご機嫌だった。

(やっぱり先輩が運命の人……ふふっ、でも良かった! 当たるまで占おうと思ってたから)
(ふふふ、やはり駆が運命の人……そうだとは薄々気付いてたけど、照れる……)

 うおっ!? 珍しい……美琴と刹那がこんなに積極的にくっついてくるなんて?

 でも、なんでフォルトゥナさんまで顔が赤いんだ?

(……どうしよう……私の運命の人もこの人なのよね……)

 フォルトゥナは熱い視線でカケルを見つめる。

『主よ……我もくっつきたいんだが?』 

 いや、お前とはくっついているだろ? 主に下半身が。

『…………』

 すまん……ちょっとデリカシーがなかったな。

 フリューゲルの背中にうつ伏せに寝転び、全身でフリューゲルと密着する。もちろん全裸で。ほほう……フリューゲルの背中モフ度はかなりのレベルだ。

 これを攻略出来るのは、俺かカタリナさん、ダークホースでセシリアさんぐらいの者だろう。

『は、はうううっ!? 主、それは駄目だ! 落ちる、堕ちるから!?』

「先輩……実は私もモフラーなんだよね」
「駆……私のモフに関する情熱を見せてあげる……」

 美琴と刹那もフリューゲルの背中に飛び込む。もちろん全裸だ。

「キャー! モフモフもふもふ……もっふもふ」
「……もふっ、もふっ、もふもふもふもふもふもふ……」

『み、美琴殿、刹那殿……そ、そんなに緩急をつけないでえええぇっ!?』 

 高レベルモフラー3人の前に、陥落寸前のフリューゲル。

(こ、これが私の運命だと言うの……)

 目の前の光景に怯えるフォルトゥナ。

「何してるの? ほら、フォルトゥナも早く脱いで……」
『ふぇっ!? せ、刹那? 脱がないといけないの?』
「……まったく、これだからモフ素人は……服を着たままどうやってもふもふを感じるというの? 私が納得出来るように説明出来る? 出来ないなら黙って脱ぐ!!!」

『う……それは……ごめんなさい』

 黙って全裸になるフォルトゥナ。

 自分以外全員裸の状況で、服を着続けられるほどフォルトゥナのメンタルは強くなかった。


(そうよ……これが運命なら、飛び込むしかないじゃない!)
 
 流されるまま長い年月を生きてきたが、本当の意味で生きてきたと胸を張って言えるのか? 自らの意志で運命に飛び込み人生を切り拓いてこそだ。

 フリューゲルの背中にダイブするフォルトゥナの表情は、まるで快晴の青空のように晴れ晴れとしていた。

『はううう!? フォルトゥナ殿、角度が……深い、深いイイイ!?』

 絶叫して堕ちてゆくフリューゲル。



『まったくフリューゲルのヤツは軟弱だな』

 フリューゲルに代わって飛行する暗黒竜クロドラ。

 嬉しそうに尻尾を振っているのが可愛い。
 
「悪いなクロドラ」
『ふん、ちょうど飛びたい気分だったのだ。運が良かったな!』


『カケルさん、暗黒竜には一枚だけ逆さに生えている鱗があるんですよ?』

 へえ、いわゆる逆鱗げきりんてヤツだな。ってフォルトゥナさん、近い近い、全裸で背中に抱き付かないで!? 成長が止まった慎ましやかな感触がヤバいから!?

「やっぱり、逆鱗に触れると怒るのかな?」
『いえ、逆鱗に触れるとよろこぶのよ勇者美琴』

「へ? どういう意味だ?」
『ふふっ、暗黒竜にとって、逆鱗は、とっても気持ちが良いらしいんです』

 こっそり耳打ちするフォルトゥナさん。これこれ! これぞ小悪魔!!!

「そ、そうか……ならば触れない訳にはいかないな、主として労ってやらないと……」
 
「先輩……顔がいやらしい。私がやるわ。乗せてもらっている御礼を兼ねて!」
「駄目よ。危険が無いとも限らない。まずは私が実験的に……」

『みんなで触れば良いじゃない! もたもたしていると目的地に着いちゃうわよ?』

 フォルトゥナの意見に一同頷くと、逆鱗を探す。

「あった……」

 確かに逆さ生えている50センチほどの鱗。

「クロドラ、ありがとう、今、気持ち良くしてやるからな?」
『ん? 何の話だ? 主よ?』

 感謝の気持ちを込めて、優しく労るように逆鱗に触れる。

『ひ、ひぃ!? な、何をした? あ、あああ!? だ、駄目だ、そこは敏感なのだ!?』

 経験したことのない快感に悶えるクロドラ。

 その反応が可愛いくて、4人の行為はヒートアップする。

『いやあああ!? 駄目、こんなの知らないからあああ!? 堪忍してくれえええ!?』


 クロドラの絶叫が大空に響き渡り……墜落した。


***


「あいたた……大丈夫? 刹那?」
「うーん、何とか無事。フォルトゥナは?」
『小悪魔を舐めないで、大丈夫よ』

 ちょっと調子に乗り過ぎたと反省しながら、起き上がる一同。


「どうやら目的地に到着したみたいだな……」

 俺たちの目の前には、侵入者を呑み込まんとするようにポッカリと口を開けるダンジョンが待ち受けていた。
 

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