異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
時計塔の悪魔
刹那によれば、呪い小路はかつての悪魔村ということになる。
当時から残っている数少ない手掛かりを訪ねない理由は無い。
果たして時計塔にはどんな秘密が隠されているのか? 胸がざわつく。嫌な予感がするのだ。
「お兄さんたちも時計塔? じゃあこっちに並んで!」
時計塔には長蛇の列が……
「先輩……もしかして知らなかったの?」
「駆……ここが一番人気の占い師の舘」
「…………」
ですよね〜、雰囲気のある時計塔だもんね! そりゃあそうだ。ハハハ……
「でも良かった! 私が行きたかったお店ここだし!」
そうか。それなら良かった。まさに一石二鳥という奴だな。
美琴たちによれば、ここの占い師の的中率は100%で、どんな探し物でも見つかるらしい。ふふふ、早くも解決したかもしれない。
「先輩、もう解決しちゃいそうだね」
「うん。ていうか、もともと解決したも同然だったから」
「……どういう意味だ刹那?」
「だって魔王は女だから」
「は? 刹那お前何言って――――」
「だよね〜! アイシャなんて、じゃあ魔王の部屋を用意しなきゃって言ってたし超ウケる」
何その魔王の部屋って? 怖いよ?
***
「次の方どうぞお入り下さい」
ようやく俺たちの順番となり、時計塔の中へと足を踏み入れる。
中は薄暗く、いかにも占いの館といった雰囲気だ。奥のテーブルには大きな水晶玉が置いてあり、ローブを深々と被った占い師が待ち構えていた。
『ようこそ……フォルトゥナの館へ。探し物はなんですか?』
「あれ? フォルトゥナじゃない……まだ生きてたんだ?」
『ふぇっ!? せ、刹那? あんたこそなんで生きてるのよ?』
「知り合いか? 刹那?」
「うん。当時はまだ乳臭い小娘だったけど」
『ちょっと、誰が乳臭い小娘よ!? 私だって成長しているんだからね!』
「ちなみにどのあたりが……?」
『ち、ちょっと止めて揉まないで!? 嘘です、嘘をつきました。あんまり変わってないです……ごめんなさい』
刹那に全身チェックされて、ハァハァしているフォルトゥナ。褐色の肌に銀髪の美少女。800歳近いけど年齢は単なる数字だから!
「それにしても……先輩……」
「ああ、分かるぞ美琴……」
「「本当にガッカリだよ? 小悪魔要素ゼロだよね!!」」
フォルトゥナの種族は小悪魔。当然俺と美琴の期待は最高潮だったのに……翻弄されてみたかったのに……
『ええぇ……なんでそんなにガッカリしているのこの人たち。何? 私が悪いの!?』
「……フォルトゥナ様、次のお客様がお待ちです」
係の人が声をかけてくる。
しまった!? まさかの時間切れ!?
『はぁ……もう少ししたら休憩時間だから、2階で待ってなさい』
「ありがとう、フォルトゥナ」
『良いのよ、私にとっても大事な用みたいだしね?』
***
『それで要件は何かしら?』
お茶を入れながら尋ねるフォルトゥナ。
「……イヴリースの居場所を知りたい」
『っ!? 魔王さまの居場所を?』
フォルトゥナの顔色が変わる。
『……詳しく聞かせてもらっても良いかしら?』
***
『なるほどね……ふふっ、ふふふふふふ、あはははははは!!!』
説明を聞き終えると、フォルトゥナが突然笑い出した。
『ごめんなさい……あまりにも嬉しかったから。そう……ようやく役目から解放されるのね……』
彼女の目から零れ落ちる涙は、確かに数百年の時を感じさせる重く苦りきったものであった。
だが、泣き終えた彼女の表情は明るく晴れ晴れとしていて、思わず見惚れてしまうほど美しかった。って刹那痛い痛いつねらないで!?
フォルトゥナの話によると、刹那の言うとおり、建国王アルスは、やはりひとりで悪魔村へ戻って来たらしい。
『後で魔王さまを迎えに行くって言ってたのに、結局アルスさまは行かなかった』
建国王アルスは、そこから人が変わったように戦争に明け暮れるようになり、国土を広げていったが、最後は行方不明になってしまったらしい。
「それじゃあ、アルスがフォルトゥナに頼んだ役目って?」
『……アルスさまは、自分がおかしくなってしまった事に気付いていたの。だからそうなる前に私に魔王さまの居場所と鍵を託した』
フォルトゥナは悔しそうに鍵を取り出すと、話を続ける。
『私も魔王さまを助けてあげたかったけど……無理だったの。近づくことさえ出来なかった』
魔王イヴリースが居る場所に近づくためには、規格外の力が必要だった。
鍵の力によって老化が止まったフォルトゥナは、ここで占い師を続けながら、規格外の英雄を待ち続けていたのだ。
アルスが戻って来たのも、本来は、異世界の英雄を探し出し、魔王イヴリースを助けに戻るためだったらしい。
「先輩……これって?」
「ああ、間違いない。邪神の因子の仕業だろうな」
「ということは……イヴリースは……まさか……未だに助けを待っているの?」
刹那が青くなって震える。
刹那が眠りについてから、少なくとも800年近く経っている。
やっと違和感の正体が分かった。
アルカリーゼ王家にかけられた呪いから感じたのは、強い恨みや憎しみの感情ではなく、助けを求めるようなものだった。
なぜ助けに来てくれないのか? どうか気付いて欲しい。強い願いが年月とともに呪いへと変化していったのだろう。
『お願いします。異世界人の貴方がたなら出来る。どうか魔王さまを助けてあげて下さい……』
頭を下げるフォルトゥナ。
「フォルトゥナさん、任せてくれ。全部まとめて必ず救ってやる。だって俺は英雄なんだから」
「私だって勇者なんだから、魔王を救うのは勇者の役目……あれ?」
「私がもう少し起きていれば……」
「刹那は何も悪くない……」
落ち込む刹那を強く抱きしめる。
悪いのは全部、深海幻の野郎だ。いつか絶対にぶっ飛ばしてやるからな。
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