異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
呪い小路へ
「ナイトさま〜! こっちのお店も素敵ですよ〜!」
ノスタルジアが手を振りながら走ってくる。
今日は、魔王の手掛かりを探すため、みんなで呪い小路へ向かっている。
問題は、宿屋から呪い小路へ行くためには繁華街を通らなければならず、初めての王都散策となるノスタルジアには、少々刺激が強すぎることだろうか。
寄り道しまくっているので中々進まないけど、呪いのせいでずっと外に出ることも出来なかったんだから、これからは思い切り楽しんで欲しい。
「じゃあちょっと寄ってみるか?」
別に急いでいるわけでもないしな。
「本当ですか? ナイトさま……大好きです!」
嬉しそうなノスタルジアの姿を、みんなも温かい視線で見守っている。
「えへへへ……貴方様」
「うふふ……貴方様」
一方で、俺にベッタリの双子の王女さまには厳しいジト目を浴びせているが、当人たちはまるで意に介していない。さすが最古参メンバーだ。
「くっ、シルフィたちめ、まるで恋人気取りではないか……」
セレスティーナ……まるでじゃなくて、婚約者なんだが。
「く、クロエ……カケル様ってそんなに凄いの?」
「へ? は、はい……それはもう……凄いです」
真っ赤な顔で尋ねるクラウディアにもっと赤くなるクロエ。
止めて!? 街中ですよ? 本人の前で何言ってんの!?
『…………』
それよりもマズいな……ミヅハが今朝から一言も口を利いてくれない。これはあれだな。他の精霊に先を越されて拗ねているのだろうか?
(……お兄様が困ってらっしゃる……)
でも……何だか面白くないのです。まったくお兄様ったら……大っ嫌い……嘘です大好きです。困らせるつもりはないのですが、モヤモヤが消えないのです。
(ミヅハ、俺は妹として3本の指に入るほどお前のことが大好きだぞ。四天王超えの三銃士だ)
(お兄様……そもそも妹は3人しか居ないのですが?)
(くっ、確かに……)
まったくお兄様ったら、褒める気があるのでしょうか? でも大好きって……ふふっ。
(ミヅハは俺が一番好きな水の超精霊だからな!)
(……お兄様? 水の超精霊は私しか居ないのですが?)
(くっ……そうだったな……)
まったくまったくお兄様は本当に正直者なんですから……そうですか一番好きですか……ふふふ。
(でもな、俺とお前は一心同体なんだから、嫉妬する必要なんてないんだぞ? ミヅハのことは、自分自身と同じぐらい大事に思っているんだ)
(なるほど、これが嫉妬と言うものですか。ですがお兄様はあまり御自身を大事にされていないではありませんか!)
(うっ、確かにな。訂正だ。自分自身よりも大事に思っている)
……私は悪い妹ですね。お兄様のお気持ちすべて分かっているのに、まだ欲しがるなんて……言葉にして欲しいと願うなんて。でも……大事に思っているですかそうですか……ふふふ。
(ミヅハ……いつも甘えてばかりでごめんな。分かっていても、言葉にしないと伝わらないこともあるよな)
(お兄様……)
(ミヅハ、控えめに言っても愛してるよ)
………………いやああああああああああああ!?
あ、ああああああ愛してる? お兄様が私を? 私も愛しております。愛してます愛してます愛してます愛してます…………
(お、おい……ミヅハ?)
「貴方様!? 何だか熱いのですが!?」
「本当だ……あ、熱っ!?」
いかん、ミヅハが沸騰している。
このままでは街が大惨事に……
『お、おいシズク! ちょっと出てきてくれ!』
水の精霊ウンディーネのシズクを召喚する。
『はいはーい! なあに? オジサマ?』
「悪いな、ミヅハが暴走したんだが、止めてくれないか?」
『いや、無理だから!? 津波に水鉄砲で立ち向かうようなもんだから!?』
なるほど駄目か……仕方ない。
『ふぇっ!? お、オジサマ?』
シズクを抱きしめて撫で撫でする。
お? 少し反応があった。もうひと押しだな。
『ナギ、ホムラ、ちょっと出てきてくれ』
『ふふっ、貴方様〜大好き〜』
『なんだ? もう我が恋しくなったのか? しょうがない貴方様だな』
『『ふぇっ!? そんないきなり!?』』
ナギとホムラも加えて精霊3体をミヅハに見せつけるように愛でる。
すると効果てきめん、周囲の温度が急激に下がってゆく。
『お、お兄様……私は一体……』
おお……正気に戻ったようだ。良かった、これで街も救われ……あれ? さ、寒い!?
『お兄様……いつまでイチャついているのですか……』
その日、王都では季節はずれの積雪があったという。
***
呪い小路は、王都アルカディアの北側に位置しており、馬車で通れないほど狭く入り組んだ小路が中心となっているエリアだ。
かつて王家に助言を与えていた占い師が住んでいたことから、次第に世界中から占い師が集まるようになり、その腕を競っている。
魔術師や錬金術師たちが住み着くようになると、彼らを顧客とした魔道具店などの専門店も増えてゆく。
今や、呪い小路は、占いだけでなく、魔術や錬金術の街としての顔も持っているのだ。
ちなみに、魔術師ギルドや錬金術ギルドもこのエリアにあったりする。
「ここが呪い小路か……すごい人だな」
有名な占い師の店には長蛇の列が出来ている。
「やっぱり異世界でも女性は占いとか好きなんだね〜、私もドキワクだよ!」
瞳をキラキラさせる美琴。だがな、お前には残念なお知らせがある。
「美琴、お前は占いしている暇はないぞ?」
「は? なんで!?」
「お前は俺と一緒に魔王の手掛かりを探すんだ。刹那もな?」
「へ? わ、私も? そ、そんな……」
崩れ落ちる美琴と刹那。……そんなに楽しみにしていたのか……二人とも。
「では旦那様、また後で!」
「貴方様、頑張ってくださいね!」
「ナイトさまスイマセン。私だけ楽しんで」
みんなウッキウキで街へ繰り出して行った。
「ううう……酷いよ先輩」
いや、本来魔王はお前の担当じゃないのか?
「駆……これはもしや調査を口実にしたデート?」
いや、調査ですけど!?
「でも、せっかくだから、楽しみながら調査しような?」
「本当!? じゃあ先輩、行きたいお店が……」
「駄目だ、行く場所は決まっている」
「駆……それってもしかして?」
「ああ、古い時計塔だ」
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