異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
海賊国家キャメロニア
「私はフローネといいます。お願いします。私たちを助けて下さい!!」
エメラルドグリーンの瞳から涙を流しながら訴えかけるフローネ。
「あれあれ? こういうのって、全部先輩だと思ってたんだけど?」
「すごいわね貴方様……もはや間接的に女性を落とすようになってきたのね……」
またカケルが進化したことに、シルフィが戦慄する。
「ダーリンのことじゃから、すでに助けに行っているかも知れんぞ?」
「たしかに……貴方様ならあり得る」
エヴァの言葉にサラが同意すると、一同納得して笑い出す。
***
「それは何とか助けてあげたいですね」
フローネの話を聞き、サクラが許せないとばかりに立ち上がると、皆同じように頷く。
「なるほど……エメロードラグーンはおとぎ話だと思っていました……」
エメロードラグーンは、異世界人が世界中を巡った旅行記に登場する国として一部に知られている。
異世界オタクのユステティア、セレスティーナ、ソフィアたちはもちろん、全員が、行ってみたいと目をキラキラさせている。
「しかし、一体どこの国が……?」
基本的に、この世界の航海技術や造船技術のレベルは低い。
内陸の国は論外として、海に接しているアルカリーゼですら、沿岸の航行に留まっていて、遠く外海まで船団を派遣する力はない。
となると――――
『え? ち、違います、私たちじゃないですよ!?』
みんなの視線が、アリーセやソニアたち、魔人帝国の面々に集まり、慌てて否定するアリーセ。
「は、はい、エメロードラグーンにやってきたのは、赤毛の人族でした……」
「赤毛だと……?」
「え? いや私関係ないよ!? ほら、オレンジも入ってるし、そもそも炎の精霊の加護のせいだから!? もともとは金髪だよ!?」
みなの視線を受けて、サラが慌てて否定する。
「赤毛となると、キャメロニアか?」
セレスティーナが難しい顔でつぶやく。
「キャメロニアって?」
「遥か北方の海にある島国よ、ソフィア」
さすが商業国家の公女であるクラウディアは知っていたが、普通の人々にはあまり馴染みの無い国だ。
「私も直接会ったことは無いが、キャメロニアの国民は赤毛が多いと聞いたことがある。そうですよねお姉様?」
「ああ、とても好戦的で海賊まがいの行為を繰り返していると聞いている。フローネ、連中の船に鷲の紋章が付いていなかったか?」
フローネに確認するユステティア。
「は、はい、翼を広げた鷲の紋章がありました」
「とりあえず、キャメロニアの仕業で間違いなさそうですね。御主兄様に連絡を取ってみましょう」
クロエの言葉にみな大きく頷く。
フローネは、もう解決したかのような彼女たちの様子に戸惑い、つい興味本位で聞いてしまった。
「あ、あの……その御主兄様というのはどんな方なのでしょうか?」
フローネは直後に後悔したが、もう遅い。
目の色を変えた女性たちに、延々とカケルの自慢話や、惚気話を聞かされる羽目に。
(……だ、誰か助けて!?)
再び助けを求めるが、ここにはフローネの味方はいなかった。
***
(フローネは、無事東の国へ辿り着いたでしょうか……)
ナディアは海賊団の牢屋の中で可愛い妹分を想う。
海賊団だと思っていた連中は、エメロードラグーンを襲った連中の仲間だったのだ。
こんなところまで奴等の勢力圏なのだとすれば、もはや助かる道など、すでに無かったのかも知れない。
ならば、せめてフローネだけでも逃げて欲しい。
自分はもうすぐ本国へ移送されて、奴隷として売られるのだと言う。
幸い、高価で取引される商品ということで、手出しはされていないが、近い将来に待ち受ける過酷な運命を思うと絶望に震えるしかない。
(何としても逃げ出さないと……)
この島には、他にも捕らえられている人々がいる。もしかしたら、その人たちが、エメロードラグーンを取り戻す力になってくれるかも知れない以上、力を合わせて脱出した方が良い。
『魅惑の歌声』
もともと半魚人族の歌声には魅了効果があると云われているが、ナディアのスキルによって強化された歌声は、サキュバス以上の力がある。
見張りの看守は、あっという間に魅了され、鍵を開けてしまった。
『魅惑の子守歌』
看守を眠らせたナディアは、鍵束を奪って、他の牢屋の鍵を開けてゆく。
「すまない、助かったよ」
囚われていた人たちが次々と出てくる。
「急いで下さい。看守が交代するまで30分しかありません」
ナディアは、看守のローテーションを把握した上で、行動を起こしていた。それまでに脱出する必要があるのだ。正直時間がない。
まずは、没収されていた装備を取り戻さないといけない。だが――――
「おい、誰か来るぞ!?」
「そんな……まだ交代の時間じゃないのに」
「私に任せて下さい!」
ナディアが前に出る。
『魅惑の子守歌!!』
猛り狂っている魔物すら眠らせるナディアの切り札。
だが―――――
「そ、そんな……嘘……」
その人物は何事もないように歩いてきた。もはや打つ手はない。
救いは、相手がひとりだということ、武器を持たず丸腰のようだということだが……
「だ、駄目だ……勝てる気がしない……」
代表団の護衛役の騎士が震えながら弱気を吐く。
ナディアたちの脳裏に絶望の2文字が浮かんだ瞬間、やってきた男が口を開いた。
「俺はカケル。みなさんを助けに来ました」
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