異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
呪われた王家
ミヤビとイチャイチャ……いや拘束しながら王宮へ向かう。
王宮ならば何処からでも見えるかと思ったが、王都の建物は基本的に3階建てで、道幅が狭く密集しており、開けた場所でないと全く見えない。
道もクネクネしていて一貫性が無く、方向感覚を狂わせる。これじゃあ王都初心者は確実に迷うだろうな。
そのためか、道の分岐点には大抵衛兵が立っていて、親切に道案内をしている。
一瞬みんなは大丈夫かな、と心配になったが、現地に詳しいセレスティーナたちが一緒だから特に問題無いだろう。
問題は、みんな可愛いからナンパが心配だけど、眷族となったクロエ単体でも王都を制圧可能な戦力。うん……杞憂だな。
「ふふっ、カケル殿、そんな強く抱きしめなくても、何処へも行ったりしませんよ?」
照れながら顔を桜色に上気させるミヤビ。
うん……めちゃくちゃ可愛いんだけど、自由にすると攻撃してくるからな、この人。
「……実は、王宮に行く前に話しておかなければならない事があります」
王宮が見えてきた頃、一転して真剣な表情に変わるミヤビ。
「……この遮音結界の中ならば聞かれる心配もないから大丈夫だ」
「ありがとうございます。何処から話せば良いか……」
少し迷うように口籠るが、決心したように言葉を続ける。
「カケル殿、アルカリーゼ王家はもうすぐ終わります」
アルカリーゼ王家が終わる? 想像もしていなかった告白に、意味を掴みかねるカケルであった。
***
「……遅いな。カケル殿は本当に今日の昼にくるのだな?」
アルカリーゼ国王レイ=アルカリーゼが待ちかねたように宰相のベルゼに問う。
「はい、確かにミヤビ殿からそのように……」
「ふむ、ならばもう少し待つとしよう。リンネ、薬を」
「は、陛下、どうぞ」
(もう余り時間は残されていないか……)
すまんな、カケル殿。初対面で、いきなり迷惑をかけてしまいそうだ。
国王レイは深いため息をつく。
「陛下!! カケル様、ミヤビ様、到着にございます」
「おおっ!! 来たか。構わない、直ぐに通せ」
待ちわびたカケルの到着に歓喜する国王。
さて……噂の英雄殿は、どんな男だろうか?
2メートル以上ある武器を軽々と使いこなすオーガのような……いやいや、それではモテまくるはずは無いか……まあよい、直に会えるのだから。
考えることを止めて、カケルたちを待ち受ける国王レイの瞳は、少年のようにキラキラ輝いていた。
***
「お初にお目にかかります。異世界人でワタノハラ子爵のカケルです。アストレア、アルゴノート、クリスタリア各国の公爵位も頂戴しております」
他国の爵位なんて言わなくても良いんだが、ミヤビが言えとうるさいので、仕方なく名乗る。
「おおっ、そなたがカケル殿か! よくぞ参った。よし、カケル殿はミヤビの夫として今日からワタノハラ公爵を名乗ることを許可する」
王の発言に王宮がどよめく。
新しい公爵家の誕生は実に百年振りのことだから当然だ。
ミヤビがしてやったりって顔をしているから、わざと煽ったんだろうな。
「ありがとうございます、陛下。謹んでお受け致します」
「うむ、期待しているぞ。プリメーラ及びエスペランサでの功績、犯罪組織の摘発、そしてスタンピードの鎮圧見事であった。恩賞は後日必ず渡すと約束しよう」
「有難き幸せ。ご挨拶が遅くなり申し訳ありませんでした」
「よいよい、それでな、折り入ってカケル殿に相談があるのだ」
「かしこまりました。ですが、その前に――――」
『転移!』『デスサイズ!』
『ぎゃああああああ!?』
宰相ベルゼの背後に転移し、デスサイズで一刀両断するカケル。
余りの速さと予想外の出来事に誰も反応出来ず、みな茫然としている。
「か、カケル殿、これは一体?」
かろうじてミヤビが我に返ると、倒れている宰相に傷が無いことに驚く。
「驚かせてすみません。宰相が悪魔に操られていたので、開放しました」
「あ、悪魔だと……やはり呪いが……」
ざわめく高位貴族たち。
「とりあえず、話を聞かせてください」
青ざめている王をうながして、謁見の間の奥にある王の私室へ移動する。
***
「先程の件、感謝する。まさか宰相が悪魔に……」
「いえ、巧妙に偽装されていましたから、気付かなくて当然です」
なんせ鑑定スキルでも分からないレベルだ。進化していなかったら分からなかったかもしれない。
残念ながら、本体ではないので召喚魔には出来なかったが、一瞬だけ本体との繋がりがあったので、収穫が無かったわけではない。『悪魔感知』もゲットしたしな。
しかし悪魔か……ミヤビに聞いた時は半信半疑だったけど、本当にいるんだな。まあ神や精霊がいるんだからいてもおかしくないけど。
「カケル殿は、どこまで御存じなのだ、ミヤビ?」
「私が知る部分についてはすべて話してあります」
「そうか……繰り返しになるかもしれないが、我がアルカリーゼ王家は魔王によって呪われているのだ。かつて勇者と共に魔王を封印した初代国王アルスにかけられた呪いは、代を重ねるごとにその強さを増し、子孫を苦しめ続けている」
現国王レイは、まだ40代にも関わらず、頬はこけ、病的に痩せている。見た目はすでに老人のようだ。このままでは、長くは生きられないだろう。
さて、どうしたものかな。カケルは思案しながら国王の話を聞くのだった。
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