異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

ロストテクノロジー

「まったく……いい? この秘密は墓場まで持っていくの! わかった?」

 ようやく少し落ち着いた白崎さんが、頭を揺さぶるのを止めてくれた。ちょっと酔ったかも。

「はいはい、そもそもそんなに嫌なら置いておかなければよかったのに……」

「嫌では……ない。ただ恥ずかしかっただけ。天才の私でも分からなかったこの気持ちの正体、駆は知ってる?」

「この気持ちって、会えて嬉しいとか一緒に居たいとか、抱きしめたいとか……キスしたい、とか?」

「う……最後の方は……その……うん」

「そうだな……無理に言葉にしなくてもいいんじゃないかな? したいようにすればいい。せっかく異世界に来たんだしな」

「うん、そうだね。そうしてみる。じゃあ早速リトライ!」

「ん?」 

「酷い……ほんと駆は言わないとわからないの―――ん……」

 白崎さんの口をふさいで優しく抱きしめる。

「不意打ち……ずるい」


 
 誰の邪魔も入らない幸せな時間が穏やかに過ぎてゆく。


「なあ、時間が出来たらこっちの世界に作ってみないか? ネズミーランド」

「それいいかも!! 私のスキルなら多分出来る」

 白崎さんのユニークスキル『机上の空論』は、理論上可能であれば、実現できてしまう規格外のスキルだ。材料さえあれば具現化可能とかどうなってんの?


「よし、白崎さん、土地も金も問題ないし、世界が落ち着いたら絶対2人の夢の国作ろうな」

「うん、だけど……その白崎さんって呼び方……」

「え? 駄目か?」

「駄目……刹那って呼んで」

「わかった……刹那」

「ふふっ、なんか良い」

 良い雰囲気になったので、とりあえずしばらく2人でイチャイチャした。

 
「ところで……世界がどんな感じになってるのか気になる。それと駆の現状も……」

 刹那の疑問はごもっともなんだけど、すでにジト目なのはなぜだ!? 

 まさかすでに予想済み? さすがは天才。じゃあ説明しなくても……え? 駄目?

 
 はい、説明させられましたよ。全部。こと細かくね。さすがは研究者、容赦が無い。



「……現状は把握した。何か言い残したことは?」

 なんでそんな死刑宣告みたいな感じになってるの? 怖いよ刹那!?

「……ありません」


「そう。なら今度は私。現状身寄りがなく、知り合いもいない」

 そりゃそうだな。知り合いなんて、みんなとっくに死んでいるだろう。

「今の世界で使えるお金も持っていない」

 刹那のお金は古過ぎて使えないけど、骨董的な価値はありそうだけどな。金貨は鋳潰せるし。

「さて……そんな私はどうすればいいと思う?」

 刹那の期待のこもった眼差し。


 そんなの俺の答えは決まっている。


「刹那、俺のお嫁さんになって共に生きてくれないか? そして一緒に暮らそう」


「…………うん。私でよければ」

 その屈託のない笑顔と綺麗な涙に俺はまた見惚れてしまった。

 今度は間違えない。その手は絶対に離さないから。


***


「お久しぶりです、マスター白崎。お元気そうでなにより」

「増太郎、お疲れ。これからも頑張って」

 ええっ!? それだけ? ちょっと可哀想じゃないか?

「刹那、増太郎さんも大変だから、交代要員作ってあげたら?」

「……なぜ?」

 心底意味がわからないといった表情の刹那。そういえば昔から俺以外の人間にはこんな感じだったな。

「刹那がなまじ感情を与えたせいでストレスが溜まるらしいんだ」

「なるほど。駆がそう言うならそうする」

『机上の空論!! 出でよ増次郎!!』

 刹那のスキルにより、もう1体のオートマタが誕生した。

 これなら交代制にも出来るし、話し相手にもなる。


「ありがとう、ミスターカケル。何もお礼は出来ないが、いつでもダンジョンに歓迎するよ」

「どういたしまして。部屋の片付けはまた今度あらためて来ますね!」

 増太郎さんはすごく喜んでくれた。うんうん、本当に良かった。



「じゃあ刹那、みんな待ってるから行こうか」   

 増太郎さんと別れてダンジョンを出ることにする。

「ふーん、そんなに早く他の婚約者に会いたいんだ?」

 ちょっとふくれて見せる刹那。感情表現は薄いけど、今なら彼女の気持ちが良く分かる。


「馬鹿だな。自慢の刹那を早く紹介したいからに決まってるだろ?」

「ふ、ふーん、ならそういうことにしておいてあげる」

 満更でもなさそうな刹那が可愛くて仕方ない。


「刹那、ちょっと寄り道して行こうか? もう少し2人きりでいたいからさ」

「うん、私も。そうだ! ねえ駆、デザートが食べたい。この世界そういうの全然なくて……良いお店ないかな?」

「残念だけど、そっち方面は進歩無しだ。でも俺が作ったデザートは美味いぞ」


 2人でカケルノセレスティーナ城の屋根の上で手作りプリンとソフトクリームを食べる。

「……美味しい」

「だろ? 自信作なんだぜ」

「そうだ、私がソフトクリーム製造機作ってあげる」

「マジで? それならついでに冷蔵庫も作って欲しいな~なんて」

 刹那がいれば大抵のものは作れる。夢が広がるな。

「……ちょっと待って、冷蔵庫無いの? 私が昔作ったはずなんだけど?」

「無いな」

「通話の魔道具は? 飛行艇は? 印刷の魔道具は? 魔導列車は?」

「ああ……言いにくいんだが、お前の作った魔道具、大半はロストテクノロジー扱いになってるぞ」
 
「そんな……もしかして文明退化してる!?」

 愕然とする刹那だったが、その表情は明るく楽しそうだ。


「でも……今度は駆と一緒に生きていけるんだから、それだけで良い」

「刹那……って寝てる!?」

 そりゃそうか……800年近く寝ていたんだから。反動も大きいよな。


 寝顔を眺めながらサラサラの白髪をそっと撫でる。

(ありがとな刹那……俺を待っていてくれて)


*********************
【 登場ヒロイン名鑑 】

【名 前】 白崎 刹那《しらさき せつな》
【種 族】 人族
【年 齢】 27
【その他】 史上最高の錬金術師・天才科学者 

 史上最年少でヌーベル賞を受賞した天才ロボット工学者。同じ年の天才同士、カケルとは幼いころから接点があった。生まれつき色素が薄く白髪にグレーの瞳をしている。日本にいた時はカケル以外の他人との交流を嫌い、ほぼ研究所に引き籠っていた。飛行機事故を機に異世界に行き、カケルと再会するために研究を続け、800年近い年月を休眠状態で待ち続けた。肉体年齢が当時のままなのは、転移してすぐダンジョンマスターとなり老化を止めたから。理論を現実化できる【机上の空論】というユニークスキルをもつ。 


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