異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

天才の遺産

「では参りましょうか? ダンジョン内転移!」

『ダンジョン内転移を記憶しましたね』 

 ダンジョンマスターの増太郎さんがダンジョン内転移を発動する。

 そして俺はダンジョン内転移を記憶した。

 それは良いのだが、今、記憶しましたって言ったよね!? え? どういうこと!?

 動揺する俺を気にする様子もなく、増太郎さんは不思議な光沢のある金属で出来た通路を歩いてゆく。

 不思議な金属を鑑定すると

『シラサ金属』

 白崎刹那が創り出した合金。魔力を吸収し、蓄える性質を持つ。

 なるほど、白崎さんが創り出した金属ね。

 ネーミングセンスが実に白崎さんらしい。


「着いたよ、ここがの館だ」

「……何で急に言い換えたんです? ダンジョンマスター」 

「何となくかな? さ、入ってくれたまえ」

 中に入ると、そこは完全に研究所だった。

 まさに触るな危険な世界で、怪しい機器や液体が所狭しと並んでおり、うかつに歩き回ることも出来ない。


「ちょっとは片付けた方が良いんじゃないですか?」 

「触ったり、動かしたりするとマスターに怒られるから無理だね」

 どうやら勝手に動かせないようにプログラムされているらしい。

 そういえば俺も昔、白崎さんに怒られたなあと苦笑いする。

「まさかとは思いますけど、これを片付けるために俺を呼んだんですか?」

「それこそまさか! だけど、言われてみれば良いアイデアだね。後で頼むよ」

「まあ、それぐらい構いませんけど……なら呼んだ理由は何ですか?」 


「……実は、先日ミスターカケルをお友達登録した直後に新たな部屋が開放されたんだけど……入れなくてね」

「ダンジョンマスターが入れない部屋なんてあるんですね……」 

「おそらくマスター白崎の私室だと思われます」

「なるほど……俺をお友達登録した直後であることを考えて、何か関係があるんじゃないかと思ったんですね?」

「ノー、理由は見れば分かるよ」

 案内された部屋の入口には、普通に大海原駆以外入室を禁ずると書いてあった。

 何コレ? 何で俺限定? 

 第一、俺そんなに白崎さんと仲良かった記憶ないんだけど……いやまて、白崎さんに他に友達がいなかった可能性も。そういえば俺以外の奴と話しているのを見たこと無いな……うっ、涙が。

「………どうしました? なぜ突然泣いているのです?」

「な、何でもないです。とりあえず、中を調べれば良いですか?」

「イエス、そうしてもらえると助かります」

 増太郎さんのキャラがコロコロ変わるのは気になるけど、きっと一人で何役もやって長年孤独に耐えて来たのだろう。うっ、また涙が……

「大丈夫ですか、ミスターカケル。情緒不安定ですね。お茶でもいかがです?」

「ありがとう、でもみんなを待たせてるし、とりあえず行ってみます!」


 部屋の入口に立つと、生体認証が作動する。

『大海原駆と認識しました。どうぞお入りください』

 どうやら無事認証されたようだ。まずはひと安心。

 最初の部屋にあるモニターに文字が浮かび上がる。

『大海原駆、よく来たね。ここに入れたと言うことは、限りなく本物だと思うけど、スキルのあるこの世界、油断は出来ない。パスワードを入力して』 

 そんなメッセージの後に浮かび上がる15個の数字列。

 最初と最後の数字以外を入力すれば良いのか……これは確かに本人しか分からないな。

 俺たちが所属していた研究機関の識別番号。最初と最後だけは同じだからわかったけど、白崎さん、よく俺の識別番号覚えていたな!?

 その事実に驚きながらパスワードを入力すると、

『おめでとう! 大海原駆。君は私の残したプレゼントを受け取る義務がある。次の部屋へ進みたまえ』

 そこは権利じゃないのかとツッコみながら、次の部屋へ進む。


 次の部屋にある机には1冊のノートが置いてあり、モニターに文字が浮かび上がる。

『疑り深くて済まないが、科学とは疑うことから始まるのだ。ノートを完成させなさい』

 ノートを完成させる? 

 中を見ると、白崎さんが書いていた論文のノートだ。

 俺も読んだことがあるので、見たことがあるし内容は記憶している。

 早速取り掛かったが――――

 おかしい……一字一句間違いない。足りない部分などないのだ。

 そもそも、このノートはオリジナルの物だし、完成も何もない気がするのだが。

(質問してみるか……)

 モニターに質問を入力してみる。

 もし、間違えた場合どうなるのか? と入力すると、

『規定回数以上間違えるとこの部屋ごとダンジョンが消滅する』

 え? なにそれヤバいな。規定回数が複数ならいいが、1回の可能性もゼロでは無い。


 さんざん悩んでノートを挿入口にそのまま入れた。

 すでに完成しているという意味だ。このノートがオリジナルであることは俺しか知らないし、内容が間違っているかどうかも俺しか知らない。つまりそういうことなのだろう。

 しかし――――

『ぶっぶー! 課題失敗。残り規定回数999万999回』 

 挿入口からノートが排出される。

 間違っていた。だけど規定回数はめっちゃ安心だった。

 だからといって状況が良くなったわけではないけれど。


 はたして課題を達成することはできるのだろうか。

 俺は頭を悩ませるのだった。

「異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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