異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

神級結界

『デスサイズ展開!!』 

 キリハさんのデスサイズが一段と大きくなる。すげえ格好良い!!

『座標指定、空間固定、神級結界展開開始、結界内浄化開始……』

 凄まじいスピードで結界を構築してゆくキリハさん。嫌がるのも分かるよ、確かにこれは大変だ。

 
 そして、キリハさんが最後に巨大化したデスサイズを振るうと聖地全体が淡い光に包まれる。


結界展開完了コンプリート!!!』


 これは……空間がズレたのか?

 デスサイズによって生まれた僅かな刃一枚分の空間のズレ。

 これによって誰も入れないし、出ることも出来ない。すごいな……これが神級の結界か。



『ふぅ……何とか上手くいったみたいね……』

 汗を拭う仕草をしているが、実際は汗一つかいていない。様式美なのだろう。

「キリハさん、お疲れ様でした。あの……聖地にいた邪神の因子はどうなるんですか?」 

『そうね……100年ぐらい放置すれば浄化されて消えるわよ』

「ひ、100年ですか……だったらキリハさんが倒したほうが早いんじゃないんですか?」

『バカね、ノコノコあそこに入ったら、邪神のところに引きずり込まれるわよ? そういう意味では、あんたもなかなか良い判断したじゃない』 

 げっ、やっぱり危なかったんだ……事前に話を聞いていなかったら本気でヤバかった。


『そんなことより……もう良いわよ?』

 ん? 何が良いのだろう? くっ、俺も心が読めたら良いのに……

『……あんた、絶対わざとでしょ? すぐそうやって死神をからかう―――ふえっ!?』

 キリハさんをぎゅっと抱きしめる。神級スキル並行動作のおかげだね。

『な、何よ……やっぱりわかってたんじゃない! でも……ミコト先輩の代わりっていうのもなんか切ないわね……』

 最後のつぶやきはカケルにも聞こえないほど小さく、キリハの心の中に消えて行った。


『ち、ちょっとあんた、良く聞きなさいよ! いい? しょうがないから、私があんたの―――』

「あ、すいません。通信が入ってしまったみたいで……」

『げっ、まさかイリゼ様? ち、ちゃんとやったって言うのよ? わかった?』

 戦々恐々のキリハさん。大丈夫ですよ、目一杯褒めまくりますから。


『はい、もしもし? えっ!? ミコトさん? え? キリハさんで疑似ミコトプレイをしていただろうって? なんでそれを……えっ、キリハさんに代わるんですか? 分かりました』

「キリハさん、ミコトさんが代わってくれって』

『え? ほ、本当? やった!! 憧れのミコト先輩とお話が出来るなんて……』

 緊張でそわそわしているキリハさんにデスサイズ型ケータイを渡す。



『はいはーい、キリハです! ミコト先輩、いつも憧れてました!!』
 
『キリハ……カケルと2人で会ってるんだ?』

 ミコト先輩の氷点下の声に全身が凍りつく。

『ひ、ひぃっ!? す、すいません、あ、あのこれは不可抗力で……』  

『別に構わない……で、惚れたね? カケルに』

 ミコト先輩の絶対零度の声に魂まで凍りついた。

『ひ、ひぃぃぃ!? すみませんすみませんすみません……』

『別に構わない……カケルに会って惚れないのは不可能だから』

 ミコト先輩の自慢げで嬉しそうな声に救われた気がした。

『え……良いんですか? あ、ありがとうございます!』

『うん……だから協力して、キリハ』

 結局ミコト先輩のお願いには従うという選択肢しかないのだ。だってイリゼ様だって断れないんだよ? 無理無理。


***
   

 なんか随分と話しこんでいるなあの2人……あっ、終わったみたいだな。


『……おまたせ、カケル』

 銀色の髪が風になびいてさらさらと心地よい音色を奏でる。その真紅の双瞳は熱を帯び俺を捉えて離さない。

「ミコト……さん?」

 そこにいるのは確かにキリハさんのはずなのに……その表情、声のトーン、俺じゃないと分からないぐらいの微笑みも……全部……全部ミコトさんだ。

 もう何も考えられない……何でとか、どうしてとかどうでもいい。

 ミコトさんがここにいる。

 手を伸ばせば触れられる距離にいる。

 触れたい抱きしめたいキスしたい耳元でミコトさんの声を聞かせて欲しい。

「ミコトさんミコトさんミコトさん……」

 自分でも何言ってんのかわからないけど、それしか言葉が出ないんだ。

『ふふっ、カケル……やっと触れられた……やっと』

 ミコトさんが優しく俺の髪を撫でると涙が止まらなくなる。

 

 わずか数秒だったけど、たしかにミコトさんはそこにいたんだ。


『……良かったわね、ミコト先輩に逢えて。感謝しなさいよ? あれ命懸けなんだから……』

「……ありがとうございます、キリハさん。でも……大丈夫ですか?」

 だって、キリハさん……辛そうに泣いているから。

『さあ? 知らないわよ。多分無理したから副作用じゃないの……じゃあ私は戻るわね』 

 そう言ってキリハさんは空間に溶けるように消えて行った。



***


『キリハ、結界の件ありがとう。助かったわ』

 神界ではイリゼがキリハの戻りを待ち構えていた。

 通常イリゼがこんな場所に来ることなど無いのだが。

 慌ててひれ伏すキリハ。

『い、イリゼ様!? わ、わざわざありがとうございます』 

 しかも初めてねぎらいの言葉までもらい、キリハは正直嬉しさより困惑の気持ちの方が強かった。


『ふふふ、キリハもやっぱり女の子なんだね? 悔しかったら泣いてもいいんだよ……』

 思いがけないイリゼの言葉にキリハの押さえつけていた感情が溢れ出す。

『ふ、ふええええん……羨ましいんです……あんなに……私もあんな風になりたいんです……』

 カケルとミコトの絆をその身体でその心で感じてしまったキリハ。

 自分でもどういう感情なのか分からない。ただ涙が止まらないのだ。

『うんうん、大丈夫、キリハは可愛いんだから。頑張って疑似ミコちんになるんだよ』

『え……やっぱりそうなりますかね!? いやあああああ!?』

 
 何事も諦めが肝心。精進あるのみよ、とイリゼは優しくキリハを見守るのだった。
  


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品