異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

御前試合

 御前試合は、年に一度執り行われる順位入れ替え戦だ。

 国民の娯楽の一環としてコロシアムで毎週開催される公式戦とは異なり、観客は皇帝をはじめとした貴族と関係者のみ。

 非公開の真剣勝負の場だ。

 この戦いの結果がそのまま官位に直結するとあって、現在のナンバーズは更に上の順位を目指し、それ以外のものは、今年こそナンバーズに入ろうと燃えている。

 そして、そんな伝統の御前試合に、今年は見知らぬ黒髪の人間が急遽飛び入りで参加していた。

 過去に人間が参加した例はもちろんあるが、そもそも滅多に無いことなので、参加者の注目は否が応にもその人間に集まっていたが、物珍しさ以上にその強さが際立っていたのだ。


『ど、どうなっているんだよ!? あのエイトが敗れたぞ!』

 会場内はすでに大騒ぎになっている。

 なにせ、数字1桁のナンバーズの強さは別格で、エイトより上のナンバーズは、ここ10年以上入れ替わっていないのだから。



『さすが大口を叩くだけのことはある。なあヒルデガルド?』

『はわわわ……か、格好良いです……愛しています……カケル様。へ? 何かおっしゃいましたか? 陛下』

『何でもない……いかんな、ヒルデガルドがすっかり恋するポンコツ乙女になっておる……』

 皇帝ギャラクティカは呆れたように深いため息をつく。



 一方で、この御前試合で盤石の布陣をアピールしたかった皇太子派の面々は当然面白くない。

『ふざけるな! エイトに続いてシックスまで敗れただと? 殿下にどう言い訳するつもりだ?』

 皇太子派の大臣たちが血相を変えて騒ぎ始めた。

『心配するな……次はサード、万一勝ち進んだとしても、準決勝はセカンドだ。まあ、そもそも殿下に勝てるものなどいないのだからあまり関係ないがな……』

 だが――――

『それまで! 勝者カケル!』

 サードに続いてセカンドも倒したカケルが、見事決勝戦に駒をすすめてしまった。


『ばばばば馬鹿な!? セカンドが敗れるなんて…………あり得ない』 

 皇太子派の大臣たちは、あまりの事態に顔面蒼白でみな生気を失っている。



『見事だ……黒髪の人間よ。決勝では骨も残らないように殺してやろう』 

 舞台から降りてくるカケルにユリウスの殺意の波動が突き刺さる。


(……やはり、ユリウスも因子に冒されているか……)

 イリゼの指輪の力によって、カケルは邪神の因子を視認することが出来る。

 サードやセカンドも因子に冒されていたが、ユリウスのそれは、もはや全身に拡がっており、見るに堪えない有り様だった。

(ほとんど自我が残っていない状態でも、お前なりに必死に家族を護ろうとしていたんだな……ユリウス) 

 父親である皇帝や妹のアリーセにユリウスは最後まで手を出さなかった。

 むしろ、積極的に距離を取ることで、邪神の影響から遠ざけようとしていたのだろう。


(ユリウス……お前は強い男だ。間違いなくそう思う。だからこそ、俺はお前を倒すよ)



『これより決勝戦を行う。それでは、開始!!!』


『行くぞ人間! な、何? 消えただと? まさかサードのスキルか?』

 正解。サードの透明化スキルがあればこんなことやあんなことも出来る……夢とロマンが詰まった素晴らしいスキルだ。魔人帝国での1番の収穫だとすらいえる。

 特に意味はない。使ってみたかっただけだ。

『無駄だ、魔力相殺!』

 魔力がゼロになり、透明化が解けるカケル。

 ユリウスの魔力相殺は自身の魔力と引き換えに相手の魔力をゼロにする強力なスキルだ。

 自身も魔力が無くなるため普通ならあまりメリットが無いスキルだが、物理無効を持つユリウスを相手にした場合、攻撃手段が無くなるということを意味する。

 更に―――― 

『帝王のあかし

 配下のステータスの1割を自身のステータスに上乗せ出来るユニークスキル。

 国民も含めると無数の配下を持つユリウスのステータスはもはや天災クラスに跳ね上がる。

 もともと規格外に強いユリウスが、国丸ごとの力を集めてパワーアップしたのだ。

 勝てる道理など何処にも無い。


 相手が俺以外だったらな。


『ぐはぁあああっ!!?』

 腹を殴られて悶絶するユリウス。

『な、なぜだ? 私には物理無効が……』

「残念だったなユリウス。俺も持っているんだよ、物理無効をな!」

 同じスキル同士は相殺し合うのだ。

 もちろん、俺も同じ条件だが。

『だ、だとしても、この圧倒的なステータスにダメージを与えられるはずが……』

「ああ、それな。単純に俺のステータスの方が高い。それだけだ」


 殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る
殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る…………

『ガハッ…………』 

 ようやく両膝を付くユリウス。

 うーん、さすがに硬いな。俗に言うステータスお化けって奴だね。

 なら――――

 指先に氷球を生成する。

『馬鹿な……魔法は使えないはずだ!!』

 驚愕するユリウス。

「知らなかったのか? 魔力が無くても魔法は使えるんだぜ? アイスバレット!!」

 魔法の発動に魔力が必要なのは、発動までのプロセスを代行してもらっているから。

 すべての仕組みを知り、自分で発動出来るなら当然魔力も詠唱もいらないのだ。

『ギャアアアア!?』

 無数の氷の弾丸に撃ち抜かれて地面に倒れ伏すユリウス。

 慌てて審判が駆け寄り試合を止める。

『そこまで!! し、勝者――――』

 試合を終わらせようとする審判を吹き飛ばすユリウス。

『まだだっ!! 魔王化――――』

 理性と引き換えに数倍の力を得る邪神の力。

 会場内は変わり果てたユリウスの姿に騒然となり、逃げ出す者も現れる。


『デスサイズ!!』

 中空に出現した魔法陣から巨大な死神の鎌を引きずり出す。

 斬りたいものだけを斬り、この世のモノにあらざるモノを斬る。

 それが神級武器デスサイズ。



『ガアアアアアアアァァァ!!!』

 カケルを喰らい尽くそうとユリウスから無数の因子が触手のように伸びてくる。


「ユリウス、いま助けてやるからな。邪神の因子、根こそぎぶった斬ってやる、うおおおおおお!!」

 イリゼによって強化されたデスサイズは、ユリウスの中の邪神の因子を消滅させてゆく。

「これで…………終わりだあああ!!」 

 最後は神水をユリウスにぶっかける。

『ぎゃああああああああああああ!!?』

 ジュワッっと焦げるような音を最後に、邪神の因子はすべて消滅した。


 茫然していた審判に視線を向けると、慌てて宣言を再開する。



『勝者――――カケル!!!』

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