異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

満天の星空の下で

「もちろん、クラウディアとデートに決まってるじゃないか」

 
 頭がぼーっとして理解が追い付かない。

 え……なんでカケルさまがここにいるの?

 このドレスは私のために? どうして?

 感情が堰を切るように溢れ出す。

 ポロポロ涙が止まらない。

「ち、ちょっと!? クラウディア!?」

 カケル様がオロオロしていてかわいい。

「あ~あ、泣かせちゃったわね、本当に悪いひと

 ドミニクさんがそんなカケル様をからかっている。そういえば、何かこの人も怪しいのよね。まったくカケル様ってば見境ないのかしら。


「違うの……ちょっと驚いただけ。すごく嬉しかっだけよ」

 カケル様に駆け寄り思い切り胸に飛び込む。

 遠慮なんかしない。どんな風に飛び込んでも、カケル様は優しく受けとめてくれるから。

 でもごめんなさい……せっかくのドレス濡らしてしまったわね。

***

「いつも沢山お買上げありがとうございます、カケルさま」 

「…………いつも?」

 ウインクをするドミニクさんの言葉にクラウディアがジト目で睨んでくる。

「ち、違うって、ほら、この間シルフィとサラの服をまとめて買っただけだから……」

「そうなの? べ、別に責めてる訳じゃないのよ!」

 赤くなってあわあわするクラウディア。

「ごめんなさいね、ちょっと羨ましいから、意地悪しちゃったわ」

 そう言いながらも、帰り際耳元でささやくドミニクさん。

『今度は私の服もデザインしてね? 採寸は全身くまなくお願いするわ』

 はい、喜んで採寸させていただきます! えっ? 完全記憶? 何それ美味しいの?



 結局、ドレスを含めて7着も買って貰ってしまった。

 私の鑑定では、総額白金貨1枚……どうしよう。私にそんな価値はないのよ。

 そ、そうだわ!……だったら私の身体で払うしかないわよね……うふふ。


「……クラウディア? どうしたんだ? 顔が赤いぞ」

「ふぇっ!? な、何でもないわ。それより何処に行くの?」

「すぐに着くよ、ちゃんと掴まってろよ?」

 転移した先は知らない街のお城の上だった。

「カケル様……もしかして、ここが?」
「ああ、ここが新しい街、セレスティーナだよ」

 光魔法だろうか? 美しく照らされた城は幻想的で、眼下に広がる無数の明かりが、地上の星のように輝いている。

「綺麗……でも、カケル様、まだセレスティーナにはこんなに住民はいないんじゃ?」

 カケル様はニコッと笑って、

「今日1日で沢山移住者が増えたんだ。嬉しいことにね!」

 そうか……この明かりはただの明かりじゃないんだ。カケル様が助けた命の輝きなのね……。


「クラウディア、これを受け取って欲しい」

 カケル様から婚約指輪を頂いた。5個もスキルが付与された国宝級の指輪だ。

「…………他の女の子にも渡したんですよね?」 

 そんなこと全然気にしていないのに、つい意地悪したくなってしまった。

「うっ、それは……はい、渡すのが遅くなってすまない」

 困っているカケル様が可愛すぎて辛い。

「……ミレイヌには渡したんですか?」
「えっ? 何でミレイヌさん?」

「まだなら良いんですけど、いつか渡してあげて下さいね? あの娘、カケル様のために一生懸命頑張ってますから」

「……わかった。必ず渡すよ」
「……そこは別に断っても良い所なんですけどね!」

「そ、そうなのか? すまない」
「ふふっ、ごめんなさい。冗談よ」

「あ、でもな、一対一で指輪を渡すのは、クラウディアが初めてだぞ」

「へ、へぇー、そうなんだ」

 どうしよう、すごく嬉しい。そんな些細なことがたまらなく誇らしい。

 私は……もうどうしようもないほど貴方が好きなのね。

 隣りに寄り添う黒髪の青年の横顔から眼が離せない。

 ふと思う。このかけがえのない時間の対価はいくらなのだろうと。


 そういえば……

 留学に出発する時に両親に言われたっけ。

『クラウディア、外国での暮らしは大変だろうけどきっと勉強になるはずだよ。前に言ったと思うけど、お金で買えないものは無い。だけどね。もし……お金に代えられないものを見つけたら……その時は戻っておいで。私たちはずっと待っているから』

 あの時が最後なんて知らなかった。

 せっかく見つけたのに……私には帰る場所が無くなっていた。

 いいえ、最初から見つけていたのに私が気付かなかっただけね。

 逢いたい……もう一度逢いたいよ。お父様、お母様……

 ずっと我慢していた想いが痛いほど心を締め付ける。自分の無力さ愚かさが悔しいよ。


 不意に強く抱きしめられて我に返る。

「クラウディア……大丈夫だ。きっとみんな避難しているさ。避難した人々は全員助ける。街も復興させる。お前の国を目茶苦茶にした奴らは絶対に許さないから。だから……もう、泣くな」

「カケル様…………」

 貴方はなんでそんなに優しいの? なんで他人のことで……そんな顔で涙を流せるの?

 

 2人で涙が乾くまで、満天の星空をただ眺めた。

 誰にも邪魔されない2人だけの時間。

 勇気を出すのよクラウディア! 今がチャンスなのだから。

「あ、あの……カケル様、良かったら私を――――」 
「…………」

「カケル様?…………ね、寝てる!?」 

 静かに寝息を立てるカケル様。

 よく考えたら、カケル様は今日は早朝から……いいえ、昨晩からずっと戦い続けていたのでしたね。

 そんなに疲れているのに私のためなんかに……

「ありがとうございます……大好きよ」

 カケル様の寝顔にキスをする。

 私のキスが1回金貨1枚の価値として、あと何回キスをすれば良いのかしらね。

 優しく照らす星明かりの下、私は願う。

 
 女神様、どうかお願い……このまま時を止めてください。あと少しだけでいいから。


 
 

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